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アストラルボディ  作者: 薔薇クーダ
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ジン誘拐される

ジンは飯島組に目を付けられ誘惑されてしまった。

この結果は。

 今のジンの容姿は二十台半ばと言う感じになっていた。


 随分と若くしたものだ。これもジンの願望だったのかも知れない。


 同じ第二の人生を送るなら若い頃からやり直たい。誰もが思う事だろう。実際には72歳のジジイだが。


 その頃中津界隈をシマとする飯島組では必死になってジンの足取りを探していた。


 言葉使いからしてどうも関東者の感じがする。それなら何処かのホテルか宿泊施設に泊まっているはずだと、その辺りを中心に探させていた。


 ジンは関東者ではなかったが、宿無しと言う点では当たっていたので、その選択は間違っていなかった事になる。


 そして各ホテルを見張っていた組員から例の男がいると言う連絡が入った。


 服装こそ変わっていたが顔は例の男だと。


 この知らせで組員達の意識が一気に沸騰した。今度こそぶち殺すと。


 同じ殺すにしてもただ殺したのでは面白くない。地獄の苦しみを味わせてから殺してやれと組長の指令が飛んだ。


 そこで組員達はライトバンを用意してその男を倉庫に連れ込むことにした。


 ジンはこの時何も知らずにのほほんと久しぶりの大阪見物をしていた。


 かっては住んでいた街だ。今でもまだ地下街の地形などは大まかに覚えいる。だから完全に迷子になる事はなかった。


 この時ジンには複数の尾行が付いていた事を知っているのだろうか。


 多分そんな事は意識してなかっただろう。自分は死なない体だと言う認識があるので危機管理が甘かった。


 そして地上に出た所で組員達は罠を張っていた。老婆が駆け寄って来てジンに助けて下さいと言った。


 孫がやくざに脅されていると。


 そう言われてはジンも放って置く訳にもいかず、何処ですかと老婆にその場所に案内してもらった。


 それこそが罠った。そこに待っていたのはバンと拳銃を持ったやくざ達だった。


 ジンは銃で脅される形でバンに押し込まれ、やくざ達が待つ倉庫まで連れて行かれた。


『本当に懲りない奴らだな。まぁいいか、今度こそ本当に引導を渡してやるか』


 ジンがこんな事を考えているとも知らず、やくざ達は舌なめずりをしてジンの到着を待っていた。


 そこは今は使われていない貸し倉庫だった。そこに50人程のやくざがいた。勿論組長の飯島も頭の磯野もいた。


 後ろ手に縛られたジンが、押し出される様にしてバンから連れ出された。


「ようガキ、この間はようも舐めた真似してくれたな。覚悟は出来てるんやろうな」

「覚悟ってなんだ。お前らが死ぬ覚悟か」

「偉そうな事言えるのも今のうちやぞ。おい、こいつの両足撃ち抜いたれ」


 言われた組員がジンの両膝を狙って拳銃を撃った。確かに弾は当たった。


 しかし血が出て来ない。しかもその男は痛がりもせずに平然と立っている。


 どなってるんやと組員達は不思議に思うと同時に恐ろしくなって来た。こいつ何やと。


 ジンは簡単に縄を引き千切って組長の前に歩いて来た。


 普通ではあり得ないだろう。両足の膝を銃で撃ち抜かれてどうして歩ける。確かズボンの膝には銃で撃たれた穴が開いていた。


「おい、どうしてくれるんだよ。昨日買ったばかりの新品のズボンなんだぞ。弁償してもらうからな」

「いや、それよりもお前何で立ってられるんや。銃で撃たれたんやぞ」

「そうか、お前ら俺を銃で撃ったんだよな。ならその覚悟は出来てるんだろうな」


 ジンが膝を撃たれた時、その部分だけをレベル2に落としていた。だから弾は素通りしてしまったのだ。ただし服を破いて。


 それからはもうジンによる屠畜場の様な有様だった。レベル4で殴りまくった。原型を留めている体は一つもなかった。

 

 みんな壊れた人形の様になっていた。50人全員が死んだ。


 しかし不思議な事にジンは一滴の返り血も浴びてはいなかった。それだけではなかった。人を殺したと言う良心の呵責すらなかった。やはり人を辞めて変わってしまったんだろうか。


『この服また買い直しだな。弁償だ。こいつらの金みんな貰おう』


 そう言ってジンは全員の財布から現金だけを抜き取っていた。50人もいれば結構な額になった。計80万円なりだ。


 この事は倉庫の管理会社の点検整備によって発見され、直ちに最寄りの警察に連絡された。


 この惨状を見た警察官達は言葉もなかった。誰がどうすればこんな事が出来るのかと。


 これは人間に出来る事ではないとさえ言う者がいた。


 これは所轄と府警本部が捜査に当たったが、何をどう捜査すればいいのか皆目見当がつかなかった。


 第一殺されていたのは全員が組長を始めとする飯島組の組員達だった。


 抗争事件なら多少とも対抗相手の被害者がいてもいいはずだがその痕跡すらなかった。


 少なくとも2人は銃を持っていたんだ。相手が怪我をしていても不思議ではない。ちゃんと2発は発射されている。


 床に銃弾がめり込んでいた。どうやら足でも狙って撃ったんだろうと言う推測が成り立った。しかしその血痕が何処にもない。


 第一どうすればこんな殺し方が出来るのかだ。道具による撲殺でもなければ斬殺でもない。


 なら何だ殴殺か。それこそあり得ないだろう。こんな事をするのにどれだけの力がいると思う。しかも50人もだ。


 人間では不可能だと言うのが検視官の意見だった。


 そして捜査は暗礁に乗り上げかけていた。そんな時、この事件が起こる少し前辺りから、飯島組の組員達が頻繁にホテルやその他の宿泊施設の監視をしていたと言う情報が入った。


 恐らくは誰かを探していたんだろう。一体誰をそして何の目的で。


 そこで刑事達も同じようにホテルや宿泊施設で何かおかしな事はなかったかと聞き込みに回った。


 しかし何もおかしな事は起ってはいなかった。ただ一つの一流ホテルで、ある宿泊客が前金として20万円を現金で預けた者がいると言う情報が入った。


 勿論おかしな事ではない。もし現金払いにするなら後で払っても前金として預けておいても何らおかしくはないだろう。


 しかし普通はわざわざ前金で払う客はいない。後で払えば済む事だから。では何故その客は前金で払ったのか。


 その客はまだ滞在してるのかと聞くとあと2日滞在の予定ですと言う返事だった。


 その客の部屋番号を聞こうとした時、フロント係があのお客さんですと刑事に教えた。


 それは丁度ジンが外から帰って来た時だった。


 刑事達はそこで職質に入った。


「もうし訳ありませんが私は大阪府警の石渡と言います」

「私は岩田です」

「刑事さんですか、俺に何か用事でも」

「大した事ではないのですが、貴方はここに泊まる時に前金として現金で支払われていますよね。それはまたどうして」

「どうしてと言われましてもね、習慣としか言いようがないのですが」


「習慣ですか。でこちらにはどう言う目的で、ご旅行ですか」

「まぁそんなものです。ちょっと雰囲気を変えに」

「それは豪華な御身分ですね。お仕事は何を」

「商品の市場調査をやってます。ただ内容に関しては申し上げられません」


「そうですか、で、お名前は」

「神谷と言います」

「何処にお住まいですか」

「この大阪ですが、これは何かの取り調べですか」

「いえ、そう言う訳ではないのですがある事件の参考に。3日前の夕方4時頃には何処におられましたか」

「3日前の夕方ですか、えーっとちょっと待ってくださいよ。それなら確か和歌山の白浜にいたと思います。ちょっとした調べ物がありましたので。そこの広陵園と言う旅館のレストランで食事をしてましたので調べてもらえばわかると思います」

「そうですか、ありがとうございました」


 そう言って刑事達は引き上げて行った。


「どうします石さん」

「そうやな、一応裏取ってくれ」

「そうですね」


「石さん、わかりました。確かにあいつは白浜のレストランで4時半頃食事してました。ウエイトレスがよう覚えとりました」

「4時半か、犯行は無理やな。こっちの死亡推定時間が4時から6時やからな。4時半に白浜に付くのは無理やろう」

「そうなりますな」


「しかし何か匂うんやがな」

「石さんの勘ですか」

「まぁな」

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