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第17話:大樹は古の世界樹だった

「うっ、こりゃまたすげえ瘴気だな」

「とんでもないクソ大樹でございますね」


 大樹の幹は見たこともないくらい太かった。

 大人が10人くらい手を結んでも囲んでも、まだまだ余るくらいだ。

 葉っぱは、そのほとんどが枯れ落ちていてしまっている。

 太い枝も皮が剥がれていて痛々しかった。

 おそらく、というか絶対に瘴気のせいだろうな。


「今にも倒れそうじゃないか。ん? なんか樹が動いているような気がするな」


 俺たちが近くにいくと、大樹がユラユラしたように見えた。

 まるで、何かの合図を送っているような……。


「きっと、ユチ様に浄化されるのを待っていたのでございます」

「ハハハ、そんなまさか、樹に意思があるわけでもあるまいし」


 葉っぱにも幹にも、どす黒い瘴気がまとわりついている。

 樹はボロボロでひび割れているところまである。

 誰がどう見ても、今にも倒れそうな老木といった感じだ。

 要するに、ほとんど枯れかけだった。

 よくもまぁ、腐らずに生えているもんだ。


「この大樹はワシがデサーレチに来たときから、ずっとここに生えておりましたじゃ。どこから来たのか、誰にもわかりませぬ」

「へぇ~、確かに古そうな樹だよなぁ……見るからに樹齢がすごそうですよね」


 大樹からはブシュゥ……ブシュゥ……と瘴気が噴き出している。

 全体が瘴気の巣となってしまっていた。

 近づくのもためらうほどだった。

 デサーレチを覆っていた瘴気は、ここが原因だったんだろう。


「こいつを浄化すれば、もう新しい瘴気はやってこないだろうよ。よし、さっそく……」


 ルージュが演説を始める前に、素早く聖域化させたい。

 最近は、なんかスピードも上がってきたしな。

 上手くいくはずだぞ。

 これ以上晒されるのはやめてほしいところだった。


「皆さま方、お集まりくださいませ! ユチ様の御業のお時間でございますよ! これを見逃すと一生の損でございます!」


 例のごとくルージュが演説してしまったので、領民たちが集まってくる。

 お忍び浄化計画は早々に破綻した。


「生き神様の御業が何度も見られるなんて、至福の瞬間でございます!」

「これを見るために生きているようなもんだ!」

「ほんと、この村で生活していて良かったぜ!」


 領民たちは大盛り上がりだ。 


「おい、お前ら! いったん作業は中断だ! ユチ様のところに行くぞ! 俺たちを改心してくださった御業のお時間だ!」


 アタマリまで部下を引き連れてやってきた。

 領民たちと一緒に、ハイテンションで騒ぎまくる。


「見ているだけで心がキレイになるようだ! 病みつきになるな、これは!」

「ユチ様のお力は他では絶対に見れないぞ!」

「何て素晴らしい光景なんだろう! ここに来れて、俺たちは本当に運がいい!」


 結局、村中の人達が集まってしまうこととなった。

 仕方がない、そうと決まったらさっさとやるか。

 世界樹の根元に行き、魔力を集中する。

 <全自動サンクチュアリ>発動!

 ゆっくり世界樹の周りを歩きだす。

 瘴気が次々と苦しみだした。


『ギギ……ギ』

『ギギギギギ』

『ギッギギッギ』


 幹の根元近くの瘴気はもちろん、葉っぱや枝にくっついているヤツらもブルブルしている。

 俺の<全自動サンクチュアリ>は上空の方にも効果があるんだな。

 地面だけかと思っていたが、そうでもなかったようだ。


『『ギギ……キャアアアアア!』』


 俺のスキルに耐えられず、瘴気は消え去っていく。

 そして、瘴気が消えたところからどんどん変化が現れた。

 葉っぱは明るい緑になり、枝は丈夫そうになり、幹は立派な皮で覆われ始め……樹も生命力を取り戻しているのがわかる。


「あのデスドラシエルが輝きだしたぞ! 生き返っているんだ!」

「生き神様に出来ないことなんて、もはや何もないんじゃないか!?」

「神から与えられし聖なる力だー!」


 領民たちもわあああ! と盛り上がっている。

 ひとしきり歩いていたら瘴気は全部消えちまった。


「ユチ様、デスドラシエルをご覧くださいませ」

「こりゃぁ、さすがのワシもぶったまげたじゃよ!」


 少し下がってデスドラシエルを見上げる。

 大きな樹なので、近くでは全体が良く見えなかったのだ。


「こりゃぁすげ……」


 幹は艶が出るほどの漆黒の皮で包まれ、葉っぱは鮮やかな緑色になっていた。

 その全身はキラキラと輝いてる。

 さっきまでの老木感はどこかに行ってしまったようだ。



<死の大樹デスドラシエル>

レア度:★12

 非常に貴重な古代種の大樹。葉っぱ一枚一枚に不老不死の力が宿っている。何十年かに一度、特別な実をつける。その実からは精霊が生まれると言われている。



「レ・ア・度・12だって!? そんなことあり得るのかよ!?」


 諸々のレア度の最高は10なのが常識だ。

 それを2つも超えるなんて……さすがは古代の樹だ。


「「やったー! バンザーイ! 村の大樹が復活したぞ! これで村も安泰だ!」」


 領民たちのボルテージはマックスだ。

 デスドラシエルの周りで、どんちゃん騒ぎのお祭りが始まる。

 彼らは本当に嬉しそうだ。

 そりゃそうだよな、ずっと瘴気に汚染されていたのだ。

 俺は領主の務めが果たせたようで、少しホッとしていた。


「では、ユチ様もマッサージの方を始めましょう。特製オイルとマットも持って参りましたので、準備万端でございます」

「こ、ここでやるの? せめて、服をだな……」

「ユチ様、こちらにちょうど良い具合に平らなスペースがございます」


 領地が歓喜の渦に包まれていく中、俺はいつまでも服を着れないのであった。

 

――――――――――――――――

【生き神様の領地のまとめ】

◆“キレイな”死の大樹デスドラシエル

 村で一番大きな樹。

 推定樹齢は数千年。

 瘴気に汚染され、瘴気の巣と化していた。

 実態は古の世界樹の流れを引いているとんでもなく貴重な大樹。

 瘴気にやられ死にかけていたところをユチに救われた。

 何が実るかはお楽しみ。

お忙しい中読んでくれて本当にありがとうございます


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