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アストラルボディ  作者: 薔薇クーダ
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スザクに惚れたやくざ

スザクに惚れた吉の兄貴分が

スザクを狙い誘拐した。

 普段スザクはジンの中にいるのだが、最近は表に出る機会が多くなった。


 それでナンバの道頓堀辺りを歩いているとナンパはされるわ、タレントにならないかと一杯声がかかる。


 うるさい奴らだな、皆殺しにしてやろうかと思うが、ジンに表の姿で人殺しはするなと言われているので我慢していた。それにしても危ない女だ。


 そんな時向こうから4人程、肩で風を切って歩いてる者達がいた。見るからにやくざだ。


 ちょっと虫の居所が悪かったスザクが、こいつらボコってやろうかとその4人の正面に向かって歩き出した。


 4人の端にいたチンピラが駆け出してきて、「沙耶ちゃん、悪いな来てくれたんか。こっちや」と言ってスザクの腕を引っ張って道の横に連れて行った。


「沙耶ちゃん、危ないがな。兄貴らの正面に行ったら何されるか分かれへんで」

「何それ」

「おい、吉。そいつはお前の色か」

「はい、兄貴そうなんですわ」


「そうか、ええ女やないか。お前にはもったいないんちゃうか」

「いや、俺の幼馴染なもんで」

「ならええ、後で来いや」

「はい」


 スザクはこの吉が何を言ってるのかよく分からなかった。この吉と言うのはいつも「ナイトシェイド」にみかじめ料を取りに来る組員だった。


 そして吉こと、西崎吉三はスザクに一目惚れしてしまった様で、何かにつけよく店に顔を出すようになったのだがスザクに、


「ここは堅気の店なんだから、あんたみたいなやくざが顔出さないでよね」ときっぱり言われてしまった。


 それでも諦め切れない様で、それからと言うもの、店が終わって表に出て来る11時頃に、毎晩の様に表で待っていた。


「お疲れ様でした。これ大した物やないですけど、受け取ってください」


 と言っていつも何かの差し入れのプレゼントをしてくれるようになった。惚れたと言うより崇拝に近い感じすらあった。


「なぁスザク、お前も冷たいね。たまには相手してやったらどうだ」とジンに言われる始末だった。


「なんで私があんな奴の相手してやらないといけないのよ」といいながら、仕方ないなと、たまには昼間にお茶や食事に付き合ってやった。


 一つにはこの辺りのやくざの情報収集も兼ねてだったが。


 そんな事もあって今回は、兄貴達からスザクを救った積りでいた。


 一番上の兄貴分に当たる金子は良いのだが、次の兄貴分の唐木と言うのは女好きでドSと来ている。


 こんなのにスザクが捕まったら何をされるか分かったものではないので救ったのだ。


 吉はスザクを近くの喫茶店に連れて行った。


「どう言う事なの」

「あのな、あの左にいたピンクのシャツ来た人がおったやろう」

「ああ、あのにやけた奴」


「そうや、あの人には気つけや。女好きなんはええんやけどドSなんで、女をおもちゃにする傾向があるんや」

「へーおもしろそうね」

「そんな事言うてる場合やないで。今度見かけても近づいたらあかんで」

「了解、ありがとね」


 この吉は本当にスザクにぞっこん惚れ込んでいた。やくざにしてはまだ純情な部分が残っていたのかも知れない。


 しかしあの時スザクを見た唐木は、次のターゲットをスザクに決めていた。今回の女は上玉だ。いじめ甲斐がありそうだと思っていた。


 この唐木の毒牙に掛って犯されおもちゃにされた女は1ダースを超えるだろう。


 彼らはこの辺りを仕切る八十島傘下の木野目組だった。西は御堂筋から東の上町筋辺りをシマにしている。


 場所が場所なのでかなり良いしのぎが出来ている様だ。


 中でも金子は武闘派で知られていた。それに続く唐木も実力はあるのだが残忍だった。人が苦しむ所を見て楽しむ傾向がある様だ。


 そんな唐木が、スザクが何処で働いているかを調べ上げ、ある夜の事、吉の兄弟分と言うのが店の前で待っていた。


 この辺りの事は唐木も調べていたんだろう。


 吉がある出入りで大怪我をしてあんたに会いたがってるので直ぐに来てやってはもらえないだろうかと言った。


 スザクがジンの方を見ると、行ってやったらどうだと言う感じで目で合図をしていた。


 だた精神通話で罠だろうなと告げていた。そして好きな様にやっていいぞとも言っていた。


 スザクはその誘いに乗って着いて行った。着いた所はあるビルの地下の一室だった。


 そこで待っていたのは吉ではなく唐木だった。


「吉は何処なのさ」

「吉か、あいつはな、お前を俺に売ったんだよ。悪い奴だよな」

「へーあいつがね。それであんたが私を買ってくれると言うの。いくら出すのさ、私は高いわよ」

「ほーええ度胸しとるの。もうちょっと初心な女やと思っとったんやが、その方が虐め甲斐があると言うもんやで」


 この日は吉は唐木に用事を言いつけられて「ナイトシェイド」には行けなかった。


 そして事務所に帰ってみるとその肝心の唐木がいなかったので、吉は何か不安を感じて仲間の兄弟分に聞いてみると、何だか上機嫌で出て行ったと言う。


 まさかと思い、唐木が女をいたぶる時によく使う所に飛んで行った。


 そしてそこで見たものはスザクと唐木、そして唐木の弟分2人だった。


「あ、兄貴、そこで何してはるんですか」

「おー吉か。この女がな、お前より俺の方がええ言うもんでな、ちょっと遊んだろうと思てたとこや」

「そ、そんな。スザクちゃん、はよ帰り。後は俺がなんとかするから」


 そう言って吉がスザクと唐木との間に割って入った。


「吉、われ何しとるかわかっとるんか」


 その途端、吉は二人の仲間に捉えられ、唐木に木刀で体中を殴られてしまった。


「よー、吉。おんどれ兄貴分の俺の邪魔しよう言うんか。三下の癖にええ度胸しとるの」

「頼みます兄貴、この子にだけは手ださんでください」

「じゃかましいわ」


 吉は更に打ち据えられ、このままでは生死すら危ない程になっていた。


「あのさーやくざって自分の兄弟分は殺しちゃいけない事になってたんじゃないの」

「これは躾ちゅうやつや」

「そうなの躾ね。じゃーあんたにも躾が必要みたいね」

「なんやと」


 スザクは吉に向かって歩いて行き、後ろから唐木の後ろ襟を掴んで後ろに投げ飛ばした。


 吉を様子を見たがもう意識はなくなりかけていた。


 左右から吉を掴んでいる二人を殴り飛ばしておいて吉を床に寝かし、これじゃーもう無理かと静かに眠らせてやった。


「おんどれ、何さらすんじゃ。よっぽど可愛がって欲しいようやの」


 そう言った言葉を最後に、その3人は地獄を見る事になった。


 先の二人はボコボコにされ手足はへし折られていた。二度と人として生活して行けるかどうかもわからない。


 その様を見た唐木は、ぞっとしなはらもSの血が騒いだのか、木刀で半殺しにしてやると襲って来た。


 スザクはその木刀を片手で掴み、握り潰してしまった。それはまるでその部分で爆発が起こった様に木っ端微塵になっていた。


「な、なんやねんお前は。木刀を握り潰すなどありえへんやろう」


 スザクはその木刀の先端部を唐木に太腿に突き刺した。それは足の半ばまで突き刺さっていた。


 その痛みは尋常ではなかった。唐木は痛みのあまり床を転げまわっていた。


 スザクが次にやった事は、もう一方の足を踏み砕いた事だった。


「た、助けてくれ。頼む、たすけて・・」

「あんた今までそう言った者を助けた事があったかしらね。今のは吉の分よ。そしてこれが私の仕置きの分ね」


 スザクは何処からともなく出した青白く光る刀を手にしていた。


「ま、まさか、お前はあの『闇の仕置人』なんか」


 3人の首は綺麗に刎ね飛ばされていた。そして吉の死体はその場から消えていた。

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