後日談1:帰って来た屋敷で
後日談始めます!
王宮で数日体を休めた後、ノーマたちは馬車で領地へ帰って来た。
本当はネリーにプレゼントされた馬に乗りたかったノーマだったが、怪我はまだ全治とはいかず、しばらく安静にしているように言い付けられたので仕方ない。
しかしガイダー領に戻って来る頃にはきちんと歩けるようになっていたから、馬に乗れるのもそう遠くはないだろうと思う。
だというのに、
「……あの、ハンス様。私はもう一人で歩けるので大丈夫ですよ」
「君に無理させるわけにはいかない。あんなに傷ついたんだからな」
そう言いながらノーマの肩を抱くのはハンスだった。
彼は告白してからというものノーマとの距離を信じられないほど縮め、暇さえあればノーマを構うようになってしまったのである。要らないと言っているのにノーマを離してくれない程度には過保護なのだ。
屋敷までの距離はそこまで遠くないので余裕で歩けるのだが、まるで離れてくれない。
(結婚した当時には考えられませんね……)
そんなノーマの心の声に同調するように、隣を歩くネリーが言う。
「まさかお兄ちゃんがあたしの前で奥さんとベタベタするようになるとはねぇ。妹として感慨深いよ」
「別にベタベタはしていない。ただ、ノーマを支えてやっているだけだ」
「それがベタベタって言うんじゃないの? もしくはイチャイチャとも言うかな」
クスクスと笑うネリーに、ハンスは顔を歪めながらもそれ以上は否定できないようだった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆
ガイダー卿の執務室に赴き、ガイダー夫妻に今まであった色々なことを話すと、「無事でいてくれて本当に良かった!」と安堵の笑みを見せられた。
それだけではなく、王族から慰謝料をがっぽりもらって来たことにも感謝されたのは、さすが貴族と言うべきか。
確かにメルグリホ王女からもらった慰謝料は莫大で、ガイダー領を潤すには充分過ぎる金額だっただろう。これからの発展に繋げていってほしいものである。
「これで全ては一件落着だな! 一時はどうなることかと思ったが、我が愚息の成長っぷりには驚いたぞ!」
「ハンス様は本当に頑張ってくださいました。本当に感謝の言葉もありません」
ノーマがそう言うと、ハンスはこっそり照れているらしく、ほんのり顔を赤くしているように見えた。
意外と初心な次期辺境伯様である。
その後なんだかんだあって、どうせならと言って結婚式をやり直したりした。
人生二度目の花嫁ドレス。しかし一度目の時とはまるで違う心持ちだった。何せこれは最初のそれとは違い、形式だけではない結婚式なのだから。
愛の誓いに、恥ずかしげにしながらもハンスが頷いて、ここに正式に二人の婚姻は結ばれたのだった。
「おめでとう、ノーマちゃん、お兄ちゃん。これからは二人でしっかり愛を育んで行ってね。あたし、応援してるから」
ネリーやガイダー夫妻から心からの祝福を受け、そこから盛大な祝賀パーティーが開かれることになる。
それは夜が更けるまで続いたのだった――。
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