第26話 またまたジュギョウへ
初めてジュギョウへ参加してから数日後。
「ベアーズ。またお前の力を借りたいってクラスがあるみたいだよ」とレックスがボクを連れて行った。
(今度はどこなの?)と言いたげにレックスを見つめたら「ん? ああ、今度はサポート科の2年生のクラスだよ」(そうなんだ)と納得したところで目的地に向かった。
そして言われた何かがたくさん生えている場所に着き、前回同様レックスが恐らくせんせいとみんなから呼ばれるヒトに挨拶して「それでは本日は魔物に見つからないよう、また遭遇した際の特殊な道具を用いた逃げ方について説明する」と言い出した。
「君達サポート科の諸君は実際騎士団などに所属した際には、事前調査や戦闘中においては武力部隊ならびに魔法部隊を手助けする役割を担う事となる。そのため、事前調査においては敵に気付かれないように行動しなければならない。その時に役立つ物の1つが"これ"だ」と袋に入った何かを出した。
するとそこで「レックス君。ちょっとベアーズ君に目を瞑っててもらうように伝えてくれないかね?」(ん?)せんせいがレックスに何か言ったら「ベアーズ。僕が良いって言うまで目を閉じてて」とレックスがボクに言ってきたので、(分かった)ボクは言われた通り目を瞑った。
少しして「ベアーズ。もう良いよ」とレックスに言われたので目を開けた。するとせんせいが「ベアーズ君。実は君に目を閉じてもらっている間に1人近くに隠れてもらったんだ」(え? そうなの?)
「それで、このハンカチがその者の持ち物何だが、このハンカチを用いてその者がいる場所が分かるかね?」とハンカチを出されたので、クンクンとハンカチの匂いを嗅ぎ、レックスに地面に放してもらってすぐにそのヒトが隠れたと思われる場所に進み、近くの茂みに着いたところで「ガウ!(ここにいるでしょ!)」と吠えた。
すると後ろから驚きの声が聞こえて「正解だよ」とせんせいの声と同時に目の前の茂みからヒトが現れた(やったー!)。それを見てすぐレックスの下に戻った。
「今見たように敵に気付いて隠れても、何か物を落としたらその物に付いた匂いで相手に居場所が知られることがある」(たしかに)
「しかし、この袋の中に入っている粉を物に振り掛けてみると······」と言ってさっきのハンカチに袋の中の粉を少しかけた。
そして「すまんがもう一度同じ所に隠れてくれ」「分かりました」さっきのヒトが同じ所に隠れた。
その後ボクに「ではベアーズ君。またこのハンカチの匂いを嗅いでさっきの生徒のところに向かってみてくれ」とハンカチを出してきたので匂いを嗅いでみた······が。
クンクン(あれ?)クンクン、クンクン(匂いが、分からない)突然匂いを感じられなくなった(何で?)。
「どうした、ベアーズ?」「匂いが分からないのだろう」「えっ!?」(うん、そう)「もう出て来て良いぞ」とさっき隠れたヒトは出てきた。
「実はこの袋の中に入っているのはデオドラントパウダーと呼ばれている匂いを消す効果のある粉なんだ」(そうだったの!?)それを聞いてボクは驚いた。
「こういった物を利用すれば物を落としても敵に匂いで居場所が知られることはなくなる事になる」「「あぁー!」」(たしかに)せんせいの説明を聞いて全員が納得した。
「しかしこのデオドラントパウダーの原料となる素材は、希少な物ゆえになかなか手に入らないんだ」(そうなんだ)
「そこで、次は実際魔物に遭遇した時に役立つ物を紹介する」とまた違う袋を2つ取り出した。
「この2つの袋の中には魔物の動きを止めるのに役だつ粉末がそれぞれ入っており、1つは······」と2つの内の1つの中身を紙の上に少し出し「ベアーズ君、ちょっと嗅いでみてくれたまえ」と言われて(何?)クンクンと嗅いでみたら、(っ!? あれ、体が······うご、かない)何と体を動かすことが出来なくなってしまった。
そんなボクの様子がおかしくなった事にレックスも気付き、「どうした? ベアーズ」「大丈夫、少々体が痺れているだけだよ」「し、しびれてって?」「この袋の中には体を痺れさせるナンナスパウダーという粉を入れてあるんだ」
「ナ、ナンナスパウダー?」「うん。本来は魔物に向けて袋ごと投げつけて動けなくさせるのだが、今回は匂いを嗅いだだけだったから少しすれば動けるようになるよ」「そうなんですか?」「ああ」(ホントにぃ??)そう話を聞いたけど、ボクは不安でいっぱいだった。
「そしてもう1つの袋の中には······」とまた中身を違う紙の上に少し出してそれをボクに近付けた。
すると(今度はな······あれ? 何か、良い気持ちに······グゥ)何とボクはそのまま眠ってしまったのだった。
「ベアーズ?」レックスがベアーズに話し掛けてもベアーズは何の反応もしなかった。
「眠っただけだよ」「ね、眠ったって?」「この袋の中には眠気を誘うスリープパウダーという粉を入れてあり、これも本来は魔物に袋ごと投げつけて眠らせるものなのだ」
そこまでの説明を聞いて生徒らからは驚きや納得した感想が飛び交った。
「君達は普段任務に赴く際にはこういった効果を持つ粉末や薬などをいくつか常備し、いざ魔物などに遭遇した時はこれらを用いてまさに武力部隊や魔法部隊を"サポート"したり、自分達が生き残る手段を考えなければならないのだ。分かったかね!」「「はい!」」
先生と生徒とのやり取りが一段落したところで「レックス君、今日はどうもありがとう。もう帰ってもらって構わないよ」「はい、分かりました」「ベアーズ君が起きたら、この子にもお礼を言っておいてくれたまえ」「分かりました」とやり取りをした後にレックスはその場を離れた。
意識がなくなってどれぐらい過ぎたか分からないが、(······うーん)「······ズ。······ァーズ。ベアーズってば!」(んー? レックス?)
レックスがボクの名前を叫びながら呼んでいるように聞こえたので、ゆっくりと目を開け出した。
そして完全に開いて1度瞬きをしたところで目の前にいたレックスを見据えた。
(レックス?)と思いながら首を傾げたところ「やっと起きたか?」(やっと?)「お前、お昼からの授業に参加して少ししてからずっと眠ってたんだぞ」(そうなの!?)それを聞いてさすがにボクも驚いた。
(お昼からのジュギョウ······あれ? ジュギョウって······何したっけ?)今日やった事をすっかり忘れてしまい、さすがにボクも困り顔となった。
「どうした? ひょっとして、今日のこと忘れちゃったのか?」コク(うん。そうみたい)レックスからの質問にそう答えるように頷いた。
するとレックスが「忘れたなら忘れたで良いんじゃない? それだけ大した内容じゃ無かったって事だろうから」と言ってくれたので、(······そうだね!)と言わんばかりの笑顔を作ったのだった。
「それじゃあ帰ろっか」コク(うん!)こうしてボクはその日自分に起こった事をすっかり忘れ、レックスとキシュクシャに帰ったのだった。