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第31話:暗殺者から任務完了の手紙が届いたぞおおおおお(Side:エラブル⑤)

「これからどうすればいいのだああああ」


 私は自室に閉じこもる日々を送っていた。

 王様に領地を没収され、サンクアリ伯爵家の収入は激減した。

 というか、もはや収入はなかった。

 高いポーション代や、クッテネルングの素材代、使用人の給金など……未払いの嵐だ。

 あれこれ言い訳をして誤魔化しているが、もう限界かもしれない。

 体調不良も相変わらずなので、最悪の日々だった。


「エラブル様! 給金の支払いはどうなっているのですか!」

「さすがにもう待てませんよ! 少しでも良いので払ってください! ちゃんと払ってくれるんですよね!?」

「待てば払って頂けるのではなかったのですか! このデブキノコ……エラブル様!」


 ドンドンドン! と扉が激しく叩かれる。 


「黙れえええ! だから、もう少しで払うと言っているではないかあああ!」


 しばらく怒鳴りつけていると、やがて何も音がしなくなった。

 そーっと扉を開けてみる。

 使用人どもはいなくなっていた。

 

――やれやれ、使用人の方は怒鳴っていれば何とかなりそうだな。


 ホッとしていると、ヤツらの話し声が聞こえてきた。


「おい、こうなったら反乱を起こすしかないな」

「ええ、もう我慢できませんわ」

「あの偉そうな無能親子に思い知らせるんだよ」


 コソコソ話しているので、よく聞こえなかった。

 きっと、私がどれほど素晴らしい人物か話し合っているのだろうな。

 足元を見ると、手紙が落ちていた。

 最近は、手紙もろくに運ばれなくなってきた。

 説教してやりたいが、体調が悪くてそれどころじゃない。

 確認して見ると、〔ジェットブラック〕からの報告書だった。

 

―― よ、よし、今度こそは大丈夫だ。

 

 何と言っても、漆黒の暗殺者〔ジェットブラック〕だ。

 依頼達成率100%だからな。

 確実にクソユチを殺しているだろう。


「父ちゃまぁぁぁ、ちょっと来てよぉぉぉ」


 開けようとしたら、クッテネルングがやってきた。


「なんだあああ、〔ジェットブラック〕から依頼完了の手紙が届いたぞおおお」

「なんだってぇぇぇ、早く確認しようぜぇぇぇ」


 私たちは安心して手紙を読み始める。

 やたらくるくるした字で絶妙に読みにくい。

 だが、徐々に怒りで手が震えてきた。


〔依頼は中止だ~殺せと言われたユチに会ったんだがな~。一目見た瞬間、殺す気などなくなってしまったわ~。まるで心が浄化されたように美しくなったんだ~。我はユチと一緒に暮らすことにしたから、そういうことでよろしく。さようなら、デブキノコ〕


「「ふざけるなああああ(ぁぁぁ)!」」


 ビリビリに手紙を破りまくる。

 物凄く腹が立って仕方がない。

 

「何が依頼達成率100%だあああ! ウソを吐くんじゃないいいい!」

「全然暗殺者じゃないじゃないかぁぁぁ!」

 

 5000万エーンも払って、何の成果もなかっただと!?

 ふざけるな!

 必死に呼吸を整えるが、イラつきが収まるはずもなかった。


「それはそうとしてぇぇぇ、父ちゃまぁぁぁ、ちょっと来てくれよぉぉぉ」


 いきなり、クッテネルングが嬉しそうな顔になった。

 嬉々として私の腕を引っぱる。

 

「なんだああああ! 私は暇じゃないんだぞおおおお!」

「いいからぁぁぁ、屋敷の前まで来てくれよぉぉぉ」


 やがて、屋敷の外まで来た。

 何やら、クッテネルングはテンションが高い。

 だが、私はイライラしっぱなしだ。


「この私を呼びたてるのだから、大したことじゃなかったら許さんぞおおお……うわあああ!」


 あまりの出来事にビックリして、尻もちをついてしまった。


『グルルルルル……』


 屋敷の前には巨大なドラゴンがいた。

 くすんだエメラルド色の鱗に、どんなに大きな獲物でも丸のみできそうなほど大きい口。

 ドラゴンなのに手足も長い。

 鋭い目は血走っていて、見るからに凶暴そうなモンスターだ。

 私のことを威嚇するように見ている。


「こ、こいつはなんだあああ! 今にも私を食べそうではないかあああ!」


 勇気のある私でも、さすがに怖じ気づく。

 離れるようにジリジリと後ずさる。


「大丈夫だよぉぉぉ、父ちゃまぁぁぁ。こいつは僕が蘇らせた古のドラゴン、エンシェント・ドラゴンさぁぁぁ」

「な……にぃぃぃ……! あの伝説のおおお……!」


 エンシェント・ドラゴンは、あの古代世紀に存在していたと言われる。

 数あるドラゴン族の中でも、最大級に強かったそうだ。


「僕ちゃまの儀式が上手くいって復活したんだよぉぉぉ! ……まぁ、偉い呪術師をたくさん雇ったからなんだけどぉぉぉ」

「なにぃぃぃ! 貴様ぁぁぁ、また大金を払ったのかあああ!」

「い、いや、大したお金じゃないよぉぉぉ……」


 クッテネルングのポケットから小さな紙が見えていた。

 すかさず奪い取る。

 

「……儀式代として2000万エーンだとおおお! この愚か者おおお!」

「いたぁぁぁ! ぶたないでくれよぉぉぉ!」


 ボカりとクッテネルングの頭を殴る。

 こんな大金払えるわけもない。

 ど、どうする!?

 また頭痛の種ができてしまった。

 とは言っても、確かにエンシェント・ドラゴンは復活している。

 クソユチを殺せるのであれば安い物かもしれない。


「ほ、本当に大丈夫なんだろうなああああ! 今にも私たちを襲ってきそうではないかああああ!」

「大丈夫だよぉぉぉ。こいつは僕ちゃまのスキル<ドラゴンテイマー>で、僕ちゃまの手下になっているんだぁぁぁ」


 そうか、クッテネルングのスキルは<ドラゴンテイマー>だ。

 古のドラゴンと言っても、所詮はドラゴン。クッテネルングにテイムされない道理はないのだろう。

 攻められないとわかると、途端に安心してきた。


「なんだあああ! 心配させるのではないぞおおお!」


 私はそーっと手を伸ばして、エンシェント・ドラゴンの額を撫でる。

 さすさすしても、嫌がる様子はない。

 私の神聖な手汗をたっぷりとつけてやった。


「でかしたぞおおお! クッテネルングウウウ! お前こそ次期当主にふさわしいいいい」

「そうだろうぅぅぅ、父ちゃまぁぁぁ! 僕ちゃまも自分はすごい人間だと思っていたけど、その通りだったねぇぇぇ!」


 クッテネルングのは反り返って誇らしげにしている、

 こいつは誰に似たのか、調子に乗りやすいところもある。

 伯爵家の次期当主になるのであれば、もっと落ち着かんか。


「さあぁぁぁ! 僕ちゃまの手下のドラゴンよぉぉぉ! デサーレチに行って、クソ兄者の首を持ってこいぃぃぃ! ついでに村全体を破壊してしまぇぇぇ!」

『ゴアアアア!』


 エンシェント・ドラゴンは大きな翼を羽ばたいた。

 羽を動かしているだけなのに、すごい風圧だ。

 屋敷が壊れそうなほどだった。


「うわあああ! 屋敷が潰れたらどうするんだあああ!」


 舞い上がった風がすごくて吹き飛ばされそうだ。

 そのまま、エンシェント・ドラゴンはデサーレチの方向へ飛んで行ってしまった。


「これでクソ兄者もお終いだぁぁぁ。どんな魔法を使ったかはわからないけど、僕ちゃまのドラゴンに勝てるはずがないんだぁぁぁ」


 クッテネルングの言う通りだ。

 あのゴミユチは運よく〔アウトローの無法者〕や〔ジェットブラック〕を仲間にしたらしい。

 だが、エンシェント・ドラゴンは無理だ。

 きっと、ユチが使う謎の魔法は人間にしか効かないのだ。

 であれば、ドラゴンが相手ならば打つ手は無い。


「ハハハハハアアアア! ゴミ愚息の死体が届くのが楽しみだあああ!」

「皆殺しにしてこいぃぃぃ!」


 これでゴミ愚息の人生もお終いだ。

 クソユチだけではない、ルージュも〔アウトローの無法者〕も〔ジェットブラック〕も、デサーレチにいる人間は全て殺すのだ。

 今さら謝ってももう遅い。

 覚悟しろ!

 ゲッホオオオオ!

お忙しい中読んでくれて本当にありがとうございます


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