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第15話:盗賊団が攻めてきた

「さてと、だいぶ村は聖域化できてきたな。あのデサーレチがこんなに栄えるとは俺も思わなかったぞ」

「ユチ様の御業のおかげで、目まぐるしく発展しておりますね。では、マッサージを再開いたします」

「い、いや、だから、もう……」


 俺は色々諦めながら領地を見ていた。

 ひび割れていた地面は消え、全て柔らかそうな草地となっている。

 まぁ、畑はジャングルだけど元気が良いってことだよな。

 デスリバーも日の光を受けてキラキラと輝いている。

 デスマインなんて霊山みたいな雰囲気だ。

 心なしか輝いて見えて、なかなかに美しい光景だった。

 ここがあのクソ土地だったなんて、誰も信じられないだろう。


「へえ! ずいぶんと栄えてるじゃねえかよぉ! とんでもないクソ土地ってウワサじゃなかったのか!? ええ!?」


 村を眺めていると、やたらうるさい男の声がした。

 荒れ地の方からだ。

 そういえば、村の中や奥にある畑や川は聖域化したが、荒れ地はまだだった。

 村の入り口を境に、瘴気まみれの土地と聖域が区分けされているって感じだな。


「また来客か? 最近は良く来るな」

「いいえ、ユチ様。あの者どもは客ではないようです」


 ルージュが険しい顔をして、荒れ地の方を睨んでいる。

 村に向かって十数人の男が歩いてきた。

 ずかずかこちらへ向かってくる。

 相手を威嚇するような凶悪な服装なんだが……どうした?

 見るからに商人ではないよな。

 かと言って、冒険者でもなさそうだ。


「頭ぁ! あんなところに村がありますぜ!」

「まるで入ってきてほしいと言ってるみたいじゃないかよ!」

「こりゃあ、お邪魔するしかないですぜ! ちょっくら休ませてもらいましょうや!」


 どいつもこいつも、質の悪そうな瘴気がまとわりついている。

 ほっといたら死んでしまいそうなくらいだった。


「あんなに栄えてりゃ、旅人を丁重にもてなすのは当たり前だよなぁ! 楽しみでしょうがねえや! おい、お前ら、裸のヒョロい男がいるぞ!」

「「ギャハハハハハ! なんだよ、あいつ!」」


 悪い奴アピールがすごいな、こりゃまた。

 先頭にいるヤツなんか、袖のところがビリビリに引き裂かれた服を着ている。

 ズボンに至っては穴だらけだ。

 モンスターに襲われたのだろうか。


「こんなところに何しに来たんだろう? 商売のつもりじゃなさそうだし」

「見たところ、盗賊団の類のようです。きっと村を襲いに来たのでございます」

「ゲッ、マジかよ。盗賊団かぁ」


 騒ぎを聞きつけて、ソロモンさんもやってきた。


「どうしましたかの、生き神様」

「ああ、なんか盗賊っぽい人たちがこっちに来るんですよ」


 盗賊団はみんな、胸の辺りにひょこッと瘴気が見える。

 邪悪な心の持ち主のようだ。

 ソロモンさんは男達を見ると、ニッコリ笑った。


「どれ、ワシが超魔法で八つ裂きにしましょうかの」

「いえ、私めが処理いたします」


 ソロモンさんは超魔法を、ルージュは分解の準備を始める。


「あっ、ちょっ、待っ」


 領民たちもぞろぞろ集まってきた。


「いや、お二人の手を煩わす必要もありません。俺たちが戦います」

「そうですよ。私たちにやらせてください」

「なんか気持ちが高ぶってきたな」


 いつの間にか、みんな筋骨隆々になっていた。

 村で採れる作物やら魚やらを食べているから、自然とパワーアップしたんだろう。

 盗賊団なんか一撃で葬り去りそうだ。


「では、みんなで行きましょう。私めについてきてくださいませ」

「「はーい」」

「ちょーっと待ったあああ!」


 彼らの前に慌てて立ちはだかった。

 裸で死ぬほど恥ずかしいが、そんなこと気にしていられなかった。

 

「生き神様、どうして止めるのじゃ?」

「ユチ様はお休みになられていてよろしいのでございますが」


 ソロモンさんもルージュも、ポカンとしている。

 本当に、どうして止めに入ったかわからないようだ。


「いくら盗賊団でも殺しはダメですよ!」


 ソロモンさんは何らかの覚悟を決めた顔をしている。


「ワシはもう我慢するのやめたですじゃ」

「一番我慢しなきゃいけないとこー!」


 ルージュの手には短剣が握られていた。


「さて……」

「頼むから、短剣はしまってくれー!」


 領民たちに至っては、誰が真っ先に盗賊団をぶちのめすかで相談していた。


「実は私、格闘術を習ったことがありまして。最近、また訓練を始めたんですよ」

「実は俺、剣術にハマっていて。最近、巨大な岩を砕けたんだよ」

「実は僕、ソロモンさんに魔法を教えてもらってまして。最近、<エンシェント・ファイヤーボール>を覚えたんですよ」

「タンマ! タンマ! タンマ! タンマ! 殺しはダメ!」


 必死にみんなを説得するが、全然戦闘態勢をやめない。


「いや、そんなことを言いましても……ワシだってそろそろ超魔法でスッキリしたいのじゃ」

「ユチ様に向かってあのような暴言。万死どころか億死、いや兆死に値します」


 俺の領地で殺人事件など起きてほしくない。

 超魔法なんか使ったら、あいつらが木っ端みじんに吹っ飛ぶ。

 ルージュに至っては、生きたまま例のアレをやりかねない。

 ど、どうすればいい。

 そんなことをしていたら、盗賊団が村の入り口まで来てしまった。


「おい、お前が領主のユチ・サンクアリかよ? ずいぶんと弱そうなヤツだな」


 先頭にいる男は、太陽を想像させるようなツンツンした髪型だ。


「俺たちはAランク盗賊団〔アウトローの無法者〕だ。ボンボンのお坊ちゃまでも名前くらいは聞いたことあんだろ? ええ?」

「〔アウトローの無法者〕……」


 屋敷に閉じ込められていた俺でも、名前くらいは聞いたことがある。

 あらゆる金庫や倉庫を破ってしまう盗賊団だ。


「名前が重複しておりますじゃ」

「クソダサいグループ名でございますね」


 二人の指摘にアタマリたちは額がビキッとしていた。

 言っちゃいけないことだったらしい。


「父親が直接殺しを頼むなんて、よっぽど親子仲が悪いみたいだなぁ! ま、恨むんなら自分のしょぼい人生を恨んでくれや」


 何がそんなにおかしいのか、ギャハハハ! と大笑いしている。

 というか、父親が殺人を依頼したってマジか。

 本当に俺が邪魔のようだ。

 アタマリが余裕の表情で村の敷居を跨ぐ。


「あっ、勝手に入らないでくれよ」

「へっ、俺様に命令すんじゃねえ。今からぶっ殺してやるからな。ビビッてちびるんじゃねえぞ」


 同時に、その身体にくっついている瘴気が苦しみだした。


『ギギギギ……』


 聖域化の効力はまだ存分に残っているらしい。

 自動で浄化されていくようだ。


「こんなクソガキを殺すだけで2000万エーン貰えるなんてな。楽な商売だぜ」

「ユチ様……」

「ああ、瘴気が浄化されているな」


 アタマリは何やら言っていたが、瘴気が気になってそれどころじゃなかった。


『ギギギギギギギ…………キャアアアアア!』


 あっという間に、アタマリの瘴気が消え去った。


「おい、聞いてんのか!? まあいい。一発で楽にしてやるからじっとしてろよ。さあ! さっさと死…………ここで働かせてくださああああああい!!!」


 突然、アタマリが叫び出す。

 さっきまでのヘラヘラした感じはどこかに消え去っていた。

 それどころか、ビシリと直立不動で立っている。


「え? い、いきなりどうした?」

「領主様、いや、ユチ様! どうか私ども〔アウトローの無法者〕をここで働かせてください! 我が命、燃え尽きるまでユチ様のために使います! こんなに美しい気持ちになったのは初めてです!」


 ビシーッという音が聞こえそうな勢いでお辞儀する。

 とてもキレイな直角だった。


「か、頭? どうしました?」

「何を言っているんです?」

「俺たちはこいつを殺しに来たんですよ?」


 盗賊団もポカンとしている。


「うるせえ! お前らも早くユチ様に忠誠を誓うんだよ! ユチ様、申し訳ございません! 私の教育の不届きのせいでございます! どうか、どうか、お見逃しください!」


 必死にペコペコするアタマリを見て盗賊団が殺気立った。


「てめえ! 頭に何しやがった!」

「頭が謝ることなんか、絶対にないんだよ! ズタズタに引き裂いてやる!」

「簡単に死ねると思うな!」


 勢い良く村に入ってくる。

 そして、彼らの瘴気も消えていく。


『ギギギギギ……キャアアアアアア!』

「「この野郎! ぶち殺してや…………俺たちもここで働かせてくださああああい!」」


 いきなり、アタマリと同じく直立不動の直角お辞儀をしてきた。

 あまりの急展開に理解が追いつかない。


「な、なにが、どうしたんだ?」

「おそらく、生き神様の聖域によって改心したんでしょうな」

「瘴気と一緒に彼らの邪悪な心も浄化されたと考えられます」


 そんなことがあるのか?

 でも、確かに瘴気は消え去ってるしな。 


「ほら、もう大丈夫だぞ。辛かったよな」

「生き神様の近くに居ればもう安心だ」

「さあ、俺たちと一緒にここで働こう」


 領民たちが優しく彼らの肩を抱く。


「「はい、よろしくお願いします……うっ……うっ……ユチ様に出会えて本当に良かった……!」」


 (元)盗賊団たちは、泣きながら領民に連れて行かれる。

 何はともあれ、危機は去ったらしい。



――――――――――――――――

【生き神様の領地のまとめ】

◆“キレイな”Aランク盗賊団〔アウトローの無法者〕

 あらゆる倉庫や金庫を破っていた盗賊団。

 アタマリを頭とした十数人のグループ。

 もう少しでSランクになれそうだった。

 ユチの作った聖域により改心し、人生をユチに捧げることを誓う。

 実態は優秀な鍛冶職人の集団。

お忙しい中読んでくれて本当にありがとうございます!m(__)m


【読者の皆様へ、青空あかなからのお願いでございます】


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