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野生子グマの人生変転記  作者: きこうダきこう
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第32話 注目の的

 その日、ボクはいつもより機嫌が悪かった。なぜなら······。


(んー、うるさいなぁ)と思いつつ少し体を動かしたら「あっ、また動いた!」「ホントだぁ!」ガヤガヤ、ザワザワ······。なんとボクのいるスペースの周りにレックス達以外の多くのヒトが集まってボクを見ていたのだった。


 ボクが色んなクラスのジュギョウってのに参加したことでボクの存在が多くのヒトに知れ渡り、またここで過ごしていることも知られたためにボクをじっくり見に来るヒトが多くなってきたのだった。


(今日はゆっくり眠りたいのにー)と思っていても、「こっち向いてよー」「こっちもー」などあちこちから色々言われたのだった。


 そのため(もうっ!)と感じボクはある所に向かった。そんなボクの歩き姿を見ただけでも「あっ、歩いた、歩いた!」「ホントだ、すげぇ!」などの声が飛び交った。


 そしてボクは目的のスペース内に立っている······木の根本に空いてる穴に入り、(おやすみなさーい)また眠りだした。


 その後も外が騒がしかったけど、ボクには全然聞こえずぐっすり眠る事が出来た。



 どれだけ眠ってたか分からないけど、不意にすぐ近くから「ーズ。ァーズ。ベアーズってば」と呼ばれ、(ん? レックス?)ようやくその声がレックスだと分かって声のした方を覗いたら、やっぱりレックスでお昼ごはんを持ってきてくれていた。


「どうしたんだ? こんな所で寝てるなんて」(だって、周りに多くのヒトが来てうるさいんだもん)と言いたげな様子を見せた。


 するとレックスも何か気付いてくれて「ああ、ひょっとしてスペースの周りに人が集まって、それが鬱陶しく感じたのか?」と聞いてきたのでコクコク(そうそう!)と頷いた。


「まぁ仕方がないよなぁ。あちこちのクラスがお前を授業で利用してきたことでお前の存在も学校中に知れ渡った事だし、そんなお前をじっくり見てみたいって皆思っちゃうのもなぁ」とレックスは言ってきた。


(だけど)と何か言いたげな様子を見せたら、「まぁ、もし本当にイヤそうだなぁって感じたら僕から先生に相談するし、きっと先生達も何か考えて下さるだろうから、ね」(うん)その時はそれで話は終えてお昼ごはんを食べた。


 それからまた何日か過ぎ、3日後にレックス達がお昼ごはんを持ってきた時に事態は大きく動いた。


「はい、ベアーズ」(いただきまーす!)ムシャムシャムシャ「ベアーズ。今日は良い知らせがあるよ」ムシャ?(ん? なになに?)


「今朝全クラスに言い渡されたみたいなんだけど、今の僕達の学年の間お前を授業で利用することが禁止、つまり止められたんだ」「ガ!?(えっ、そうなの!?)」


「それと、このスペースにも僕とごく一部の人以外が近付くのも禁止させられたんだ」「ガァ!(そうなの!)」それらを聞いて本当に驚いた。


「校長先生が先生達にちょっとお前の力を授業で利用しすぎだと怒ったみたいだし、先生方が時々ここの様子を見に来ていて、やっぱり皆のお前に対しての態度が良くないと感じてたみたいだったから、両方とも禁止することにしたんだよ」(そうだったんだ)


 レックスの話を聞いて嬉しくなったのだが、(でも、それじゃあ······)さっきのレックスの話を思い出して少し寂しい気持ちにもなった。


 そんなボクの様子を見てレックスが「ベアーズ、ひょっとして何か勘違いしてないか?」(かんちがい?)


「さっき言ったのは、"僕とごく一部の人"()()の人が近付くのを禁止させられたんだよ」「······ガ?(え?)」レックスの話を聞き、意味があんまり理解出来てなくて呆気に取られていた。


「つまり、僕は今まで通り普通にここに来られるんだよ」(······そうなの! やったぁ!)ようやくレックスの言ってる事を理解し、喜んだのだった。


「やっぱり勘違いしてたな?」「そうみたいね」「ハハハハハッ。まぁ勘違いしても仕方ねぇだろ」「そうね。ベアーズちゃんにはちょっと分かりにくかったかもしれないわね」とみんな思い思いの事を言ってきた。


(そうそう! あ、じゃあごく一部って、ひょっとして)とボクはアッシュとアリスを交互に見つめた。


 ところが「あー残念だがベアーズ。ごく一部の人ってのは、俺もアリスも違うんだ」「ガ?(え?)」「私達もこれからはここに来る事が禁止させられたのよ」(え? そうなの!)とボクはレックスをまじまじと見つめた。


「そうみたい。僕もさっき2人から直接聞かされたんだ」(じゃあ、ごく一部って······だれ?)ボクが首を傾げて考えている様子を見てレックスが「まぁそのうち分かるんだから、今は気にしなくて良いんじゃない?」と言ってきた。


(······それもそっか)ボクもそう思って残っていたお昼ごはんをまた食べだした。そして食べ終えたところでレックス達は帰って行った。


 その後もボクは(ごく一部のヒト······だれ何だろう?)とずっと考え続けたのだった。


 そして、その人物の正体は数日後に分かった······。




「はい、どうぞ」(いただきまーす!)ムシャムシャムシャ「いつも本当に美味しそうに食べるわね」(だってホントにおいしいんだもーん! メリッサ)とお昼ごはんを持ってきてくれたメリッサを見上げた。


 そう、レックスの言っていたごく一部のヒトとはメリッサの事だった。


 そのメリッサはボクにお昼ごはんを渡した後、ずっとボクのスペースの中を黙って見続けていた。


 そしてお昼ごはんを全部食べ終えたところで、「ガア!(メリッサ、ごはん食べ終えたよー!)」と伝えたら、メリッサもボクの方を見て「うん、ありがとう」と言って帰って行った。


 そんなメリッサの後ろ姿を見ながら(ごく一部のヒトがメリッサになったのも、何となく分かる気がする)と思った。


 アッシュやアリスの場合だとこれまで······。


「美味しいか? ベアーズ」「ガア!(うん!)」とか、「美味しい? ベアーズ」「ガア!(うん! おいしいよ)」なんて必ず会話をしていた。


 けどメリッサの場合はごはんを置いたらボクをずっと見ているか、スペースの中を見続けていてボクとは全然会話をしなかった。だから他のヒト達もうらやましがらなくてきっとお昼ごはんを持ってきてくれる事になったんだな······と納得した。


(それにしても······)ボクはふと周りを見渡した。誰もいないと、スペースの周りも結構広かったんだなぁと思った。


 その時あの木が目に入ったので、(久しぶりに)その木に近付いて登りだし、一番上の木の枝に着いた。


 そこから見える景色を眺めながらふと(そういえば、この学校ってどれぐらいの広さなんだろう?)と疑問に思ってしまった。(うーん······)そう思いながら木を降りだした。


そ・し・て、その時思った疑問によってこの後とんでもない事態を引き起こすのだった······。

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