死ぬにはいい日だ
空を仰げば、胸の透くような快晴。
眼下には昨日雨が降ったために増水している濁流の川。
冷たい風が健やかに頬をなぜていく。
ああ、死ぬにはいい日だ。
私はそこから、きっとどこかの海へと繋がるであろう川に身を投げた。
私の人生の何が悪かったわけでもない。きっと私は……疲れてしまったのだ。生きることに。
馬鹿みたいな理由だと、君は笑うだろうか。そうだろうとも。私は馬鹿だ。開き直っているのではなく、事実、私は馬鹿なのでね。
誰だって、疲れてはいるだろう。けれど、疲れているだけで人生を放棄してよいのなら、この世に人類なぞ残っていないのだ。
私は生きていたくなくなったのだ。だから濁流に身を任せることにした。どしゃ降りの後の茶色い水だが、死ぬにしろ、稀有な現象で助かるにしろ、私を洗い流してくれることだろう。
もし、この愚かな入水者が助かってしまったなら、そのときはまた別な自分になれるような気がしているのだ。
愚かだろう?
笑ってくれ。そして、祝してくれ。
不謹慎なことは何もない。この世から大馬鹿者が一人消え、生まれ変わるのだ。私を祝っておくれよ。
愚かで浅ましいかもしれないけど、祝福されたなら、私は何か「私」よりもっといいものになれる気がするんだ。
蒼空に呟く。
ありがとう、と。
私の誰かへの感謝は泡となって、濁流に揉み消されたが、まあいい。
これは誰に知られなくてもいい、命の終わりと始まりだ。




