表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。

死ぬにはいい日だ

作者: 九JACK
掲載日:2023/04/05

 空を仰げば、胸の透くような快晴。

 眼下には昨日雨が降ったために増水している濁流の川。

 冷たい風が健やかに頬をなぜていく。

 ああ、死ぬにはいい日だ。

 私はそこから、きっとどこかの海へと繋がるであろう川に身を投げた。


 私の人生の何が悪かったわけでもない。きっと私は……疲れてしまったのだ。生きることに。

 馬鹿みたいな理由だと、君は笑うだろうか。そうだろうとも。私は馬鹿だ。開き直っているのではなく、事実、私は馬鹿なのでね。

 誰だって、疲れてはいるだろう。けれど、疲れているだけで人生を放棄してよいのなら、この世に人類なぞ残っていないのだ。

 私は生きていたくなくなったのだ。だから濁流に身を任せることにした。どしゃ降りの後の茶色い水だが、死ぬにしろ、稀有な現象で助かるにしろ、私を洗い流してくれることだろう。

 もし、この愚かな入水者が助かってしまったなら、そのときはまた別な自分になれるような気がしているのだ。

 愚かだろう?

 笑ってくれ。そして、祝してくれ。

 不謹慎なことは何もない。この世から大馬鹿者が一人消え、生まれ変わるのだ。私を祝っておくれよ。

 愚かで浅ましいかもしれないけど、祝福されたなら、私は何か「私」よりもっといいものになれる気がするんだ。


 蒼空に呟く。

 ありがとう、と。

 私の誰かへの感謝は泡となって、濁流に揉み消されたが、まあいい。

 これは誰に知られなくてもいい、命の終わりと始まりだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 身投げというテーマにも関わらず悲壮感のない、美しい作品でした。 願わくは奇跡が起こって欲しい、と思ってしまいました。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ