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アストラルボディ  作者: 薔薇クーダ
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探偵田辺順平

「闇の仕置人」の正体は謎のままだったかが

少し評判になって手が足りなくなって来た。

そこでジンは助手の様な存在を探し始めた。

 あんな不可解な事件が立て続けに二件も起こり、更には都市伝説としてだが、まことしやかに今回の事件は「闇の仕置人」がやったんだと噂が広まっていた。


 ジンに取って都市伝説などはどうでもいい事だったが,それもまたジンのやろうとしている事を宣伝してくれている事は確かだった。


 それが望む形かどうかはわからないが。


 そして依頼が達成されると妖怪に肝を食べられると言う噂まで出る始末だった。


 しかしジンにはそれ位の方が良いと思っていた。


 これはやはり人の命を奪う行為だ。安易にやられても困る。人の命を奪う限りは依頼する本人も同等の覚悟がいると知るべきだろう。


 だからジンは金銭ではこの依頼を受けなかった。あくまで本人の命と引き換えと言う条件にした。


 それでも犯人が憎くて殺して欲しいと言う者だけがこの扉を叩けばいい。ここはそう言うサイトだ。


 勿論日本の法律からすれば違法だ。いや世界の法律に照らし合わせてもこれを合法とする国はないだろう。


 もしこんなものがまかり通れば法体制が崩壊してしまう。


 だから警察も検察も威信を賭けてその解明と撲滅に取り組み始めた。


 しかし今の所これと言った犯人の情報は何一つ上がって来てはいない。


 あらゆるネットサービスやネットカフェや漫画喫茶と言う様な自分の所のIPアドレスでないコンピューターで書き込みの出来る所など、全ての可能性を当たったが「闇の仕置人」の発信元は解明出来なかった。


 一体何処の国のサーバーを使っているのか、何処を基地としているのか、全てが不明だった。


 こんな事は警察のサイバー対策課としても初めての事だった。恐らくは世界トップレベルのハッカーがここに関与してるのではないかとさえ疑っていた。


 ともかくそのサイトは毎晩夜中から運営されていた。そしてその影響と思われる、法で裁かれなかった者が命を絶った事は事実だった。


 警察は全国に呼びかけ、もしこのサイトに関与し依頼をすれば重大な罪に問われるとしたが、本人が死を覚悟しているのであればこの警告には何の効力もなかった。


 そしてこの事は国会でも取り上げられて政府の姿勢が問われた。しかし鋭意調査中としか回答出来なかった。


 更に追い討ちとして、その議題を持ち出した議員が殺害されるに及んで、この議題を持ち出す議員は一人もいなくなった。


 皆んな自分の命が可愛いと言う事だ。命を賭けても戦おうと言う議員はこの日本には一人も居なかった。


 所詮はパフォーマンスだけの議員でしかなかったと言う事だ。


 ジンとしても隠れ蓑が出来て、いくら「仕置き」をしても捕まる心配も、正体を見つけられる心配がなくなったので、積極的に「闇の仕置人」家業に励みだした。


 しかし「仕置人」を希望する声は後を絶たない。それだけ被害者が納得出来ない司法制度が、この国では行われていると言う事だろう。


 誰でも彼でもみんな死刑にすればいいと言う話ではないが、それだけまだままだ生ぬるい司法制度だと言う事だ。


 だから自分の命を賭してまで仇を取って欲しいと言う者が出て来る。


 こんな事を始めたからと言って全員の望みが叶えられる訳ではない。


 しかしそれによって少しでもその様な犯罪が減れば、それなりに成果が出るんではないかとジンは考えていた。


 ただ問題は人手不足だった。スザクはまだいい。彼女は殺しまくっていれば済む話だ。


 しかしジンはコンタクターとして全国を飛び回り、依頼の事実を確認しなければならない。まるで私立探偵の様に。


 それには時間がかかる。しかし体は一つしかない。いや、そうじゃないだろう。これも分身出来るんじゃないかとジンは思った。


 ジンとスザクは分身体だ。それも能力的には同等の。しかしコンタクター位なら、何も自分と同等の能力は必要ないのではないかと思った。


 それこそ最低限の第三レベル程度の能力があればいいだろうと思った。


 仮に何かの事故で殺されたとしても、本当に死ぬわけではない。また分身体を作ればいいだけの話だ。


 ただコンタクターとして依頼人と会う場合は、やはり身分のはっきりした本当の人間の方がいいだろうと考えていた。つまり矢吹俊の様な存在だ。


 その一体にコアがあれば、後はそれを複製した分身体で動けばいい。そう考えていた。それならこの仕事もはかどる。


 それでジンはまず手近で大阪の探偵事務所を探してみた。誰か適合する人間はいないかと。


 すると一人、天満の方に箸にも棒にもかからない人物がいた。年は60歳、還暦だ。普通ならこんな仕事は引退する年だろう。しかし彼はまだその仕事にしがみ付いていた。


 何の為にその年になってまでこの仕事に執着するのか。もしかすると何か特別な理由があるのかも知れない。


 しかも家族は誰もいない。独り者だ。妻と娘がいたらしいが死に別れたらしい。


 条件としては悪くないとジンは思った。正直な所中身はどうでも良かった。入れ物としての体だけがあればいい。


 後はジンがコントロールして精神改造をすれば済む話だ。かなり人権を無視した話をしているが、今のジンはそんな存在だった。


 そしてジンはこの男、田所順平の意識を取り込んで驚いた。爺さん、あんたも被害者家族だったのかと。


 順平が50歳の時、ちょうど25歳になった娘,清美がいた。この娘が会社の帰りに誘拐され行方が分からなくなった。


 順平は捜索願を出したが、家出人や行方不明の数は山ほどある。警察でも真剣には探してくれなっかった。そして3日後、娘は無残は姿で発見された。


 死亡解剖の結果、複数人にレイプされ体を切り刻まれて公園の林の中に捨てられていた。


 場所は豊中市の服部緑地と言われる所だった。府道134号線沿いの林の中に捨てられていた。


 そんな所に娘が一人で行くはずがない。きっと誰かに拉致されたに違いなと順平は思った。そしてそこには多くの車輪の痕があったと言う。


 恐らくは暴走族の仕業だろうと推測された。しかし単車で運ぶには少し無理がある。


 きっと自動車に乗っている奴が運んだんだろうと結論付けられたが、その犯人はとうとう見つける事は出来なかった。


 そしてあれから10年が経った。順平はそれでも諦めず一人で犯人探しをしていた。妻は心身の疲労で倒れ、その翌年にこの世を去った。


 順平は住んでいた家を売り、安アパートに住み、家を売った金で今日まで探偵家業を続けて犯人探しをしていたと言う訳だ。


 「なるほどな、それならあんは資格十分だな。俺のコンタクターをやってもらおうか。その代わりお前の仇は俺が討ってやる」

「本当に力をかしてくれるのか」

「ああ、任せておけ。あんたはもう俺の仲間だ」


 そして田所順平はジンのコンタクターとなった。

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よろしくお願いいたします。

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