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34:お茶会②

「あなたは王族であるギャデッテに屈しない意思の強さを持っておいでですわ。

 いついかなる場合でも正しい意見が言えるのは素晴らしいことです。そんなあなたをわたくしは勝手ながら尊敬させていただきましたの。

 わたくしが今まで目にしてきた、王族とあらば媚びへつらう貴族たちとあなたは違う。わたくし、ギャデッテと違って本当の意味での友人はすごく数が少ないのです。ですからあなたのような方がお友達になってくだされば嬉しいと、勝手ながらそう思っておりますのよ。……もちろんお嫌であれば断ってくださいませね」


 そんな風にこちらをベタ褒めするメルグリホ王女を、ノーマは戸惑いの目で見ることしかできなかった。

 自分が第一王女の友人だなんて、恐れ多いにもほどがある。本来であれば近づくことさえ許されないような身分なのに。

 でも不思議と嫌な気持ちはしなかった。


「私などでよろしいのですか」


「あなただからこそいいのですわ」


 そう言われ、嬉しくなって思わず頷きそうになるノーマ。

 しかし彼女は慌ててその短慮な行動をやめた。


 口では虫の良いことを話しておきながら、メルグリホ王女も自分を騙す気ではないだろうか?

 そもそも彼女はギャデッテ王女の姉なのだ。彼女の協力者でないとどうして言えるだろう。こうしてノーマを油断させて捕らえるつもりかも知れない。

 そんな風に悩んでいたちょうどその時だった。


「ああ、これはこれは可愛いお嬢さんだ。人嫌いな第一王女がお茶会を開くなんて珍しいこともあるもんだと思って来てみたが、まさかこんなお嬢さんがいるとはね。驚きだよ」


 ハンスの言っていた『虫』が突如としてお茶会に割り込んで来たのは――。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 金髪に紺色の瞳の青年であった。

 彼にはどこか見覚えがある。おぼろげな記憶を辿り、答えに行き着いたノーマは思わず「あっ」と声を上げた。


 彼こそがこの国の次代の国王……つまり王太子であるお方、王太子チャームだったのだ。

 メルグリホ王女とギャデッテ王女の兄であり、次代の王となる人だと気づいた瞬間、全身を硬くしたのは当然の反応だっただろう。

 ここは王宮。とはいえ王太子がわざわざお茶会を覗きに来るとは思えない。

 つまりノーマに何かしらの用事があることには間違いなかった。


「お兄様、一体何のご用事ですの? わたくし、今このかたとお茶会の最中なのですけれど」


「わかっているよ。だからこそ声をかけたんじゃないか。馬鹿だな」


 ノーマに向けていたものとは打って変わって氷のように冷たい視線を向けるメルグリホ王女と、王女を鼻で笑う王太子。

 それだけで二人の関係性が決して良いものではないことがわかった。こんなところを余所者に見せつけていいのだろうかと心配になるくらいだ。


「ええと……王国の若き獅子、王太子チャーム殿下にご挨拶申し上げます。ガイダー辺境伯長男ハンス・ガイダーの妻、ノーマ・ガイダーでございます」


「ご丁寧にどうもありがとう。君は美しいね」


「お褒めに預かり光栄でございます」


 慌てて名乗り、頭を垂れながらもノーマは既婚者であることをアピールする。

 なぜなら、王太子の目が異性を見るそれだったから。

 さらには虫除け――ダイヤの指輪もそれとなく見せつけたのだが、効果は思うほどに濃くはなかった。というか、皆無だった。

 直後、チャーム王太子は言い出したのだ。


「そうか。ガイダー家のご夫人なんだね。それは失礼。

 ハンス殿は大変だろう。噂では君は無理矢理夫人にならされたんだって? 可哀想に。

 ねぇ君、メルグリホと仲が良いようだね。僕ともぜひおしゃべりしてほしいな。どうだい、僕の自室まで来てくれないかな?」


 それは背筋が凍りつくような世にも恐ろしいお誘いだった。

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