第12話 レックスとのお別れ2
レックスからレックス自身のとんでもない秘密を聞かされ、(············)あまりの驚きの事にボクは何も考えられず、ただただ固まってしまったのだった。
「そりゃあ驚きすぎて固まっちゃうよね」と言われても(······)まだ固まったままだった。
「それで人生をやり直させてもらえた事で、僕は何としてでも皆がトロルに殺される事を阻止しようとずっと考えてたんだ」そこまで聞いてようやく固まった状態を解き、(あっ! だから、あのさかなつりのときアッシュと······)
そう思っているとレックスも「それであの魚釣りをしていた時、アッシュ兄ちゃんにも秘密を打ち明けて一緒に何とかする方法を考え、父さんにだけ話す事にしたんだ」(やっぱりそうだったんだ)
「それで父さんに相談して······」そこまで言ってレックスは少し上空を見上げたので、ボクもつられて見上げた。
(あっ)ボク達の視線の先には、以前レックスの父ちゃんから教えてもらった山が見えた。
「あの山のてっぺんに住んでいるハウル様って言う賢者様に会いに行ったんだ」(ハウルさま?)
「そしてその後砂漠の中にあるエルフ族が住んでいる里に行ってトロルを倒す手段を手に入れ、お前にも協力してもらって襲撃に備えた準備をしたんだよ」(あっ! あれかぁ)その時の事を思い出していた。
「そうして実際にトロルが襲ってきたけど、何とかトロル達を倒す事が出来たんだ」(うん。そのことはとりさんからきいてる)
「だけど······」(え?)「その時前の人生では起こらなかった事が発生したんだ」(ええっ!?)前の時には起きなかった事って一体······。
「それに」(そ、それに?)「前の人生で経験した大きな出来事、例えば君達親子との遭遇やベアーに助けてもらって倒した魔物、オークって呼ばれている奴何だけど、そいつとの出会い、そして今回のトロルの襲撃とかは今回も実際に起こっているんだ」(そう、なんだ)
「だから、きっといずれは養成学校に入って騎士団に入団する事になると思うんだ。それなら自分から養成学校に行こうと決めたんだよ」(そういうことだったんだ)
「ただ」(ただ?)「養成学校に入るのに試験というのを受けないといけなくて」(しけん?)
「その試験を受けられるのが10歳からで、僕はあと1年待たないと受けられないんだ」(えっ、じゃあ)「で、その1年間はハウル様のところに行って修行って体とかを鍛えてもらう事なんだけど、それをしてこようと考えてて」(そういうこと)
「明日そのハウル様のところに向けて村を旅立つ予定なんだよ」(あしたぁ!?)突然明日ムラを出ると聞いて驚きの表情を浮かべた。
「だから今日君に会いに来て君にも全てを話しておこうって思ったんだ」(そう、だったんだ)
「というわけなんだけど、ボクが話した事分かってくれたかな?」とレックスに聞かれ、少しだけ間を空けてコク、コク(うん。わかった、とおもう)と2度頷いた。
「ありがとう。その上でなんだけど」(うん?)「ボクの決意した事を受け入れてくれるかな?」(けついしたこと? あっ!)ハウルってヒトのところに向けて明日ムラを出る事か。
その事はさすがにすぐに反応は出来ず、ボクの中でよくよく考え、考えた末にコク(うん)と頷いたのだった。
「ありがとう。ベアーズ」とお礼を言われた(だって、そうじゃないとしょうらいレックスがたいへんなことになるんだったら、うけいれるしかないじゃないかぁ)。
「だけど、本当に人生をやり直す事が出来て良かったって思ってるんだ」(なんで?)そう言われてボクは首を傾げた。
「まず君達親子との事何だけど」(ボクたちの?)「前の時もあの時怪我をした君を発見したんだけど」(そうなの?)
「その時は君を父さんのいた所に連れていったら親グマに父さんが襲われて大怪我を負ってしまって」(とうちゃんが、レックスのとうちゃんを!?)
「その事が原因で僕は暫く森に入らなくなったんだ」(そうだったんだ)
「その後のオークと遭遇した一件も、あの時前の時には村の人の何人かはオークに殺されてしまったり、レオおじさんを始め多くの人が大怪我を負ってしまったんだ」(そうだったの)
「多分そうした事もあってトロルに皆殺されてしまったと思うんだけど」(けど?)
「今回は君達とも仲良くなったし」(うん)「オークの時も誰も死ななかったどころか怪我もしなかったんだ」(そうなんだ)
「だからトロルとも事前に準備していた事も含めて何とか戦う事が出来たと思うんだ」(そうだね)
「だから本当に良かったって思っているから、そのためにもこんな機会を与えてくれた神様が心配している事を僕で何とか出来るなら何とかしようって決めたんだよ」レックスの決意を改めて聞き、······コク!(うん! そうだね!)とボクも大きく頷いた。
それを見て改めてレックスは「ありがとう、ベアーズ」とボクの頭を撫でてきた(えへへ)。
そうしてレックスはムラに帰って行った。それをその場で見送りながら正直寂しい気持ちが込み上がってきたけど、(やっぱり、レックスがよーくかんがえてきめたことだろうから、ボクもうけいれないと)と強く思ったのだった。
その後ボクも住み処に戻り、父ちゃんに今日レックスから教えてもらった事をボクなりにまとめて話した。
それを聞いて父ちゃんも物凄く驚いていた。驚きつつレックスが決意した事をボクが受け入れた事を聞いて「本当に良いのか、それで?」と聞いてきた。
それに対してボクは「うん。レックスとあえなくなってさびしくはなるけど、これがレックスにとって1ばんいいことなら、しかたがないよ」と答えた。
「そうか」と言ってそれ以上は何も言ってこなかったし、ボクも何も言わなかった。そうしてその日は眠る事にした。
数日後、ボクはレックス達のムラを訪れ誰にも見つからないように中に入ったり潜んでムラのヒト達の話を聞いたりした。そして中のヒト達の話を聞いて間違いなくレックスがあの日の次の日にムラを出て行ったのだと確信した。
その後ムラを出て少し離れたところまで来て、たまたま今日も見えているハウルってヒトが住んでいる山のてっぺんの辺りを見上げながら、(がんばってね、レックス!)心の中でレックスを応援したのだった······。