第19話 スペースと約束事
レックス達が行っている学校って所でボクもレックス達と一緒に過ごす事が出来るようになったその日、とりあえず今日はレックス達が眠ったりする所 ("キシュクシャ"ってレックス達は呼んでいるみたい)に行く事となった。
学校を出てしばらく歩いたところでキシュクシャに着き、中に入ってレックスに用意された部屋に入った。
「さぁベアーズ。ここがこれからお前が過ごすことになる部屋だよ」そうレックスに言われつつ部屋の中を見渡した。
(ここが今レックスの過ごしている部屋かぁ)見渡しながら村でレックスが過ごしていた部屋を思い返し、(こっちの方がすごい所だなぁ)と思った。
「さてと。それじゃあ今日1日はここで大人しくじっとしてるんだぞ」レックスに今一度そう言われ、分かっていると言わんばかりにコク(うん! もちろん)と頷いた。
それから一日中レックスと部屋で過ごし、ごはんもレックスが食べに行った後に戻ってきた時、持ってきてくれたモノを食べた。
そうして少ししてから眠ったのだった。
翌朝。(うーーーん)いつもは匂ってくる草木の香りがしなかったので、(どうしてだろう?)と思ってかなり早く目を覚ましてしまった。
そして周りを見た途端 (あれ? ここ、どこ?)と混乱しそうになったが、(そうだ! 昨日レックスがいるキシュクシャの部屋で過ごす事になったんだ!)と落ち着きだした。
その直後に「うーーーん」レックスも起き出したようだ。それから少ししてレックスは周りを見てボクを見つけるや「あぁおはよう、ベアーズ。早いねぇ、起きるの」と挨拶をしてきた。
ボクも(うん。だっていつも感じた匂いがしなかったもん!)と思いながらコクと挨拶するように頷いた。
それからレックスが身じたくをしてごはんを食べに行った後にボクも食べ、キシュクシャを出て学校に向かった。
本当はもう少しゆっくり出ても良かったのだけど、ボクが過ごす事になるスペースが気になって早く出たのだった。
そうしてボク達は学校内の昨日の場所に向かった。すると······。
「······」(······)目の前の光景を見てボクもレックスも驚きすぎて言葉も出ず、立ち尽くしてしまった。
そう、目の前にはかなりの範囲にレックスの村の入り口に作られていたのと似た囲いのようなもの(柵って呼ばれているみたい)が立てられていたのだ。
ボク達が立ち尽くしていると後ろから「おおレックス。早いなぁ」と昨日のバーミリアンてヒトがやって来た。
「せ、先生。これって?」「ハハハ、凄いだろ。あの後主にサポート科の先生方に手伝ってもらってあっという間に出来たんだ」「こんな短期間でこれだけの柵が立てられるなんて······」
「当たり前だ。ここは王国騎士団に入りたがっている者達を養成する学校だぞ。騎士団に入団したら森の中や草原地帯で一夜を過ごすための夜営地を設営する必要もでてきて、テントなどを設置する作業を短時間で終わらせる必要があったりするんだからなぁ。俺達ぐらいともなればこんな柵の設置など造作もない事だ」とバーミリアンてヒトは言った。
「さて、見ての通りこれだけ広くスペースを設けたのだから問題はあるまい。もし雨が降ってきても、あそこの木の根もとに空いている穴に避難すれば回避出来るだろうからなぁ」「え?」(え?)そう言われてボクもレックスもスペース内に生えている大きな木の根もとを見た。
確かにそこには大きな穴が空いていて(確かにあんだけ空いてたら、雨が降ってきても大丈夫だ)と納得した。
「確かにそうですね」「ああ。さて、昨日話したコイツを学校で過ごさせるに当たっての約束事だが」「はい」(何々?)
「1つ目はレックス、お前が学校にいる間はずっとこのスペース内に入れておくこと。もし俺やホイットニー先生の許可なくこのスペース外にいるのを確認したら、少なくとも学校の敷地内へ連れて来ることは禁止して寄宿舎のお前の部屋にずっと居続けさせてもらうからな」「わ、分かりました」(気を付けまーす)
「2つ目は、とりあえず冬季休暇に入るまでは学校と寄宿舎との行き来に限って連れ出すことは許可するが、それ以外の時にこのスペース内や寄宿舎のお前の部屋から出すことは禁止とする。もし街中でソイツが何か問題を起こしたといった報告があれば、即故郷の森に返してきてもらうからな」「は、はい」(絶対そうならないようにしないと)
「まぁ冬季休暇に入ったら1日や2日ぐらいは部屋から出して街を散策させても構わないがな。もちろん、お前が付きっきりで監視をするのが条件だ」「はい。分かりました」(やったー!)
「そして3つ目は、これも冬季休暇に入るまではアリス・テレンシアとアッシュ・ハーメルンの両名以外の者にはコイツの事は秘密にしておくように。2人に話すことは許可を得られたからな」「ありがとうございます」(やったー!)
「うん。まぁ不可抗力で誰かに知られた場合は仕方ないが、その者にも他の者には知らせないようにキツく言っておくんだぞ」「はい!」
「とりあえず今の3つの事を守れば冬季休暇明けまでは一緒にいられるというところだ」「分かりました」(やったー!)
「まぁ休暇明けからの事はその時に話すとしよう」「はい!」「じゃあソイツをスペースに放ってさっさと教室に向かえよ」「分かりました」と言い残してバーミリアンてヒトは去った。
「それじゃあベアーズ」レックスはボクをスペースの中に入れ「お昼ごはんを食べたら兄ちゃんやアリスを探して連れて来るから、それまではこの中で大人しくしてるんだぞ」「ガウ!(うん!)」「じゃあね!」とレックスはどこかへ向かった。
レックスの姿が見えなくなった後、ボクはスペースを見渡し、(本当にこれから新しい生活が始まるんだぁ)と胸を躍らせたのだった······。