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40/50

40:侍女と義妹の到来

 過度な暴力描写があります。苦手な方はご注意ください。

「あっ、あっ、う、あぁっ! ……あ、あ、あぅ、うぅあぁぁああぁぁああああ!!!」


 足を踏まれ、尻を蹴られ、頬を叩かれ、まるで嵐のような暴力を受けながら絶叫する。

 ノーマはメルグリホ王女に覆いかぶさり、彼女を庇うだけで必死だった。痛みが全身を支配して動けない。もう抵抗する気さえ失いかけていた。


「どうだ、大人しくわたしの玩具になるか?」


 しかしその問いかけには頷かない。

 この痛みから逃げたい。逃げたいが、それだけはダメだとぼんやりした頭で思うから。だからなんとか耐え続けた。


 辺境伯家に嫁いでから、ヘラに毎日綺麗にしてもらった肌が王太子の靴で汚れた。

 せっかくのドレスが破け、血で赤く染まっていく。


(ああ、誰か早く助けに来て)


 何度目になるかわからないそんな願いは、きっと届かないだろう。

 ハンスの顔がふと浮かび、消えた。もう二度と彼に会うこともないのかも知れない。仮初夫婦でもせめてもう少し仲良くしておきたかったなと思う。


「飽きて来たな。とりあえず次の段階に進もうか」


 苦しみはまだ終わらない。

 『次の段階』と聞いて、ノーマはサァーッと血の気が引くのを感じた。


「嫌……」


 弱々しく呟かれた言葉はもちろん聞き入れられず、更なる調教が始まる。

 そうなればもう、ノーマは終わるだろう。彼女の純潔は奪われようとしていた。


 諦めよう。

 これ以上抵抗したって辛いだけだ。痛いだけだ。このままこの男の思い通りになってやった方がいい――。


 そうして何もかもを捨てて楽になってしまおうと思いかけた、その時だった。


「いくら王太子殿下だって言っても、女の子に暴力を振るうのはどうかと思いますけど?」

「ノーマ様に危害を加える方は、たとえどなたであろうと赦しは致しません」


 そんな声がして、ノーマに馬乗りになっていた王太子チャームの体が遠くへ吹っ飛ばされていた。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆



「よくもやってくれたな。お前はガイダー家の令嬢か」


「それはこっちのセリフですけど? あたしの義姉ををさらって痛めつけまくって何をするおつもりで?」


「知れたこと。ハンス・ガイダーには勿体無いからわたしの女にしようと思ったまでだ」


「お兄ちゃんを侮辱するとは度胸ありますね。それはガイダー家への宣戦布告と考えてもいいですか」


「あんな家など一日で潰してくれる。だがその前に、まずはお前を殺して貶めてやるとしようか」


「あんたなんかに負ける気はしないよ。女だからって舐められちゃ困るね!」



 頭にガンガンと響いて来るのは、チャーム王太子とネリーが言い争う声だった。

 (ああ、来てくれたのですね)霞む視界の中で二人の乱闘が始まったのを見ながら、ノーマは思う。届かないと思っていた願いはようやく届いたのだ。


「ノーマ様、ご無事でございますか。遅れてしまい、本当の本当に申し訳ございませんでした。全身のお怪我、今すぐ治癒いたします」


「私、は後でいいです、から……メルグリホ殿下が骨折して……」


「ノーマ様の方が大怪我でございますよ。とにかく、今すぐ外へ」


 上から降って来るヘラの声にどうにか答えたが、それ以上何も言えなかったし聞こえなかった。

 暗転する意識の中、最後に侍女の腕に抱かれたのだけはわかった気がした。

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