第33話 脱走
――この学校ってどれぐらいの広さなんだろう?――
何日か前にそんな事を思ってからというもの、レックス達のしているジュギョウに行く事がなくなって何もする事がなくなったから、その事をずっと考えていた。
(自由に走り回れれば確かめに行けるけど······)と目の前の柵に目をやった。
(さすがにこれがあるから行けないし、それに······)ここへ来たばかりの頃にバーミリアンってヒトから言われた事を思い返していた。
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「1つ目はレックス、お前が学校にいる間はずっとこのスペース内に入れておくこと。もし俺やホイットニー先生の許可なくこのスペース外にいるのを確認したら、少なくとも学校の敷地内へ連れて来ることは禁止して寄宿舎のお前の部屋にずっと居続けさせてもらうからな」
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(もしここから出ているところを誰かに見られたら······)と思い行きたい気持ちを押さえ込むことにしていた。
それでもやはり思いが頭から離れられなかった。そんな時ふと目の前の柵に目をやり、(そういえば、飛び越えようと思ったらこの柵って飛び越えられるのかなぁ?)とそんな疑問を持ってしまった。
(試しに)と思い柵からかなり離れたところまで下がった。そして(ヨーイ)タッ! と地面を蹴り、タッタッタッタッ! と助走をつけ、スタッ(ジャーンプ)! と地面を踏み切り柵に向かってジャンプをしたのだ。
けれど、(あっ)柵にぶつかる前に勢いを殺して地面に着地した。今回は飛び越えることが出来なかった。しかし······。
(多分、飛び越えること······出来ちゃうかも)今回飛んでみてそう思ってしまった。そのため(もう1回やってみよう)と思いさっきより走る距離を長くし、走り出して(ジャーンプ!)飛んで見た。すると······。
ピタッ!(······飛び、越えれちゃった)何と柵を飛び越える事が出来たのだった。けれど······。
(ど、どうしよう。誰かに見られたら······)と慌てだしたのだった。
(と、とりあえず戻れるか試してみよう)そう思ってまた柵からそこそこ距離を取って走り出し、ジャンプしてみた結果······。
ピタッ!(······も、戻れたぁ)何とか今回も柵を飛び越える事が出来たのだった。
気持ちが落ち着いたところで今回の事を振り返り、(······よし!)ある決意を固めた。
その翌日······。
「じゃあね、ベアーズ」(行ってらっしゃーい!)いつものようにレックスによってスペース内に放たれ、レックスはジュギョウへ行った。レックスの姿が見えなくなって少しした頃······。
(よし!)そう意を決したボクは······スタッ! 柵を飛び越えスペースから出てきたのだった。それから······。
タッタッタッタッと目の前の森へ走り出した。走りながら(やった! やった! 出られた、出られた!)スペースから出れた事をとても喜んだ。
そして森を抜けたところで······(う、うわぁ!!)目の前に広がっている風景を見てとても感動していたのだった。
(色んなたてものがたくさんあるんだ)見えている範囲だけでも様々なたてものや造りモノなどがあった。
そんな中である大きなたてものの事が気になった。(あんなにも大きなたてものの中はどうなってるんだろう?)と思い行きたい気持ちになったが、(そろそろ1度帰った方が良いかな?)と思ってスペースに戻ることにした。
無事誰にも見つからずスペースに戻る事ができ、そのすぐ後にレックスがお昼ごはんを持ってやって来た(危なかったぁ)。
「ベアーズ、お昼ごはんだよ」(いただきまーす!)ムシャムシャムシャとお昼ごはんを食べたが、「ベアーズ。何かごはん食べるスピードが早くない?」
ム!?(マ、マズイ!?)動き回ってお腹が減っていたこともあり、ついつい早く食べていた事をレックスに指摘され焦った。
(そ、そお?)とごまかすように首を傾げた。「まぁいっか」何とかごまかす事ができ、そしてお昼ごはんを食べ終えレックスは帰って行った。
(ふぅ)ほっとしたところで(さて)スタッ! また柵を飛び越えさっき行きたいと思った大きなたてものに向かった。
その大きなたてものの下に着き、(ほ、ほんとうに大きいや)余りの大きさに驚いていた。(中はどうなってるんだろう?)とそのたてものの外側を歩き回った。
するとある所の窓がほんの少し空いていて、ぶら下がることが出来そうな突起部分が窓に設置されていたので、(あそこは何だろう?)その突起部分に手を置き中を覗いた。
中には姿はハッキリ見えなかったが、だれか1人ヒトがいる事は分かった。
その時突然不意に「ん?」何かの気配を感じたのか目の前のヒトが急にボクがいる窓の方に体を向けてきた。
(ヤバイッ!)ボクはとっさに突起部分から手を離し、その突起部分の下に隠れた。
その後窓が開けられた音が聞こえたが、ボクの事は気付くことなく窓の閉まる音が聞こえた。
(ふぅ。危ない、危ない)そう思ってそのままその場を離れることにした。
ギィッ! そんなベアーズを先ほどの窓を少し開け、そこから先ほどの人物でこの養成学校の校長であるジルコニー校長は走り去るベアーズを鋭い眼差しで眺めていた······。
その後もいくつかの部屋を覗いた後スペースに戻り、レックスが迎えに来てキシュクシャに帰った。
そしてその翌日、大きな出来事が起こってしまうのだった······。