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第2話 星霜

 二十五年……。

 その間、ギルベルトは延々と知識を蓄え、研究を行なってきた。

 おかげでかなりの事柄が判明し、研究の方法論も進めることができている。


 だが……。


 先ほどまでのレオンハルトの追憶を聞いていて、ギルベルトは考えた。

 だが、この研究の日々は、本当に正しかったのかと自問する。


 二十五年。その間、多くの兄弟分、友人、知人が大きく変わっていった。

 責任ある立場に就いた者、尊敬される先達となった者、鬼籍に入った者もいる。

 話を聞いて、初めのうちは楽しく思えた。感慨深く感じることができた。


 しかし、親友ユリウスが息子であるレオンハルトに自分の面影を見た話を聞いた時、彼は気づいたのだ。

 その親友は、友であるギルベルトの忘れ形見がやってきたことに大きな喜びを感じていた事に。

 それは同時に、その時点で最早ギルベルトがこの世にいないことを覚悟していたことと同じだと言える。


 他の皆にしてもそうだ。

 姉のディアナは自分が生きていたと解った時、どんな顔をした?

 友人のエーデルは、そして身内のアルベルトは、自分がこの肉体にいると聞いた時、どんな顔をした?


 二十五年前……自分はあの洞窟でそのまま息絶え、生き返るべきではなかったのではないか?


 自分は結局この二十五年の間、何一つ成長できなかった。

 付き合いのあった者たちは全て何らかの形で変わっていったにも関わらず、自分は二十五年前の青年のまま、今この世に存在している。


 歪な存在……。

 ギルベルトは己の存在に、僅かながらも幻滅している。

 かつて皆から敬愛された自分は、今では幼いまま知識を蓄えた小僧に過ぎない。


 成程、確かにこれはレオンハルトなりの復讐なのかもしれないな……。

 ギルベルトは落胆を感じたまま、レオンハルトが扉を開ける音を聞いていた。


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