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43/50

43:その後のこと

「申し訳ございません。侍女として、ノーマ様をお守りするお役目を果たすことができず……!」


「そんな。ヘラが謝ることではありませんよ。私が危険な目に遭うかも知れないと気づいてくれたのはヘラなのですよね? あなたがいなければ私と王女殿下はあのまま抵抗することができずに殺されたか、もっとひどい目に遭っていました。感謝こそすれ、怒っているはずがないでしょう。助けに来ていただいて本当にありがとうございます」


 地面を擦り付けそうな勢いで謝罪して来るヘラをなんとか収め、彼女が部屋から出て行った後、ふぅと息を吐いたノーマはベッドに再び横たわった。

 頭部から足に至るまで全身を執拗に痛めつけられていたノーマは、決して軽傷ではなかった。

 すぐに王宮の医務室に運ばれ、腕のいい医師による治療を受けた。全快とはいかないし丸一日経った今も体がズキズキするが、これでもだいぶんマシになった方だろう。傷跡が残らないのが幸いだった。

 三日ほどすれば馬車に乗ってガイダー領に帰る予定だ。


 ヘラの前にもメルグリホ王女とネリーがお見舞いに来てくれている。

 ネリーからは助けに来た経緯の説明や励ましの言葉を、メルグリホ王女からは謝罪と共にあの後のことを色々と教えてもらった。


 王太子チャームは国王の言っていた通りに廃嫡の上、幽閉されることになった。数ヶ月後にこっそりと毒を盛られる予定らしい。あれほどのことをしていたのだから当然である。

 賄賂を受け取っていた彼の手駒だった騎士たち、愛人関係にある複数の侍女などは鞭打ちの上、国外追放。ギャデッテ第二王女に関しては修道院に放り込まれ、その恋人であったフランツ公爵令息は実は王太子と裏で繋がっていたりガイダー家が仕掛けたと見せかけて暗殺者を自分たちに送り込んだなどたくさんの罪が明らかになった結果公爵家を勘当された。それに全力で抵抗し続けた王妃は、表向きは病気ということにして離宮にて隠居するのだとか。

 国王も責任を取ってもうじき引退することが決まった。


 因果応報。あるべきところに収まった形となったわけだ。

 王位はメルグリホ王女が継承し、王配を迎えて国を盛り立てて行くということで、ノーマは安心した。


「これからはこの国をいいものに変えてみせます。非常に傲慢なことだとは思いますけれど……その一助になってくだされば嬉しいですわ」


 腫れ上がった足を引きずりながら、そう言って微笑むメルグリホ王女を前に、頷かない選択肢はなかった。

 共に牢屋を脱出した仲である。彼女が信頼できる人間であることはわかっていた。


「はい。もちろんです」


 いずれ親友となる二人は、そうして固く握手を交わしたのであった。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 それから数時間後。

 ベッドでうとうとしていると、再びドアをノックする音が響いた。


「俺だ。入っていいか?」


 ぶっきらぼうにそう告げる声はハンスのものだ。

 そういえば、意識を失う前は彼に抱き上げられていたのだったか。それを思い出したノーマは思わず赤面しながらも、どうにか返事をした。


「はい」


 答えを聞くや否や開けられるドア。

 そして現れた彼は、後ろ手に何かを隠し、ソワソワとしていて落ち着かない様子だった。


「どうしたのです、ハンス様? なんだか様子がおかしいようですが」


 思わずそう問いかけたのは仕方ないことだったと思う。

 わかりやすくぎくり、という顔をしたハンスは、しばらく押し黙ってノーマの方をじっと眺めると、言った。


「……わかるか。実は、君に大事な話があってな」


「もしかしてこんな傷だらけになった女とは離縁したいなどということですか……?」


 元々望んでいない妻だ。それが問題ごとを引き起こし、さらには怪我したといえば離縁したくなるものかも知れない。

 それならばこの先、どうすればいいのだろう。


 しかしその心配は杞憂だった。


「違う。その真逆だ」


「真逆……?」


「初夜の宣言を撤回したい。いいか?」



 その言葉にノーマの思考はしばらく停止した。

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