忘れていた新たな情報 シークレットキャラ?
ガチャ
「ただいま~」
「おかえりー、_____Ama〇onから荷物が届いていたわよ。部屋に置いてあるから」
「はーい」
急ぎ足で階段を駆け上がり、部屋のドアを勢いよく開ける。勉強机の上にAma〇onの箱が置いてある。それを手に取り、テープを剥がして開けると…
「やった!やっと届いたっ!Magical Wonderlandの公式ビジュアルファンブック~~」
本をぎゅっと抱き締める。
「待ってたんだよ~。この為に期末試験頑張った甲斐あった~。どれどれ」
パラパラとページを捲ると、全スチルが掲載されているページに手が止まる。
「あ゛あ゛あ゛美麗すぎだろ~~~」
気付けば両膝を床につけ、両手は天へ上げ、すかさず手を合わせ拝んでいた。ひとしきり拝み終えると、また本を捲る。
「あ、攻略ページも載ってある。…ん?このシルエットだけのキャラクターって攻略対象キャラ?もしかしてシークレット?!えぇっと攻略方法は……」
そうだった。確かシークレットキャラが存在する事を知って、攻略方法を読んだらメイン攻略キャラクターの√から分岐した先に√が解放されて…。ビジュアルファンブックを買わなければ見逃していた情報。急いで攻略したんだった…。
いざその解放された√がシナリオが良くて、泣きながら攻略して…あれ?ENDはどんな終わり方だった?ハピエンになったんだっけ?
「…ん」
目を開けると知らない天井が見える。起き上がり辺りを見渡すと、勉強机もお気に入りのぬいぐるみも見当たらない。
「…おはようございます、シアラお嬢様」
(───誰?)
「────ここは…どこ?」
クスッ
「ははっ!シアラお嬢様何を寝ぼけてらっしゃいますか?まさか、お屋敷と間違われましたか?」
執事のコスプレをしている目の前の男性は笑いながら、頭を撫でてくる。だが、知り合いなのだろうか撫でる手が心地いい。
「…シアラ──────はっ!!」
そ、そうだった…。私、今大好きな乙女ゲームの悪役令嬢ラズリの取り巻きモブ女Aだった。ふーっ、昔の夢を見たからか今の自分を忘れていた…。恥ずかしくなり、咄嗟に口を開く。
「あ、あああ。そ、そうっ!つい屋敷の自室と間違えてしまったわ!!あははっ!!!」
ヴィンセントは私の様子を見て溜息を吐きながら、両手でやれやれというような態度をする。
「しっかりして下さい。さぁ、もうシアラお嬢様がソファーで熟睡した所為で日が暮れたじゃありませんか。私は夕食の買い出しに行ってきますから私服用のドレスに着替えて待っていて下さい。くれぐれもまた寝落ちしないで下さいよ」
目の前の執事はコートを羽織り、寮を後にした。
「久しぶりに前世の夢見たな…」
ここに転生して間もない頃、ホームシックだったのか度々前世の夢を見る機会があった。その当時は環境に中々慣れなくて自分では気付かない内にいっぱいいっぱいになっていたからだと思われる。けど、ここのところこの世界に順応していき、ぱたりと夢を見なくなっていた。
「…死ぬ前に、実家に寄ればよかったな…」
最後に地元に帰省したのは学生の時だった。社会人になってからは身体と精神を休めることを最優先に過ごしていた。要するに、ずっとベッドの中で蹲っていた。
「あの時期は休日起き上がることもままならなくて無理やり最低限の生活だけ送っていた。だから帰る気力がなくて……」
ポタっとヴィンセントが掛けてくれたであろう膝掛けに雫が落ちる。
「……最期に会えばよかったな~。…うっ、グスッ」
次第に、大粒の雫が、頬を濡らした。
――――――――――
ひとしきり泣いた後、ヴィンセントに言われた通り、私服用のドレスに着替える。涙で濡れた顔を洗い流し、赤くなっている目元には同色のアイシャドウで誤魔化す。
「さて、と」
アイシャドウを塗り終わると、ドレッサーから本棚へ移動する。本棚の側にあるテーブルの引き出しから鍵を嵌め、マル秘ノートを取り出す。パラパラとページを捲る。
「────私はこれから、どう動けばいいのか、考えますか」
マル秘ノートから各攻略キャラクター達の攻略方法を辿る。
「…やっぱり、この方法しかないようね」
“この方法”とは、難しいことではなくて至極簡単な方法。
「まず、1.攻略キャラクターと距離を置くこと。その2.イベント発生時又スチル展開する場所に近付かないこと。イベントを回避するにはこの二つの方法しかない」
本当のことを言うと、スチル展開する場所を聖地巡礼として探索したかったのだが────
「まぁ、ここは我慢して将来状況が落ち着いて、自由気ままな生活を過ごす様になったら聖地巡礼しましょうか」
マル秘ノートをパラパラ読み進めていくと、シークレットキャラだけ記載が抜け落ちている。
「あれ?書いてないなー。書き足しとこ」
ノートにでかでかと【シークレットキャラ攻略方法】と書いていく。
「確か、シークレットキャラだけはノーマルエンドが存在する。ある条件を満たさないとハピエンには辿り着けない仕様だった。その条件は、他の攻略キャラクターの√から分岐して────」
分岐して─────?
「…あれ?思い出せない。なんならシークレットキャラも思い出せない…」
回想を記憶から巡らせる。けれど容姿、声、背格好などシークレットキャラクターに関しての記憶が抜け落ちている。何とか今思い出そうとするが、時計に目が止まり、そろそろヴィンセントが帰って来る時間だ。
「ま、まぁまた思い出したら書くか」
引き出しにマル秘ノートをしまうとそっと鍵を掛けた。




