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第34話:古のドラゴンが攻めてきた

「貴様~いつになったら我と口づけを交わすのだ~」

「い、いや、ほら、そういうことを言うなって……」

「目を離した瞬間にこれでは参ったものです。ユチ様、この者の処遇を決めましょう」


 クデレが一日中まとわりついてくる。

 ルージュもそれを引き剥がすため、常に俺の横にいるような状況だ。

 せめて服を着させてくれないだろうか。

 

『ゴアアアア!!!』

「な、なんだ、どうした!?」

 

 突如、村に咆哮が轟いた。

 いや、村ではなくデサーレチ全体だ。

 明らかに今までのモンスターとは違った。

 おまけに、ドンドンドン! という地響きまで伝わってきた。


「行ってみましょう、ユチ様!」

「ああ、そうだな! なんだか知らないがヤバそうだぞ!」


 今回ばかりは俺も服を着ずに急いだ。

 村の入り口まで行くと、一匹の巨大なドラゴンが暴れまくっていた。

 くすんだ緑色の鱗に覆われ、口からブルーグリーンの火球を吐いて荒れ地を攻撃しまくっている。

 火球の威力は物凄く、地面に大きな穴ぼこができるほどだった。

 すでにソロモンさんや領民たちも集まっていた。

 

「い、生き神様! あれは古のドラゴン、エンシェント・ドラゴンですじゃ! こいつは驚きましたじゃ……!」

「え! あれがエンシェント・ドラゴン……」


 古代世紀にいたという、伝説のドラゴンじゃねえか。

 そういえば、屋敷にあった本でチラッと見たことがあるが、同じような姿形だった。

 どうして、デサーレチに。


「ですが、様子がおかしいですじゃ。本来なら体の鱗はもっと透き通っているはずなのですが……」


 エンシェント・ドラゴンの体はくすんで汚い。

 その目はバリバリに血走っていて、めちゃくちゃ凶暴そうだ。

 そして、胸のあたりにはひょこっと黒いもやがあった。


――もしかして、あれは……。


 そう、瘴気だ。

 エンシェント・ドラゴンもまた、瘴気に汚染されていた。

 瘴気のせいで凶暴になっている可能性がありそうだ。

 

「古の超魔法<エンシェント・サンダーショット>!」


 ソロモンさんの杖から、雷の弾がいくつも放たれた。

 バチバチと青白い電撃が迸っている。

 だが、エンシェント・ドラゴンはひょいひょいと躱す。


「お前ら! 一斉射撃だ!」

「「了解!」」


 アタマリと部下たちが、<ポータブル式バリスタ・試作タイプ>を放つ。

 鋭い矢が雨のように降り注ぐが、エンシェント・ドラゴンはひらりと避けた。

 さすがは伝説の古龍だな。

 一筋縄ではいかないようだ。


「俺のスキルなら瘴気を浄化できそうだが……どうしたもんかな」


 ドラゴンは警戒しているのか、なかなか村の中に入ろうとしない。

 俺のスキルは領域内にしか効果がないからな。

 このままではエンシェントドラゴンを浄化できないぞ。


――う~ん、俺のスキルが遠隔操作できたらいいんだけど。


 そう思ったとき、何かが引っかかった。

 あれ? 遠隔操作?

 よし、これなら何とかなりそうだ。

 ドラゴンの方に歩いていく。

 

「ユチ様は村の奥の方に避難くださいませ! ここは私めが!」

「そうだぞ! 貴様は引っ込んでいろ! 貴様に何かあったらどうするんだ!」

「いや、ちょっと試したいことがあるんだ」


 ルージュたちが止めるのも構わず、俺は村の入り口まで行く。


「<全自動サンクチュアリ>発動!」


 ヴヴン! っと久しぶりの音が響く。

 俺の周りがさらに一段とキレイになる。


――俺の周りの聖域をあっちの方に飛ばせないかな。


 指を荒れ地の方に向けると、ズズズっと俺の周りの聖域が動いていく。

 荒れ地の地面も一緒に浄化されていくから、動いているのがわかったのだ。


「「おおっ! 生き神様の聖域が移動しているぞ!」」

「なんと! ユチ様のスキルは進化していらしたのですね!」


 やがて、聖域はすぐにエンシェント・ドラゴンの下まで移動した。

 俺のスキルは上空まで効果があるから、空にいる竜にも効くはずだ。


『グギイイイイ!!!』


 その直後、エンシェント・ドラゴンが苦しみだした。

 空中でもがいている。


「おお! 生き神様のスキルが効いているのですじゃよ!」

「ユチ様のお力は古の龍にさえ効果があるのですね!」

「貴様~、やるではないか~」


 さあ、もう少しだ。

 俺はさらに魔力を込める。


『ギギギギギ……キャアアアアアア』


 エンシェント・ドラゴンにくっついていた瘴気が消え去った。


『ガアアアアア……ア』


 どさりとエンシェント・ドラゴンが地面に落ちた。


「「おい、落ちたぞ! 行ってみよう!」」


 みんなでドラゴンのところに行く。

 装備を構え、警戒しながら近寄る。


「あ、あれ……これって?」


 エンシェント・ドラゴンは赤ちゃんのように小さくなっていた。

 つぶらな瞳にキレイなグリーンの体。

 両手で持てそうなくらい小さい。

 気を失っているのか、ぐぐぐ……とうずくまっている。

 

「お、おい、大丈夫か?」

「ユチ様! 危険です!」

「いや、大丈夫だよ。もう瘴気は消えてるし」


 拾い上げると、エンシェント・ドラゴンは目を開けた。


『うっ……ぐっ……』

「おい、大丈夫かよ。しっかりしろ」


 声をかけていると、エンシェント・ドラゴンはペコリとお辞儀した。


『……この度は本当に失礼いたしました。あなた様のおかげで、無理矢理な契約から解放されました。いくら感謝してもしきれません』

「うわっ、喋った!」

『私たちエンシェント・ドラゴンは、人間の言葉を理解できるのです』

「へ、へぇ~」


 さっきまでの凶暴な感じは消え去り、とても礼儀正しくなっている。


『クッテネルングという男に無理矢理な契約を結ばされてしまったのです。クッテネルング及びその父親と名乗るエラブルという男に、あなた様……ユチ・サンクアリ様の殺害を命じられました。それで、この地まで飛んできたのです』

「え……また父親と義弟が俺の殺害を……」


 彼らはいったい何がしたいのだ。

 ああ、そうか、俺の殺しか。

 どこまで執着してるんだ……。

 たぶん、さっきの瘴気はあの二人由来だな。

 父親と義弟が俺の殺害を命じたと聞いて、領民たちも怒りだした。


「生き神様を殺そうだって!? ふざけんな!」

「生き神様のおかげで、俺たちは暮らせているんだぞ!」

「まったく、あの人たちは何も進歩していないようですね」


 ルージュはもはや呆れ果てていた。


『そこで、ユチ様にお願いがあります。大暴れした後で厚かましいですが、私をこの地に置かせていただけないでしょうか。荒れ地の方も頑張って元に戻します。どうしても、あの者たちのところには戻りたくないのです』

「ああ、それは別に構わないが」


 構わないと言うと、エンシェント・ドラゴンは満面の笑顔になった。


『ありがとうございます! お願いついでに……私に名前をつけていただけませんか?』

「う~ん、名前ねぇ」


 俺にネーミングセンスは無いからなぁ、どうしよう。


「私めに良い案がございます。コユチとはどうでしょうか」


 ルージュが言うと、領民たちも賛同し出した。

 

「「ユチ様の名前の一部だ!」」


 わああ! と盛り上がる。


「あ、いや、俺の名前なんてそんな大層なもんじゃないから……」

『ユチ様のお名前を頂けるなんて、これ以上ない光栄でございます!』


 エンシェント・ドラゴンはぱああっ! と明るい表情になった。

 もう撤回はできなくなってしまった。

 ということで、エンシェント・ドラゴンのコユチも俺たちの仲間に加わった。



――――――――――――――――

【生き神様の領地のまとめ】

◆古のドラゴン“エンシェント・ドラゴン”

 古の儀式により復活した古龍。

 本来なら鮮やかな緑色の鱗を持っている。

 瘴気により汚染され性格も凶暴になっていたが、従来は温和な気質。

 特殊な魔力のブレスは、あらゆる装備を貫通する。

 コユチと名付けられた。

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