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第18話:偉い学者さんが来た。息抜きで旅しているらしい

「ほおー! これがあのデサーレチですか! 発展したとウワサで聞いていましたが……なんとまぁ、こんな立派になって! ほおー!」


 いつものごとく、半裸マッサージされている時だった。

 村の入り口で誰かが叫んでいる。

 なんか、最近どんどん人がやって来るようになったな。

 いや、ちょっと待て。

 また村を襲う輩じゃねえだろうな。


「普通のお客さんか、招かれざる客かどっちかな」

「ご心配なく、ユチ様。不敬な輩は私が分解いたしますので。さあ、参りましょう」

「だ、だから、服を……!」

 

 入り口まで行くと、白髪の爺さんが村を覗いでいた。

 偉大な魔法使いをイメージさせるくらい顎髭が長い。

 瘴気はくっついていないから、悪いヤツではなさそうだ。

 

「あの、どちら様ですかね? 俺はデサーレチ領主のユチ・サンクアリと言いますが……」

「突然訪れてすみませんの。私はオーガスト王立魔法学院の学長をしております、レジンプトと申します」

「え!? マジですか!? なんでまたそんな偉い人が……」


 オーガスト王立魔法学院と言えば、王国でトップの学院だ。

 一番最初に出来た学校で、その歴史は数千年はあると聞く。

 何人もの有名な魔法使いを輩出している学院だ。


「が、学長でいらっしゃるんですか? どうしてこんなところに……?」

「なに、会議ばかりで疲れましてね。息抜きがてら旅をしてたんですよ。今も会議があるはずなんですが、もうそんなの知らんですわ。ハッハッハッハッハッ」


 レジンプトさんは楽しそうに高笑いしている。

 い、いや、それは大丈夫なのか?


「と、とりあえず、村の中へどうぞ。大したおもてなしもできませんが」

「お入りくださいませ、クソサボり学者様」

「こ、こら、やめなさい!」


 レジンプトさんにも聞こえたはずだが、変わらずニコニコしていた。

 俺はホッとする。

 結構心が広い方なのかもしれない。

 村の中をざっと案内する。

 

「いやぁ、しかし……本当にここがデサーレチとは、にわかには信じられませんなぁ。以前来た時は、見渡す限りのとんでもない荒れ地でしたのに……」


 今やデサーレチはかなり豊かな村となっていた。

 地面には柔らかい草が生い茂り、キラキラと輝いている。

 村を吹き抜ける風でさえ、癒しの効果があるような爽やかさだった。

 領民がきちんと整備してくれているので、道も歩きやすい。

 家だってアタマリたちがせっせと建てているので、王都みたいな雰囲気だ。


「いったい、何があったんですかの?」

「元々ここは瘴気に汚染されまくってたんですが、俺のスキル<全自動サンクチュアリ>で聖域化しまくったんですよ」


 事の経緯を簡単に説明した。

 レジンプトさんは唖然とした様子で聞き入る。


「まさか……あの瘴気をそんな簡単に浄化できるスキルがあるとは……私も初めて聞きましたぞ。オーガスト王立魔法学校にもいないでしょう。あなた様はすごい人物なのですな」

「はぁ、そんなにすごいんですかね」 


 外の事情は良く知らないんだよな。

 ずっと屋敷に閉じ込められていたから。


「せっかくですので、もっと見学させてはいただけませんかな?」

「ええ、どうぞ」


 まず、俺たちは畑に案内した。

 デスガーデンだ。

 相変わらずジャングル畑になっていた。


「ここが村の畑です。デスガーデンって名前なんですが、すごいレア作物が無限に収穫できて……」

「ぬお!?」


 レジンプトさんは目をまん丸にして固まる。

 

「あ、あの~、レジンプトさん?」


 肩をちょんちょんとするが、全く反応がない。


「返事がございませんね。死にましたか?」

「ルージュ!?」

「こ、こんな素晴らしい畑が……この世にあるのですか……」


 レジンプトさんは畑を見たまま、プルプルと震えている。


「あの世にはあるかもしれません。一度逝かれてみてはいかがでしょうか?」

「や、やめなさいよ、ルージュ」

「す、すごすぎる……!」


 そして、興奮冷めやらぬ様子で畑に飛び込んだ。


「これは<フレイムトマト>ではないですか!? あそこに実っているのは<フレッシュブルレタス>!? こっちにあるのは、げ、げ、げ、<原初の古代米>ですよ!? 私も見たのは初めてです……! こ、ここは宝の山だー! ひょえーい!」


 レジンプトさんは畑の中を子どものように走り回る。

 地面に寝転がったり、ツタによじ登ったり、はっちゃけている。

 子どもたちと楽しそうにはしゃぎまわっているので、止めるに止められない。

 

「なんか……色々ストレスが溜まっていたみたいだな」

「しばらくそのままにしておきましょう」


 少しすると、レジンプトさんが帰ってきた。


「さて……お見苦しいところを見せてしまいましたな」


 今度はデスリバーに連れて行く。


「ここが水源の川です。死の川デスリバーなんて呼ばれてますが、それはそれはキレイな川でして……」

「こ、これはまさかの<ライフウォーター>じゃないですか!? しかも、この川全部!? そ、そんなことあるー!?」


 驚きのあまり、レジンプトさんのキャラが崩壊してしまった。


「ま、まぁ、さすがに俺も最初はビックリしましたね。でも、本当だったんですよ」

「死の川ですって!? とんでもない! これは命の川ですよ!」


 レジンプトさんは手で水を掬って、大事そうにすすっている。

 と、思ったら、子どもたちと一緒にバシャバシャ泳ぎ始めた。


「レ、レジンプトさん!?」

「あれでは子どもと大して変わりませんね」

「いや、ほら、疲れているんだろうからさ、そういうことはあまり……」


 しばらく泳ぐと、ご満悦な顔で上がってきた。


「ふうう……楽しかったですぞよ……さて、服を乾燥させますかね。ちょっと失礼、<ワーム・ドライ>!」


 温かい風で服を乾かしている。

 魔法学院の学長だもんな、これくらい楽勝なんだろう。


「他にも色々ありまして、あっちに鉱山があるんですが、行ってみますか?」

「ぜひぜひ! お願いします!」


 ということで、今度はデスマインに連れていく。


「この鉱山からは激レアな鉱石が……」

「ウィ、<ウィザーオール魔石>がこんなにたくさん! こっちには、<ラブラヒールストーン>! <ゴーレムダイヤモンド>まで!?」


 レジンプトさんはしきりに、はぁーっとか、ほぉーっとか驚いていた。


「お土産に少し持って帰ります?」

「……え……いいんですか」

「どうぞどうぞ、いくら採掘しても永遠に出てくるので」


 お土産に色んな宝石やら鉱石をちょっと渡す。

 最後に、デスドラシエルまで連れて来た。


「つい最近浄化できたんですが、死の大樹デスドラシエルと呼ばれていた大きな樹です。この樹が瘴気の巣になっていたんですよ」


 幹が太くて高い樹がズドーンとそびえ立っている。

 これもまた、キラキラ輝いているようで見事な光景だった。


「……ぃえ?」


 レジンプトさんはまた口を開けたまま固まってしまった。


「だ、大丈夫ですか? レジンプトさん?」

「ユチ様。彼は昇天してしまったようですね。度重なる驚きに耐えられなかったのでしょう」

「だから、そういうことを言ったらダメだって……」

「こ、こ、こ、これは、古の世界樹の末裔ですよ! 古代世紀は何千年も前に滅びたはずなのに……ありえない……ぜ、ぜひ、詳しく調べさせていただけませんか……?」

「調査ですか? 別に良いですよ」


 レジンプトさんは、今までで一番驚いている。

 やっぱり、この大樹が最も貴重なようだ。

 そのうちソロモンさんが歩いてきた。


「生き神様~、ここにいらっしゃったんですじゃね。ちょっとこっちに……」

「お、お師匠様!」


 ソロモンさんを見た瞬間、レジンプトさんがすごい勢いで膝まづいた。


「んぬ? お主はレジンプトではないか。いやぁ、久方ぶりじゃの。まさか、デサーレチで会うとはの」

「はっ! 私もお師匠様にまた会えて幸せでございます! 突然姿を消してから数十年。どこを探してもいらっしゃらなかったのに、こんなところにいらっしゃるとは……」

「え? ソロモンさんって、レジンプトさんの師匠だったんですか?」

「ああ、そうじゃよ。どれ、元気にやっておるかの?」


 レジンプトさんは感激したように、ソロモンさんと握手している。

 しばらく、二人は楽しそうに話していた。


「さて、お主を魔法学院まで転送してやろうかの。もちろん、魔法札もあげるじゃよ。お主もこれくらいはさっさとできるようになりなされ」

「送っていただけるのですか……! お土産までいただけるし、なんて素晴らしい土地なんだ……! ユチ殿、本当にありがとうございました!」

「まぁ、またいつでも来てください」

 

 ソロモンさんが転送の準備をする。


「《エンシェント・テレポート》! この者をオーガスト王立魔法学院に転送せよ!」

「お帰りになったらユチ様の素晴らしさをお伝えなさいませ」

「はい、承知しました! それでは、ユチ殿! またお会いしましょう!」


 ということで、レジンプトさんは笑顔で転送されていった。


「さて、弟子との再会を記念して景気づけに超魔法を一発……」

「やらないでくださいね!」



◆◆◆(三人称視点)



 オーガスト王立魔法学院に帰ったレジンプトは、まず色んな人に怒られた。


「学長! 探したんですよ、どこに行かれていたんですか!?」

「突然いなくなるのは止めてくださいって、いつも言ってるじゃありませんか!」

「会議だって書類の確認だって、やることは無限にあるんですよ! そこんとこわかってるんですか!?」


 こっそり自室に帰ったつもりだったが、待ち構えていた部下たちに捕まってしまった。

 部屋の中に勢揃いしていたのだ。

 四方八方からけたたましく怒鳴られまくる。

 

「お、おお……ふ……ちょ、ちょっとした散歩じゃよ」


 上手く誤魔化したつもりだったが、全然ダメだった。


「一週間かかる散歩ってなんですか!? それは散歩とは言いません! 旅行です!」

「ちゃんと仕事してくださいよ! 学長で止まると、ずっと進まないんですから!」

「諸々伸ばすのはもう限界です! さ、会議に行きますよ!」


 ぎゃいぎゃい怒鳴られながら、会議室へ連行される。

 レジンプトはがっかりしながら、ユチたちのことを考えていた。 


――そのうち、またユチ殿のところに行こう。


 デスドラシエルの調査もそうだが、それ以上にレジンプトはユチとデサーレチが気に入っていた。

 学院の特級標本に相当する貴重な素材の数々……あれだけの数と質を見たのは初めてだ。

 それも全て、あの素晴らしいユチ殿のおかげなんだろう。

 何より、あそこに行けば童心に帰れるような気がするのだ。

 ルージュという美人からの罵倒も素晴らしかった。


――仕方がない、面倒な会議に行くか。デサーレチのことを皆に報告せんといかんからな。そういえば、今日は王様と王女様もいらっしゃると聞いていた。ちょうどいいタイミングじゃ。ユチ殿とデサーレチの素晴らしさをお話しよう。


 レジンプトはデサーレチで経験したことを、それはそれは楽しく詳細に国王と王女に話す。

 ユチとデサーレチに対する彼らの興味心は、もはや留まるところを知らない。

 そして、その話はサンクアリ家にも届くのであった。

お忙しい中読んでくれて、そして応援してくれて本当にありがとうございます!


【読者の皆様へ、青空あかなからのお願いでございます】


表紙まで本当に後ちょっとです!

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