第14話 だーれもいない生活
アリスも村を出てボクが仲良くしていたヒトがみんないなくなってしまってからのボクはというと······。
「待て待てー!」「こっちだこっちー」「うわぁー!」他の動物の子供達と仲良く遊ぶようになっていた。もう既にボク達への恐怖心も失くなったみたいで、ボクから誘うことが多いんだけどみんなから誘ってくれることもあり、それで追い掛けっこなどして遊ぶことにしてるんだぁ。
それに、ピクッ!「っ! みんな! 来たよ!」「「っ!」」ガサッ! ボクがレックス達の村のヒトが来たのを感知したらみんなに知らせてすぐに草むらに隠れる······といったお遊び(?)もしだしたのだった。
その事はボクだけで遊んだりしている時も、ピクッ!(来たっ!)ガサッ! と草むらに隠れているのだった。
しかも最近はどれぐらいヒトが近付いてくるまでバレずにそこにいられるのかといった遊びをしだしたのだった。
こんな風にレックス達がいなくなっても他のみんなとそれなりに仲良く、そして楽しく過ごしていた。
だけどやっぱり心の奥ではレックス達がいない事に寂しさを感じていた。
そんなある日、(あれ? あれって)森の中をなぜかレックスの父ちゃんが1人で川の方に歩いて行くのを見掛けた。
(どうして1人何だろう?)いつもは誰かと一緒に森に入って来ているのに······。そう思いつつボクは後を付いて行った。
そうしてレックスの父ちゃんは川まで行ったところで座り込んだ。それを見届け、(あれ、この雰囲気って······)以前にレックスとアッシュが村を出て行くと伝えてきた時と同じ雰囲気だった。
(ま、まさか······レックスの父ちゃんも!?)と思ってボクはレックスの父ちゃんに近付いた。
「おぉ、ベアーズ」(レックスの父ちゃん、何しに来たの?)「実はな、お前に伝えておきたい事があってな」(や、やっぱりレックスの父ちゃんも?)そう思ったがレックスとアッシュの時とは違った。
「実はな、昨日アリスちゃんから手紙が届いたんだ」(えっ、アリスから!)そう聞いてボクはレックスの父ちゃんをマジマジと見た。
「で、その手紙にもうすぐ長いお休みに入って3人とも休める事になったから、アリスちゃん達村へ帰って来るって書かれてたんだ」(っ! レ、レックス達が村に帰ってくる!)それを聞き(わーい! レックス達が帰ってくるんだぁー!!)そう思ってボクはピョンピョンと跳び跳ねて喜んだのだった。
しかし、その後のレックスの父ちゃんから出た言葉を聞いてボクは驚いた。
「喜んでるところ悪いんだがなぁ、ベアーズ」(ん? 何ー?)「帰って来るのは、アリスちゃんとアッシュ君だけなんだ」(······え?)それを聞いてボクはまたレックスの父ちゃんをマジマジ見た(ど、どういう事? アリスとアッシュだけって。レ、レックスは?)。
そうボクが聞いていると感じたレックスの父ちゃんは「何かレックスの奴、その休みの間にどうしてもやりたい事があるみたいなんだ」(や、やりたい事?)「それで村には来れないみたいなんだよ」(そ、そんなぁ)レックスの父ちゃんからそう聞いてボクは落ち込んでしまった。
「やっぱり落ち込むよなぁ」(だ、だってぇ)以前にアッシュやアリスがお休みには帰ってくるって言ってたんだもん!
「そうなるだろうと思ってお前には先に知らせておいた方が良いと判断して伝えに来たんだ」(そう、なんだ)
「レックスに会えると思ってたのに残念だったな、ベアーズ」(······)「じゃあな」そう言ってレックスの父ちゃんは帰って行った。
レックスの父ちゃんが帰った後もボクはしばらくその場で佇んでいた。そうしていつどうやって帰ったか覚えてないが、いつの間にか住み処に戻っていたのだった······。
それからしばらくの間ボクは住み処から一歩も外に出なかったり、出ても他のみんなと遊んだりせず森をただただ彷徨い続けて過ごしていたのだった。
その間ずっと心の中では(レックスは帰って来ない······レックスに会えない)と思い続けて。
そんな風に何日も過ごし続けた後······。
「待て待てーーー!!」「「うわぁーー!」」「待てー!」ボクは前みたいに、いや······前以上に元気よくみんなと遊んでいたのだった。
「ベ、ベアーズ! き、きみ元気が無かったんじゃあ?」と1匹がそう聞いてきたが、「何の事ー」ととぼけ、「「えぇーーー!?」」みんながそう叫んだのだった。
住み処にいる時も、パクパクパクパクと父ちゃんが獲ってきてくれた食べ物をガツガツと食べるようになり、「······なぁ息子よ」「何? 父ちゃん」「お前、本当にどうしたんだ?」「何が?」「······いや、何でもない」とそれ以上は何も言ってこなくなった。そんな風に毎日を過ごすようになったのだった。
さすがにボクもみんなのそんな様子を見て(やっぱりみんな驚くよね。けどもうレックスの事はボクの中では大丈夫になったから、心配いらないよ)と思ったのだ。
そう、それはレックスの父ちゃんからレックスが帰って来ないと伝えられた数日後の夜の事だった。
いつものように(······レックス)とレックスの事を思いながら眠っていると、急に目の前がとても明るく眩しくなった。
(んー、何?)と思った直後「ベアーズ、ベアーズよ」とボクを呼ぶ声が聞こえたので目を開けてみたら、やはり目の前だけが明るくなっていた。
「だれ?」声の主に聞いてみたが「久しぶりだな、ベアーズよ」と答えた。
(久しぶり? ······あっ!)そこでようやくその声が以前レックス達の言葉が理解出来るようになる前に聞こえた声だと思い出した。
「思い出してくれたようだな」「うん。久しぶり」とあいさつを交わした後に「ベアーズよ。レックスに会えないと分かってそんなにも悲しいか?」と聞かれたので「······うん。だってだって······」
続けて何かを言おうとしたら、「安心するがよい」(えっ?)「確かに今回はレックスとは会えぬが、近い内にレックスと再び必ず会える事となる」「え······ホ、ホント!? ホントのホントに!」ボクは興奮気味に訪ねた。
「うむ。必ずじゃ」そう聞いて「や、やったぁーーーっ!」とボクは久しぶりに大きく喜んだ。
「元気が戻ったみたいだな?」「うん!」「ではもう周りの皆を心配させる事は無いな?」「あ、······はい」「ではこれからはそのように暮らすのじゃぞ」「うん。分かった」「ではな」と言って光は消えたのだった。
(近い内にレックスとまた必ず会える)光から聞こえたその声の言った事を信じ、ボクは再び元気を取り戻して暮らすことになったのだった。
そして、レックスの父ちゃんからアッシュとアリスが帰って来ると聞いて何日か経った頃、ついにこの日が訪れた······。