第46話 授業-石集め2-
次の日の朝早く。······ツンツン! ツンツン!(ん? だぁーれー?)誰かに体を突つかれて目を覚ましてしまった。
そして突つかれた方を見たら、(っ!?)何とバーミリアンのおっちゃんがいた。
するとバーミリアンのおっちゃんは「(しーっ。ちょっと付き合ってくれ)」(??)と言われてボク達は建物を出た。
「悪かったな。昨日あんな事があったから先に様子を見に行って、もしまたオークやトロルが多くいるようなら今回の合同授業は中止にしようと思ってな」(そうなんだ。ふぁ~~)まだ寝ぼけた状態でバーミリアンのおっちゃんの後に続いた。
だけど昨日行った所に着くまでも、そこから建物まで戻ってくるまでも一切魔物とは出会わなかった。
そのためバーミリアンのおっちゃんも「これなら大丈夫かな」と授業を行うことにするみたい(良かった良かった)。
その後は部屋に戻ってレックス達が起きるのを待ち、起きた後は身じたくを整えてアリス達のクラスが来るのを待った。
暫くしてからアリス達のクラスがやって来て、みんなが集まったところで今日一緒に行動する人が発表され、レックス達はアリス(と男の子)と一緒となった。
それから暫くその場でレックス達とアリス達が話をし出し、少しして「それじゃあ出発するぞー!」のバーミリアンのおっちゃんの掛け声で出発した。
今日もまたボク達が先頭を歩いて周りを警戒したんだけど······なぜかさっきと同じで一切魔物とは出会わずに昨日ボク達が行った所まで辿り着いたのだった。
そこに着いてみんなバラバラになり、レックスやアリス達は昨日レックス達が向かった場所に行き、そしてアリスともう1人の男の子が山の崖から石のような物を取り始めた。その間レックスとジャックは周りを警戒していた。
その光景を見て数日前にレックスから聞かされた話を思い出し、(そっか。このアリス達の石集めを魔物から守るためにレックス達が一緒に来て、昨日はその準備のような事だったんだ)と理解した。
(だったら······)とボクも周りを警戒しようとしたら、(ん? あれって······)ふと視線を向けた先の地面に気になるところがあった。何か埋まっているような······。
(何だろう? あれ······)と思いながらその場所に行き地面を掘り出した。暫く掘ったら明らかにその辺りに落ちている他の石とは違うような石を見つけた。
(これ何だろう?)と思いアリスに聞こうかなと思ってアリスの方を見たら、一生懸命に石を取っていたので(やめとこう)と思い、取り敢えずその石を咥えツン! ツン!(レックス、レックス)「ん、何ベアーズ、ってその石は?」レックスに渡すことにしてレックスにその石を見せた。
(そこの地面に埋まってたの)「お前も鉱石を見つけたのか?」と聞いてきたので、そんな感じだったからコクコク(そうそう)と頷いた。
「分かった。後でアリスに渡しとくよ」と石を受け取ってくれた。
その後は周りを警戒······しようとしたらまた地面に気になるところを見かけた。そしてそこを掘ったら······またまた辺りに落ちているのとは違う石を見つけたのでレックスに渡した。
そうして、それからも次々と石を見つけてはレックスに渡したのだった。
そんな時、(あれ? 何だろう、このきれいな石)今まで見つけたのに比べてかなりきれいに光っている石を見つけた。
(まぁいっか)と思い、またツン、ツン(レックス。また見つけた)とレックスに知らせた。
「ん? また見つけたのか? あれ、何かやけにキレイな石だなぁ」と言いながら受け取ってくれて、「まぁいっか。アリスに見てもらえば」とアリスに見せに行こうとしたら、「ホントですか!?」「ええ、どうやら間違いなさそうです」「ん?」(ん?)急におっちゃん達が騒ぎだしてその様子を見ていた。
すると「全員すぐに集合しろ!!」とバーミリアンのおっちゃんが叫んだので、みんなして集まった。
そしてバーミリアンのおっちゃんから「今周りを警戒していた先生方からこちらに十数体のトロル達が向かって来ていると報告を受けた」と聞いてみんな騒がしくなった。
「そこで! 作業は一時中断し、サポート科の諸君と武力科の一部の者はここから避難してもらい、残りの武力科の者と我々でトロルの相手をする! いいな!!」「「はい!!」」と返事してみんな慌ただしく動き出した。
ボクはというと······。「アリス!」「あ、レックス」「流石に十数体のトロルを相手にとなると危険だから、ベアーズも一緒に連れてってくれ」(えー)「うん、分かった。レックスも気を付けてね」とボクはアリスに渡され、アリス達と一緒に避難することになった。
(まぁ、しょうがないか)といちおう納得理解してアリス達と昨日みんなが避難していた所に向かって暫くそこに居続けたのだった······。
アリス達と避難した先にいた間ボクはずっとアリスに抱かれたままで、「レックス達、大丈夫かなぁ?」などとアリスが話しかけてくる事があった。
その時、「アリス」「あ、マーシュ」(ん?)突然男の子がアリスに声をかけてきた。さっきまで一緒に石探しをしていた男の子じゃない子が······。
「大変なことになったね」「ええ。でもきっとレックス達が退治してくれるわよ」「うん。ホントにレックス、君の事を信頼してるんだね」「うん! 去年も私が危険な目に遭ったときに助けてくれたから」「そう、なんだ」とやたらアリスに親しく話しかけていた。
(誰なんだろう、この子?)と思いつつ、(マーシュって、何か聞いたことがあったような······)と前にマーシュって名前を聞いた覚えがあり、どこで聞いたのかを思い出そうとしていた。
そしてようやく(あっ······思い出した!)以前レックスとメリッサが一緒に迎えに来たときに話していた話題に出てきた名前だ。
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「ねぇ、レックス君」
「ん、何お姉ちゃん?」
「まだアリスちゃんとマーシュ君の事気になってる?」
(マーシュ?)
「うん、正直ちょっとね。もしマーシュがアリスと仲良くなって僕とも接する機会が増えたら、ますますマーシュが僕を殺すことになる可能性が増すだろうから」
「確かにそうよね」
(マーシュって奴が、レックスを!?)
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その事を思い出し(コイツが将来レックスを)と思ってまたマーシュの方を見たら、(······あっ)いつの間にかマーシュがアリスと手を繋ぎあっていたのだった。
(こ、こんな所レックスに見られたら······)と思ったその時、クンクン(っ! この匂い······)嗅ぎ慣れた匂いを感じたため、その匂いが漂ってきた方を見たら、レックス達がこちらに向かって来ていた。
(やっぱりレックスだー!)そう思ったらボクはアリスの腕から飛び降り、レックス達の方へ駆け出した。
「あ、ベアーズ!」アリスが叫んだけどその直後、「あーっ!」とまた叫び声が聞こえたため、(アリス達も気付いたみたいだな)と思いそのままレックス達の方へ向かった。
そしてレックスの近くにきたところでピョン!(レックスー!)とレックスに飛び掛かった。
しかし当のレックスはボクが目の前に来るまで気が付いていなかったみたいで、「ん······わっ!? ベアーズ!」目の前のボクを見て驚きながらボクを掴んだのだった。
「ビックリしたなぁ」(え、何で? けっこう前から分かってたと思ったのに)とボクでも大分手前から気付いていたんだから、レックスも気付いてたと思ったんだけど······。
なんて考えてたら後ろから「レックスーーっ!」アリスが叫びながらみんなしてこっちに向かって来ていた。そうして近くに着いたところでまたみんなして騒ぎだした。
暫くしたらおっちゃん達が「よーし、ではこれから一旦採掘現場に戻り、今採掘しかけている者はそれを取り出して、しかけていない者は道具を持ってすぐに集合するように」「全員が揃ったところで山を降りることとする。いいな!」「「はい!!」」と言ったり返事をしてさっきの場所に戻った。
戻ってからまたアリス達が石を取り出し、レックス達が周りを警戒······しだしたんだけどぉ。
チラッ! とボクは今度こそ周りを警戒しつつ、たまにレックスの方を見るんだけど、そのレックスが今度は周りを警戒しながらも、なぜかチラチラとアリスの方を見たりしていたのだった。
(何でアリスの方をあんなにもチラチラと見て······ひょっとして)そこでボクはさっきレックス達が戻ってきた時にレックスも見てしまったんだと気が付いたのだった。
······アリスとマーシュが手を繋いでいた姿を。
(それでさっきからアリスの事が気になってるんだ)と理解した上で、ボクはレックスの傍に寄り(レックス、大丈夫だよ。アリスはレックスの事を信用してるんだから)と思いながら体をレックスの足に擦り寄せた。
するとレックスもボクに気付き、「ありがとう、ベアーズ」と言って頭を撫でてくれたのだった(うん!)。
そうしてアリス達も石を取り終えたのでボク達はみんなの集まっている所に向かい、暫くして山を降りた。
降りたところでまたおっちゃん達が話した後、アリス達はそのまま帰りレックス達はまたこの建物で次の日の朝まで過ごすことになったのだった(もちろんボクも)。
その日の夜はなぜかレックスがボクを抱き上げて構ってくれたのだった。特に何か話しかけてくることはなかったけど、たまに表情を変えることがあったが何を伝えたかったのか分からなかったので、その度にボクは首を傾げて答えていた。そんなやり取りを暫くした後にボク達は眠ったのだった。
次の日の朝レックス達が起きて身じたくをしようとした時、ポロッ! コトッ!(ん?)レックスが持ち上げたズボンから何かが落ちた。
「「ん?」これって······?」レックス達も石に気付いてそれを持ち上げた。
(······あ、それ)そこでボクは思い出し、「どうしたんだ? その鉱石」ジャックが尋ねたら、ようやくレックスも「思い出した! 昨日集合がかかる直前にベアーズが見つけて、アリスに確認しようとしたけど集合がかかったから後で聞こうと思って······ポケットに閉まってそのまま入れっぱなしにしてたんだ!」(そうそう。そうだったそうだった)と思い出したのだった。
「じゃあ学校に帰ったらサポート科の先生に渡さないとね」「うん。そうだね」とジャックと話した後、みんなで部屋を出て王都に帰ったのだった。
王都に着いて学校前で解散となった後、レックスは学校の中に入ってある場所に向かった。そして······。
「失礼します」「ん? 君は、武力科の······」「レックス・アーノルドです。実は昨日の鉱石発掘の折にベアーズが······」と言ってあの石を取り出し、「こんな鉱石を見つけたのですが、サポート科の生徒に渡しそびれてしまいまして」「そうだったのか。ありがとう、こちらで受け取っとくよ」とレックスは石を目の前のおっちゃんに渡した。
するとそのおっちゃんはその石をよく見たとたん、「ん······こ、これは。まさか······」(ん?)そう言って立ち上がり、奥にいた別のおっちゃんに話しかけた。
「先生! この石はもしや······」「え? ······こ、これは金鉱石じゃないか!? どうしたんですか、これは?」「実は······」
2人のおっちゃん達が何か話し出し、そのうちボク達の方にやって来て「レックス君、この金鉱石をあの鉱山で見つけたというのは本当かね!?」「は、はい」と聞かれてレックスが返事をし、それからも色々レックスやボクに聞いてきたのだった(おかげでその時はクタクタになった)。後日······。
「じゃあ本当に凄い、というか貴重な鉱石だったんだね」「うん。あの山じゃあ金鉱石は大分前に採掘できなくなってたんだけど、今回ベアーズが見つけたことで本格的にまた調査することになって、今度はSクラスの生徒が行く事になったのよ」「へぇー」
アリスが今回の事のその後について話してくれた。
「それにしても、今回もとんでもない物を見つけたなぁ、お前は」「ホントよねぇ」って2人から言われたけど······。
(······何の事?)と言わんばかりにボクは首を傾げたのだった。
それを見てやっぱりレックスは「お前のその反応も、相変わらずだな······ハハハハハッ」「フフフフフッ」そう言って2人して笑いだしたのだった······。