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第37話:は、破滅だああああ(Side:エラブル⑥)

「ゲッホオオオオオ……ハアハア……」

「ゴホゴホゴホォォォ」


 あれからどんどん体調が悪くなり、ポーションも効かなくなってきた。

 おまけに、諸々のツケはもう限界だった。

 夜逃げしたかったが、そんな元気もない。

 今は、瘴気が広まるからという意味不明な理由で、二人揃って同じ部屋に押し込められている。

 苦しんでいると、ドアの下から一通の手紙が差し込まれた。


「ちゃ、ちゃんと手で渡さんかあああ」


 這うようにして手紙の元へ行く。

 ここ最近は、ある報告を待つだけの人生だった。

 手紙の差出人はエンシェント・ドラゴンのコユチと書いてあった。

 コユチが何を意味するのかわからないが、どうやらあの古龍からの手紙らしい。


「最近のドラゴンは手紙を書くんだなあああ。愉快なこともあるもんだあああ」

「きっと、僕ちゃまの教育の賜物だろうねぇぇぇ」


 私たちはヘラヘラ笑っていたが、内心はとても緊張していた。

 今回ばかりは、さすがにユチを抹殺できたはずだ。

 さ、最後の頼みの綱だぞ。

 ゴミ愚息が殺せれば、この苦しさからも解放される気がした。

 震える手で文書を開ける。


〔悪しき心の持ち主、クッテネルング及びエラブルよ。貴様らが無理やりに結んだ契約はユチ様が解約してくれた。私はユチ様とともにデサーレチで幸せに暮らす。瘴気をまき散らすなど不埒な行いも極まりない。自らの愚行を反省するがいい、デブキノコたちよ〕


「「ふざけるなあああ(ぁぁぁ)」」


 私たちはビリビリに手紙を破る。


「なに、ゴミ愚息の味方になっているのだあああ」

「僕ちゃまを裏切っているんじぇねえよぉぉぉ」

「というか、貴様の<ドラゴンテイマー>が使えないからこうなったのだあああ!」

「うぐっ……や、やめろ、父ちゃまぁぁぁ。父ちゃまこそ、役立たずばっかり雇いやがってぇぇぇ」


 クッテネルングの首を絞め顔を殴り、取っ組み合いの喧嘩をするが、すぐに力尽きた。

 ダ、ダメだ。

 もう怒鳴る気力もない。

 少しベッドで休もう。

 そのときだった。

 ガチャリと扉が開き、使用人たちがぞろぞろ入ってきた。


「なんだあああ、お前たちはあああ。いきなり入ってきてえええ、失礼だと思わな……」

「「エラブル様、給金の支払いはいつになるのですか?」」


 またもや揃って給金の催促をしてきた。

 何度もしつこく言われるので、疲れ果ててしまった。


「だから、そのうち払うと言っているだろおおお。引っ込んでおれえええ」


 やれやれ、使用人にも困ったものだ。

 色々落ち着いたらまとめて解雇するか。

 そう思っていたら、使用人どもはまだ室内にいた。


「さっさと部屋から出て行かんかあああ。貴様らがいたら治る物も治らないだろおおお」

「「黙れ!!」」


 大きな声で怒鳴られた。

 今までにない反応で、途方に暮れる。


「もう許さねえからな! 俺たちはずっと我慢していたんだよ! デブキノコ!」

「ずっと偉そうにあれこれ命令しやがって! 挙句の果てには、給金が払えないだって!? 調子に乗るな、デブキノコ!」

「私たちのことを何だと思っているのですか!? もう許せませんよ! デブキノコ!」


 使用人たちはビクビクした感じが消え、見たこともないくらい怖い顔をしていた。

 あまりの威圧感に怖じ気づくほどだ。

 な、なんだ、いったいどうしたんだ?

 

「「おい、給金の代わりに金目の物をいただくんだ!」」


 使用人たちが屋敷の装飾品を奪い出す。

 壺や絵画、高価な家具を運び出し、絨毯を引き剥がし、天井のシャンデリアまで持っていった。


「お、おいいい、やめろおおおお。泥棒するんじゃないいいい」

「お前らが触っていいようなものじゃないんだぞぉぉぉ」

「「だから、給金の代わりだと言っているだろ! いやだったら、給金を払いやがれ!」」


 根こそぎ持っていかれ、屋敷には何も残らなかった。

 唖然としていると、急に屋敷の周りが慌ただしくなった。

 な、なんだ、どうした!?

 そう思ったのも束の間、ドカドカドカッと鎧を着た騎士たちがなだれ込んでくる。


「こ、今度はなんだあああ!?」

「「我らは王国騎士団だ! エラブル・サンクアリ及びクッテネルング・サンクアリ! 瘴気を繁殖させた罪により、貴様らを逮捕する!」」


 よく見ると、こいつらが着ているのはただの鎧ではなかった。

 対瘴気用にチューンアップされた特製の装備だ。

 魔王軍と戦う時にしか使わないような防具なのに、どうして……。


「「こいつらを捕まえるんだ! 瘴気に気を付けろ!」」

「うわあああ! 何をするううう! 私はサンクアリ伯爵家の当主だぞおおおお」

「僕ちゃまは次期当主なんだぞぉぉぉ。こんなことをして許されると思うのかぁぁぁ」

「「いいから、大人しくしろ!」」


わけもわからず王宮へ連れて行かれると、牢屋にぶち込まれた。


「「おら! 今日からここがお前らの住処だよ!」」

「ぐああああ」

「や、やめろぉぉぉ」


 この監獄には対瘴気用の魔法印が刻まれている。

 こ、ここでも瘴気か、いったい何がどうなっているのだ?

 ポカンとしていると、コツコツと誰かが降りて来る音が聞こえた。

 護衛に囲まれ、王様と王女様が降りてきた。


「オ、オーガスト王ううう、カロライン様ああああ、これはいったいどういうことでしょうかあああ?」

「……貴様らは最後まで何もわからなかったようだな」

「ユチさんはあんなに立派な方ですのに……」


 王様も王女様も呆れたような表情だ。


「で、ですから、説明をおおお……」

「これを着けてみろ。<瘴気可視化グラス>だ」


 王様はポイッとメガネを投げてきた。

 瘴気を見れるようにする道具じゃないか。

 どうしてそんなものを。

 仕方ないのでつけてみる。


「な、なんだあああ、これはあああ!?」


 メガネを着けた瞬間、目の前が瘴気まみれになった。

 私の身体が瘴気でいっぱいだ……いや、クッテネルングの身体もそうだ。


「ユチ殿はこれまでずっと瘴気を浄化してくれていたのだぞ。それを貴様らは不当に追放したというわけだ」

「自分たちを瘴気から守ってくれていた人に辛い仕打ちを与え、辺境に追い出してしまうとは……いつまでもそこで反省していなさい」


 ゴミ愚息が……ユチが言っていたことは全て真実だった。

 あいつは毎日、私たちはおろか屋敷中の瘴気を浄化していたのだ。

 ユチを追放などしなければ、今ごろは……。

 暗い暗い海の底へ沈んでいくように、後悔の渦に飲み込まれる。

 そして、私たちは破滅した。

お忙しい中読んでくれて本当にありがとうございます


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