第2話 ヒトが仕掛けたワナ
「うーん······」今日も父ちゃんよりボクが先に起きた。そしていつものように「とうちゃん! とうちゃん!」と父ちゃんを揺れ起こした。
少しして父ちゃんもいつものように「ああ、おはよう。本当にお前は朝が早いよなぁ」「へへへへ」と言葉を交わした。
その後「じゃあ朝ごはん獲ってくるよ」と言ってきたから、「とうちゃん。ボクもついてっていい?」と聞いたら、「まぁたまには良いか」「やったー!」と今日は一緒に川へ向かった。
川に向かっている最中不意に父ちゃんが「っ! 止まれ!」「えっ!?」「こっちに隠れろ!」と草むらにボクを誘導した。
「どうし······」「しっ!」隠れた理由を聞こうとしたら止められ、「(あそこを見ろ)」と少し先を見るように促されて見てみたら、数体の何かが通っていた。
「(とうちゃん、アレは?)」「("ヒト"と呼ばれている生き物で、1体ならまぁ問題ないかもしれないが、あれだけいるとこちらが殺られる可能性があるんだ)」「(そうなの!?)」「(あぁ。だからこうして隠れてやり過ごしたんだよ)」と説明してくれた。
そのヒト達が通り過ぎ少ししてから「さて、それじゃあ行くか」「うん!」また川に向かった。
その途中「あ、とうちゃんみて。あそこにおおきなくだものがみのってる」ボクが木に実っている果物を見かけ、そこに走り寄ろうとしたら「っ! 止まれ!!」「うわっ!?」突然父ちゃんが叫びボクを咥えて制止させた。
「な、なに?」「足下を見ろ」と言われて下を見たら、何かが地面に置かれていた。
「これは?」「さっきのヒトが俺達のような生き物を捕らえるために置いた"ワナ"と呼ばれているモノだ」「ワナ?」「あぁ。これに引っ掛かったら身動きが出来なくなり、そのまま奴らに殺されてしまうんだ」そこまで聞いてボクも恐怖感を覚えた。
「森の中には他にも色々なワナが仕掛けられている事があるからな。気を付けるんだぞ」「わ、わかった」と言葉を交わしたあと改めてボクが見つけた果物を獲って川に向かった。
川に向かいながらさっき父ちゃんから聞いたワナの事について話を聞いた。アレ以外にも地面を踏むと突然穴が開いて下に落ちて行くようなモノや、突然鋭い何かが飛んでくるようなモノなどもあるんだと教えてもらった。
そうした話をしてたら川に着いたので、魚を数匹獲って1匹ずつその場で食べ、残りを持って住み処に戻った。住み処に着いたら昼ごはんの時間になったから持ち帰った魚を食べ、その後いつものように森の中へ遊びに出掛けた。
その出来事から数日後、大きな出来事がボクに起こった。
その日も昼ごはんを食べてから森の中へ遊びに出掛け、ガサガサ、ピョンッ! ガサガサ、ピョンッ! と草むらの中を移動して遊んでいた。
(あーきもちいい)と楽しんでいたら、ガサガサ、ピョ、ブチッ!(えっ?)いつもと違う音が聞こえたので驚き動きを止めた。
「な、なんだいまのお······」音はと言おうとした直前、ヒュー! とボクの方に何かが物凄い勢いで飛んで来るのが分かった。
「っ! うわっ!?」咄嗟に飛んで来たモノを避けたんだけど、ヒュッ!「うっ!」足の1本に飛んで来たモノが掠ってしまった。
「な、なんだったんだろう? アレ」飛んで来たモノが飛んでいった方を見ながら呟いた。
「まぁ、いっか······そろそろかえろ······」と歩き出そうとした直後、ビキッ!「い、いったぁーー!!」突然体に激痛が走った。
痛みを感じた辺りを見たら、先ほど飛んで来たモノが掠った足であった。
「さっきのでケガしちゃったんだ」と理解し、「このあしでかえれるかなぁ?」と不安に思いながらゆっくりと歩き出そうとした。
······が、ビキッ!「いたっーー!」やっぱり歩くことは出来そうになかった。
(これじゃあかえれないやぁ。······どうしよう)と落ち込んでしまったのだった。
その頃親グマも息子がいつもなら帰ってくる頃に帰って来ない事に心配しだし、「何かあったのか?」そう思って探しに出掛けたのだった。
一方の子グマもとうとう帰るのを諦め、その場にうずくまってしまった。
(うっ、うっ、とうちゃん)帰れなくなった事でもう会えなくなった父ちゃんの事を思いだし、ついにボクは泣き出してしまった。
その時、ガサガサ! と近くの草むらが音を出して揺れ出した。
(な、なに?)そう思ってそちらの方を見たら······そこから以前見たヒトだと父ちゃんが教えてくれた生き物······に似ていて少しあの時より大きさが小さい生き物が2体現れたのだ。