33:お茶会①
ガイダー辺境伯領で過ごす上で一番面倒なのは、移動だと思う。
王都に行くと往復で半月ほどを使ってしまうので大変だ。今後こうして招待される機会が増えるかも知れないと思うと、少しゲンナリした。
ともかく、またもや七日以上の馬車旅でやって来た王都。
王宮の庭園へ行くと、そこには白い椅子に優雅に腰掛けてこちらを見上げる少女――メルグリホ第一王女が待っていた。
「たいへん遅れてしまい申し訳ございません。お待たせしてしまいましたか?」
「いいえ。そんなことはありませんわ。謝らなければいけないのはこちらですもの。……この度はこのお茶会へ足をお運びいただき誠にありがとうございます。不躾にも突然の招待状を送ってしまってごめんなさい。どうしてもあなたとお茶をご一緒にしたかったんですの」
「あ、ありがとうございます」
「そんなに固まらないでくださいませ。さあ、そちらの席へ」
メルグリホ王女の向かいの席に腰を下ろしたノーマは、なんとか表情は笑みを保っていたものの内心平静ではいられなかった。
第一王女殿下とのお茶会。しかも周りには侍女しかいず、実質二人きりということになる。
ここでヘマをすれば、ただでさえ目をつけられているガイダー家が潰れてしまう。
社交経験が薄い元子爵令嬢にはあまりに重荷な役目だった。
侍女にお茶を運んでもらい、しばらくは表向きは他愛ない会話を続けた。
もちろんノーマはガチガチに固まってしまったし、メルグリホ王女の内心を詮索するので必死だったのだが。
まあ結局何も掴めなかったので結果的にはただの茶飲み話のようなものだ。
ノーマは焦っていた。(一体メルグリホ王女は何のために私を呼んだのでしょう……?)と。
本当なら貴族たるものそんなことを訊くのはご法度である。
しかし相手の目的もわからないのでは話が進まない。彼女は意を決し、ドキドキしながらも口を開いた。
「招待状には私的なご用事で私を呼んでくださったとありましたが、その内容は何なのか、もしよろしければ教えていただけませんか?」
「ああ、それを今から話そうと思っていましたの。実はわたくし、あなたと友人になりたいんですのよ」
そっと耳元で囁くように言われた言葉を理解するのに、おそらく十秒以上はかかったことだろう。
そして理解した後も疑問符が頭の中に次々と浮かぶ。
(誰と誰が? えっ。私と王女殿下が? なぜ? 友人? 私が第一王女殿下の友人? 確かに以前のパーティーの時は素晴らしいとか言っていましたが……まさか本気だったということ?)
まるで次期辺境伯夫人とは思えないほどわかりやすく目を白黒させ、動揺するノーマ。
そんな彼女の姿をメルグリホ王女は微笑ましそうな目で見つめていたのだった。
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