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第4話:とりあえず現状把握だ。まずは畑を見てみよう

「さてと、まずは領地を見てみないとな。一通り歩いてみるか」

「私もお供いたします、ユチ様」


 瘴気に憑りつかれた領民は、みんな浄化できた。

 だが、いくら領民が元気でも食料を確保しないとまずい。

 デサーレチは辺境にあるから、自給自足が必須だ。


「お待ちくださいませ、生き神様!」


 歩き出したところで、ソロモンさんが走ってきた。

 大賢者なのに走るフォームがとても美しい。

 初対面のヨボヨボ婆さんとはまるで違った。


「ワシが領地を案内させていただきますぞ。せっかく、生き神様に見ていただくわけですからな。これくらいしないと申し訳なくて仕方ないですじゃ」

「あ、ありがとうございます。じゃあお願いできますか。それと、生き神様って言うのを辞めていただきたいのですが……」

「承知しましたですじゃ、生き神様」


 たぶんそうだろうと思っていたが、ソロモンさんは承知してくれなかった。

 呼び名の件はまた今度話し合うか。

 生き神様とか言われると、恥ずかしくて仕方ないのだ。

 ソロモンさんに案内され、領地を歩くこととする。


「村の中もやっぱり荒れ果てていますね。建物も傷んでいるし、地面もひび割れているし……」


 小さな瘴気がチラホラある。

 その周りが特に傷んでいた。

 そのうち、瘴気の出どころも探さねえとな。


「まずは、村の畑にご案内しますじゃ。ワシらの貴重な食料でしてな。生き神様には、ぜひ見ていただきたいのですじゃ」

「はい、お願いします」


 いっそのこと、領地全部を聖域化しちまうか。

 どうせ、ここは俺の領地なんだ。

 それくらい問題ないだろ。

 俺は魔力を込めながら、歩を進める。


「ユチ様、後ろをご覧くださいませ」

「うん? 後ろ?」


 ルージュに言われ、後ろを見る。


「え……なにこれ」


 気が付いたら、俺が歩いたところはめっちゃ緑豊かになっていた。

 フサッフサの草が生えていて、寝転がるとすぐに眠れそうだ。

 黄色や赤色の小さい花まで咲いている。

 キラキラエフェクトまで出ていて、特別感があふれ出ていた。

 そこら辺に生えている花ですら、サンクアリ家で育てている物よりすごそうだ。


「歩くだけで大地が浄化されておる! これぞ生き神様の御業じゃー!」


 ソロモンさんが騒ぎ出して、領民も集まってきた。


「みんな見ろよ! 地面に草が生えているぞ!」

「こんなに緑豊かになったのは初めてじゃないか!?」

「こっちには可愛い花が咲いているわ! これも全部生き神様のおかげね!」


 領民たちはそれはそれはありがたそうに、草や花の匂いを嗅いでいる。


「俺はちょっと魔力を込めただけなのに……」

「ユチ様のスキルは途方もなく強力なのでございます」


 それにしても、俺のスキルはこんなに効果があるのか。

 実家にいたときは、ここまでじゃなかった。

 床が少しキレイになるくらいだった気がする。

 そのうち、広い畑に出てきた。


「あっ、畑だ」

「これもまたクソ畑でございますね」

「ル、ルージュ、そういうことは……」


 目の前の畑は大きいことは大きい。

 だが、ここの土もひび割れていて、作物も申し訳程度にしか生えていなかった。

 一応、色んな種類が植わっているようだ。

 見た感じ、米とか小麦、トマト、レタスなどだ。

 どれもヒョロヒョロでやせ細っている。

 栄養なんてまるで無さそうだ。


「この畑で育つ作物が、ワシらの貴重な食料でございます。ですが、なにぶん育ちが悪く……まともな作物が育たないのですわ。ワシらはもはや諦めて、死の畑デスガーデンと呼んでおります」


 ソロモンさんは、がっかりした感じでうつむく。


「ワシらも必死に水をやったり、肥料をやったりしてはいるんですがの……これが精一杯なんですじゃ。ワシの魔法でさえ瘴気には効果がないのですわ」


 お決まりの瘴気がうじゃうじゃはびこっていた。

 我が物顔で土の上を這いずり回っている。

 作物にもしがみついたりしてやりたい放題だ。

 これじゃ、いくら手間暇かけても育つわけがない。


――まったく、憎たらしい瘴気どもだな。


 ちょうど今は、畑担当の領民もいないみたいだし。

 静かに浄化できそうだな。


「皆さま! ただいまより、ユチ様が畑を浄化してくださいます! ぜひ、その御業をご覧くださいませ!」

「え、いや、ちょっ、ルージュ! やめなさいって!」


 と、思ったら、ルージュが演説し始めた。

 良く通る声を張り上げる。


「おい、みんな! 生き神様が御業を見せてくれるってよ!」

「こうしちゃいられねえ! 急いで畑に行くぞ!」

「生き神様の御業なんて、他のどんな作業より優先しないとな!」


 瞬く間に、領民たちが集合してくる。

 ルージュのせいで、静かに浄化する作戦が台無しになった。

 いつの間にか、ルージュは大きな石の上に立っている。

 どうして、そう都合よく台があるんだ。

 みんな、キラキラした目で俺を見る。

 それはそれは期待のこもった瞳だ。


「じゃ、じゃあ、とりあえず歩いてみますかね」


 俺は魔力を込めながら畑を歩く。

 瘴気どもは慌ててジリジリと逃げる。

 だが、俺が近くに行くと苦しそうに消えていった。

 そして、歩いたところは一瞬で作物が育っていく。

 あんなにしなびていたのに、俺の背丈くらいまでグングン伸びる。

 ソロモンさんを筆頭に、領民たちもめちゃくちゃ驚いていた。


「な、なんということじゃ……ワシがどんな魔法を使っても、不可能だったことが……こんな簡単に……」


 ソロモンさんは、あんぐりと口を開けていた。

 俺はただ歩いているだけなのに、領民たちはうっとり見ている。


「生き神様は歩くお姿も神々しいです。ほら、坊や。あなたもあのような立派な人に育つのよ」

「こんなすごいこと、世界中でも絶対にここでしか見られねえよ」

「俺、感動しちゃったよ……涙が止まらねえや。デサーレチに住んでて本当に良かった……」


 領民の中には泣き出す者までいる。

 その中をただ一人歩く俺。

 それを満足げに眺めているルージュ。

 もはや、何らかのプレイだ。

 おまけに、畑は意外と広いのでなかなか浄化が終わらない。


「ユチ様、お疲れはございませんか!? 何でしたら、私めがマッサージを致します! 特製ミルクオイルをご用意しておりますよ!」

「しなくていいからね!」


 やがて、畑はジャングルみたいに作物で溢れかえった。

 歓喜の声が鳴り響く。


「す、すごい! 今までこんなに作物が育つことなんて無かったのに!」

「どれもこれも、なんて美味しそうなんだ!」

「ゆ、夢じゃねえよな! ……いてっ! 夢じゃない……夢じゃねえよー!」


 さっそく、領民たちは作物の収穫を始めた。


「生っき神っ様のおっかげでっ! ワシらの人っ生っ! あっかるくなーる! わー!」


 ソロモンさんはまた謎の踊りを踊っていた。

 みんな、本当に嬉しいのだろう。

 涙を流しながらの収穫だ。


「畑の作物は後で見せてもらうとするか」

「ユチ様も今日はお疲れでしょう。ゆっくりお休みくださいませ」


 嬉しそうな領民たちを邪魔しちゃ悪い。

 待ちに待った収穫だからな。

 俺たちは静かに畑を後にする。

 とりま、食糧問題はなんとかなりそうだ。

お忙しい中読んでくれて本当にありがとうございます


【読者の皆様へ、青空あかなからのお願いでございます】


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