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秘密のお茶会友達

 歌声の主はこの乙女ゲー「Magical Woderland」の攻略キャラクターの一人────

 

 フラン・ハイジアだった。

 

 「君はここで何をしているの?」


 夜空に浮かぶ星々を連想させるキラキラとしたスカイブルーの瞳が真っ直ぐこちらを怪訝そうな顔で訊ねる。綺麗な瞳に吸い込まれそうになる。

 

 「あ、わ、私はぷちお茶会を開催していたの」


 その瞳につい見惚れてしまい、しどろもどろに答えた。


 「ぷちお茶会?」


 フランは目をぱちくりとしながらまた訊ねる。聞き慣れない単語だったのだろう。だって私が勝手に命名した造語だもの。


 「ちょっとしたお茶会です。一人で開催するお茶会なのでぷちお茶会と呼んでいます」


 目の前の見目麗しい男性(ひと)が、顔に掛かった髪を払いながらよく分からないと言いたげにまた質問を投げかけた。


 「そう。…君、よくこの場所を見つけられたね。この学園の隅にあるのに──」


 辺りを見渡しながら、心地よい風が吹き抜ける。その風が心地よかったのか、彼はふわりと微笑んだ。かわよ。


 「空を飛んでいた時、たまたまみつけました。周りの景色が綺麗で……何より静かだったから」


 「…確かに、ここはとても静かでここにいると自然とやすらぐ。僕もたまに来るんだ」


 「そう、ですか…」


 両手を伸ばし、ふふっと楽しそうに微笑むフランを見て、つられて頬が緩む。


(前世の記憶を巡ると、フランは妖精族の王子。ショタ顔の銀髪碧眼。物腰柔らか、ふわふわ天然系……だったかな?うう~んフラン√記憶が曖昧過ぎる…)


 「ねぇ、お茶会ってことはお茶菓子もあるの?」


 フラン√を少しでも思い出そうとう~んうぅ~んと唸っていると、何か思いついたのか、フランは自分が座っているベンチの隣をポンポンと叩き、話を続ける。

 隣に座ってってことだよね?

 彼に促され、隣に座ると、喋り出す。


 「僕、お菓子が好きでよく食べるんだ。たまに手作りしたり……でも人間界のお菓子はあまり詳しくない。だからもし、よかったらお菓子を恵んでくれないかな?」


 星空の双眸がじっとこちらを見つめる。そんなに見つめられると顔に穴が開きそう…。照れて頬が熱くなるのを感じる。

 でも、何だかフランの事を知りたくなってきた。√が曖昧だからプレイしているみたいで新鮮。仲良くなって彼の事を知りたい。よしっ!ここは勇気を出して誘ってみようではないかっ!!


 「……も、もしよろしければ……私と一緒にお茶会しませんか?歌のお礼も兼ねてっ!!」


 すると、パァァァァァァと満面の笑顔を見せると彼の周りには光の粒子が降り注いでいた。

────妖精だから…?



─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─


 私はフランにぷちお茶会を展開している場所へ案内した。二人分の向かい合うように備えられているベンチに座るよう促し、丁度多めに持って来たお茶を淹れる。テーブルの上にはお茶のお供に用意したお茶菓子をお皿に広げていく。そのお茶菓子が珍しいのかフランは目をキラキラさせながらじっとお茶を淹れ終わるのを待っている。そわそわしてその姿はまるで小動物のようだ。


 「これは?」


 テーブルの上に広げたクッキーを手に取り、訊ねる。

 

 「クッキーと言いますわ。小麦粉と砂糖、バターを使ったお菓子です。どうぞ、召し上がって」


 「…頂くよ」


 パクっと控えめに開けた口にクッキーを頬張る。すると、フランはまたもやパァァァァァァとキラキラな碧眼を煌めかせ満面の笑顔に。


 「美味しいっ!!これは?」


 今度はレモンの皮が入ったレモンクッキーを指差す。


 「これはクッキーにレモン果汁とレモンの皮をアクセントに混ぜ込んだものです。こちらもどうぞ」


 私が説明すると、すかさずレモンクッキーを手に取り食す。


 (見た目はすっごい美少年なのにお菓子一つでこんなに喜ぶなんて…かわいいな~)


 「…ふふっ♪」


 「…あ、すみません食べ過ぎましたね」


 しゅんとして、その手に持っているクッキーをお皿に戻す。


 「そ、そうじゃないの!何だか微笑ましいな~って。クッキーは沢山あるから遠慮せず召し上がって」


 普段より多めにクッキーを持って来たのはこの為だったのかな?と思う程、準備した朝の私ナイスっと小さくガッツポーズした。だってこんなかわいい生き物を間近で見れてしまうなんて…。ふふふっと笑っている今の私はさぞキモイにやけ顔をしているのであろう。でも止められない。美し過ぎてちょっと近寄りがたい印象の美少年がお菓子一つで喜ぶ無邪気さよ。世の女が黙ってないっ!!!!


 

 ふと、クッキーも知らないのなら妖精族のお菓子はどんな物があるのか知りたくなってきた。


 「ねぇ、妖精界にはどんなお菓子があるの?」


 すると、フランはきょとんと意表を突かれたかの様な表情(かお)になる。訊いたら悪い事だった?!


 「何故、僕が妖精族だとお判りになったんですか?」


 そう言うと、フランは警戒心を強める。

 

 「み、耳の形が妖精族の特徴をしていたものだから…。自己紹介も無しに不愉快でしたね…。ごめんなさい」


 私は慌てて手をパタパタしながら謝る。確かに急に教えてない事を会ったばかりの人が口にすると恐怖するわ。配慮に欠けていた。反省反省。


 私の慌てぶりを見て、あ、いやとフランは困ったように頭を横に振る。


 「こちらこそ疑ってしまって申し訳ない…。癖なんだ。僕の元には卑しい者しか集まらないからね。僕の方も名乗らずお菓子まで頂いて…」


 丁寧に頭を下げられてしまった。王子だから気苦労が絶えないのね。それに妖精族だから尚更、人間の卑しさが目に見えるのかも知れない。


 「僕はフラン・ハイジア。この学園に編入するんだ。君が言ったように妖精族。これから宜しくね」


 「私はシアラ・ローズナイト。こちらこそ宜しくお願いいたしますわ」


 キラッキラのアイドルスマイルを向けて手を差し出す彼の周りにはまたもや光の粉が降り注ぐ。その手を握り、握手を交わした。






 秘密のお茶会友達が出来ました。

 




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