23:婚約祝い、のはずが
「皆の者、ごきげんよう。今日はワタクシのために開かれたこの素晴らしい舞踏会に参加したこと、感謝するわ。さあ、ワタクシの美しき姿に酔いしれなさいっ!」
他の王族が挨拶する前に一番に声を上げたのは、今日の主役である第二王女ギャデッテだった。
ギャデッテ王女は、胸の辺りをパッカリと開いた真紅のドレスを身に纏い、ふんぞり返りながら舞踏会の会場へと現れた。
その隣にはギャデッテ王女の浮気相手だった青年の姿があり、はしたなくも身をべったり引っ付けている。それを見ただけで二人の関係性がうかがえた。
……などと観察していると、ハンスに頭を押さえられ、無理矢理下を向かされた。うっかり頭を下げることを忘れていたノーマはハッとなり、自分の馬鹿さを恥じた。
(こんなのでは愚かな妻と笑われてしまいます。しっかりしなくては)
ノーマがそんな風に考えている間にも状況は動き、続いて国王と王妃の挨拶を始める。
それが済むと、続いては王太子、第一王女がこの舞踏会を招集したにあたっての詳しい経緯などを話す。
そしていよいよ、ギャデッテの横の人物の名前を紹介して舞踏会へ移った。
――なんてわけはなく、そんな都合よく進むはずがなかった。
「ワタクシたちからの重大発表の前に一つ、どうしても言わなければならないことがあるわ」
会場がわずかにざわつく。
頭を下げながらノーマは、なんとか早く終わってくれないものかと思っていたが……。
「ハンス・ガイダー。そしてその横の女、直りなさい」
ギャデッテ王女に直接そう言われて、心臓が跳ねるのを感じた。
(もしかして先ほど頭を下げなかったことのお叱りを受けるんでしょうか?)そう思った瞬間、冷や汗が全身から吹き出した。
「王国の美しき薔薇、ギャデッテ王女殿下にご挨拶申し上げます。ガイダー辺境伯の長男、ハンス・ガイダーでございます」
「妻のノーマ・ガイダーです」
顔を上げると同時に、コツコツとハイヒールを鳴らしギャデッテ王女が浮気男を伴いながらノーマたちの前までやって来た。
きつい香水の香りがツンと鼻をつく。どぎつい口紅で彩られた唇をニィッと吊り上げ、王女は言った。
「ハンス・ガイダー。貴方を今ここで再び断罪するわ!」と。
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