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第19話:盗賊団から任務完了の手紙が届いたぞおおおおお(Side:エラブル②)

「さっさと出て行けええええ! この愚か者おおおお! いくらポーションを飲んでも治らんだろうがああああ!」

「お、おやめください! エラブル様! いてっ! 物は投げないでくださいって!」


 医術師へ向かって、灰皿やペーパーナイフやらを投げまくる。

 街で一番有名という話だったが騙されたようだ。

 咳は全く治まらないし、熱だって下がらない。

 目はかすむ、腹は痛い、頭は痛い、胸は痛い……もはや、健康なところを探す方が大変だった。


「貴様にいくら払ったと思っているのだあああ! どうして治せないのだあああ! 貴様は本当に医術師なのかああああ!」

「エ、エラブル様! 私にもどうにもできないほどの病なのでございます! こんなに消えない瘴気は、初めてでございます!」

「黙れえええ、黙れえええ、黙れええええ! 貴様の無能の言い訳をするなあああ! 瘴気など、どこにもないではないかああああ!」


 こいつの調合するポーションはやたらと高く、2週間で2500万エーンも払った。

 いや、クッテネルングの分もあるから、合計5000万エーンだ。

 効果はないどころか、体調はより悪化している。

 ものすごい大損をしてしまった。

 この医術師のせいだ。


「貴様のせいでさらに具合が悪くなったじゃないかああああ! どうしてくれるのだああああ! この詐欺師めええええ!」


 私は医術師の首を締め上げる。

 だが、全然力が入らなかった。

 

「ひいい、命だけはお助けを!」


 医術師は大慌てで走り去る。

 まったく、医術師の風上にも置けないヤツだったな。


「ゲホッ! この街にはろくな医術師がいないのかああああ!? 使用人んんん! 私が呼んだらさっさと来ないかああああ!」

「も、申し訳ございません、エラブル様! この街にさっきの医術師以上の方はいないかと……! てめえがそんなんだから、治るもんも治んねえんだよ。このデブキノコが」

「何か言ったかああああ!?」

「いえ、なんでもございません!」


 おかしい、あれからさらに体の具合が悪くなっている。

 いくら高価なポーションを飲んでも、一向に良くならないのだ。

 いったい、どれだけ質の悪い風邪にかかったというのだ。

 騒いでいるとクッテネルングが来た。

 私以上に体調が悪いようで、死んだゴブリンのような目をしていた。


「ち、父上ぇぇぇ……医術師はぁぁぁ……?」

「あんなヤツ追い返したわあああ!」

「エ、エラブル様、お手紙でございます。例の盗賊団の方たちからです」


 そこで、使用人が手紙を持ってきた。

 少しだけ気持ちが晴れる。

 ユチの殺害が完了したのだ。


「ふんっ、さっさと渡せえええ」


 奪い取るように手紙を受け取る。

 クッテネルングもワクワクした様子だった。


「やれやれ、クソユチが死んだと思うと楽しくなるなあああ」

「クソ兄者の死にざまは、どんな感じかなぁぁぁ?」


 私たちは嬉々として手紙を読んでいく。

 だが、読み進めるにつれ怒りが抑えきれなくなってきた。


「なんだ、この手紙はああああ!」

「どういうことだよぉぉぉ!」


 盗賊団にしてはやけにキレイな字でこう書いてあった。

 なぜか言葉遣いも、初対面の時からは想像もつかないほど美しい。


【依頼は中止いたします。ユチ様にお会いしましたが、大変素晴らしい人物でございました。出会っただけで天命を受けました……この人の元で働けと。私たちの心が美しくなるのを感じました。私はきっと、ユチ様にお会いするために生まれてきたのでしょう。というわけで、私たちはユチ様に人生を捧げます。さようなら、デブキノコ様】


「ふざけるなああああ(ぁぁぁ)!」


 クッテネルングとともに、手紙をめちゃくちゃに破り捨てる。

 はらわたが煮えくり返るほど腹立たしい。

 デブキノコだと! ふざけるな! 私ほど見目麗しい男など、この世に二人といないだろうが!

 私に対する暴言もそうだが、何よりも……。


「ゴミユチの元で働くだとおおおおお!? 人生を捧げるだとおおおおお!? 寝言は寝てから言えええええ……ゲホッ! ゴホッ! ガッハァ!」

「なに、クソ兄者の仲間になってるんだよぉぉぉ! ちゃんと仕事しろぉぉぉ……ガホッ! ゲッヘェ!」

「あいつらに払った1000万エーンが無駄になったではないかああああ!」


 高価なポーション代と合わさると、恐ろしいほどの損失だ。

 おまけに、セリアウス侯爵の代わりになりそうな取引先も決まらない。

 こ、このままではまずいぞ。


「ゲホオオオッ! れ、例のヤツは来ているのかああああああ!?」


 私はいつものように使用人を怒鳴りつける。


「は、はい! いらっしゃっています! もう部屋の前までご案内いたしました……って、あれ? どこに行った?」


 使用人の後ろには誰もいない。

 マヌケな顔でキョロキョロ辺りを見ていた。


「この愚か者おおおお! 誰もいないではないかああああ! 私を舐めているのかあああ! 死刑にするぞおおおお!」

「お、お待ちください、エラブル様! 確かに、さっきまでここに……!」

「貴様が今回の依頼人か」


 気が付いたとき、私の背後にそいつはいた。

 びっくりして心臓が止まりそうになった。

 漆黒の暗殺者〔ジェットブラック〕。

 裏では名の知れたSランクの殺し屋だ。

 その名の通り、漆黒の衣服に身を包んでいる。

 黒すぎて男か女かもわからん。


「お、驚かすなああああ! 部屋に入ったのなら、入ったとそう言えええええ!」

「うるさい。殺人の依頼と聞いているが?」


 ずいぶんと偉そうなヤツだ。

 その不敬な態度をへし折ってやろうとしたが、威圧感がすごくて諦めた。


「こ、この男を殺せええええ!」


 私はユチの似顔絵を机に叩きつける。


「…………フンッ、マヌケそうな顔だな」

「そいつは私の愚息、ユチ・サンクアリだああああ。今はデサーレチで領主をやっておるうううう。そいつの首を持ってこいいいい」

「デサーレチね……ずいぶんと辺鄙なところだ」


 いつの間にか、クッテネルングは姿を消していた。

 あの臆病者が。


「それとAランク盗賊団〔アウトローの無法者〕も、なぜだかユチの仲間になったようだああああ。そいつらも一緒に殺してこいいいい!」

「わかった。お安い御用だ」

「貴様のことを信用していいんだろうなああああ? 決して安い金ではないぞおおおお!」


 こいつに支払ったのは盗賊団どもの時の5倍、5000万エーンだ。

 しかも、全額前払いときた。

 我がサンクアリ家はそこら辺の金持ちとはわけが違うが、さすがに無視できる金額ではない。

 ポーションのこともあって、そろそろ負担がのしかかってきた。


「わかっている、私はプロだ。金さえ払えば、どんな仕事でも確実に達成する。今までの依頼達成率は100%だ」

「よい結果を期待しているぞおおおお」


 その直後、すでに“ジェットブラック”は消えていた。

 気配がないどころか、音すらしなかった。

 さすがは、手練れの暗殺者だ。

 私は安心する。

 これなら、ユチを殺すことは簡単だろう。

 さて、祝いの高い酒を用意しておかんとな。

 クソユチめ、覚悟しろ!

 ゲホオオオオッ! ガッハアアアアア!

お忙しい中読んでくれて本当にありがとうございます!m(__)m


【読者の皆様へ、青空あかなからのお願いでございます】


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