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18:ちょっと変わった子※ネリーside

 楽しそうに花を摘んでいるノーマを見ながら、ネリーは思わず頬を緩ませていた。


 こうして見ると彼女は、村の子供たちと大して変わらない普通の女の子だ。これが自分のお義姉様とはとても思えない。


(……でもまあ、いい子だし友達になれそうだから、あたしは嬉しいんだけどね)


 そんなことを内心で呟きながら、ネリーはふと、ノーマとの出会いを思い返していた。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 実はネリーは、かつてノーマがプレンディス子爵令嬢であった時代に一度だけ話したことがあった。

 今は休暇中だが、一応は貴族令嬢であるネリーも学園に通っている。そこで上級生であるプレンディス子爵令嬢と同じ講義を受けていたのだ。


 毎日一緒にいたものの、ろくに話したこともなかった。だがある日たまたま教科書を忘れてしまったネリーにプレンディス子爵令嬢が教科書を貸してくれたことがあった。


「お困りですか? なら、私のをお使いください」


 そう言って教科書を差し出すノーマは、貴族令嬢とは思えないほど地味な娘だった。

 髪は後で大きくまとめただけ。体型は若干痩せているように見えたし、平民と言われても信じてしまうだろう。


 でもネリーはそんな彼女に嫌悪感を抱いたりすることは決してなかった。むしろ、飾らないところや下級生にも気を遣えるところに好感すら覚えたのである。


(この子、ちょっと変わってるな……。でもいい子っぽい)


 その時ネリーは、少し考えてしまった。

 お兄ちゃん――ハンス・ガイダーの婚約者がこんな子なら良かったのに、と。



 ハンスの婚約者、ギャデッテ王女は派手好きだ。

 ドレスもケバケバしたピンク色のものばかりを選ぶ。金や銀をふんだんにあしらった装いは許せるとしても、その態度がネリーはとても気に入らなかった。


「ワタクシにひれ伏しなさいよ。ワタクシの義妹になるつもりがあるなら、精一杯尽くすことね。認めてやらないこともないかも知れないわ?」


 出会い頭に傲慢にもそう言い放ったのが忘れられない。しかもカーテシーもなしで、腕を組み、仁王立ちになって。

 何様だと思った。元々ネリーはあまり貴族流のガチガチなしきたりが好きではない。それでも貴族子女と付き合うためにマナーは学んでいたが、この王女には頭を下げる気になれなかった。


 その後もずっとギャデッテ第二王女はことあるごとにネリーを脅し、ハンスを困らせてばかり。

 こんな奴の義妹になるくらいなら婚約解消した方がマシ。何度も父に言ったが、さすがに王命の婚約を解消するわけにはいかない。


 そんな風にずっと困っていたものだから、ノーマがハンスの婚約者になればいいのにと馬鹿なことを考えてしまったわけだが、その願いはこうして現実のことになっている。

 ノーマ・プレンディス子爵令嬢がハンスの花嫁になったと彼女自身の口から聞いた時は、飛び上がるほどに嬉しかった。


 だからこそ兄に対して腹を立てているし、可哀想なノーマに同情していたのだけど。


(ノーマちゃんにその気があるなら、お兄ちゃんと仲良くなってほしいよね。お兄ちゃんだって彼女のことをよく知れば、絆されてくれるはずだもん)


 ガイダー領観光の帰り、贈り物をしたいと言い出したノーマの言葉にネリーは少しばかり感動したのだ。

 やはりこの子はいい子なんだ。じゃあ、白い結婚なんてもったいない。ちゃんとハンスと二人で幸せになってもらわなくちゃ――と、そう心に決めた。


「だからノーマちゃん、頑張って。あたし精一杯手伝うから」

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