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第14話:ドワーフ一行が襲われていたので助けた

「ひいいい! 誰か助けてくんねぇかー!? おで、こんなとこで死にたくねえよー! お頼み申すー!」

「「誰か助けておくんなましー!」」


 すっかり恒例となってしまった、ルージュにマッサージされている時だった。

 荒れ地の方から叫び声が聞こえてくる。


「な、なんだ!? 誰かの悲鳴が聞こえるぞ!」

「行ってみましょう、ユチ様」

「よ、よし……と、その前に服っ!」

「ユチ様! そんな時間はございません!」

「あっ、ちょっ!」


 半裸のまま連れ出される。

 荒れ地の方で、小柄な人たちが大きなモンスターに襲われていた。

 おまけに、敵はゴブリンやスライムなんかのザコではなかった。


「うおっ、Aランクのメガオークじゃねえか! こりゃ大変だ!」


 Bランクモンスターであるオークの上位種だ。

 魔法攻撃はできないが、その代わりに強靭な肉体を持っている。

 こいつも筋肉ムキムキなので、一撃でも殴られたら大怪我をしてしまいそうだ。


「ユチ様、まずはあの者たちをこちらに呼びましょう!」

「よ、よし!」


 俺とルージュは大声を張り上げる。


「おーい! こっちだー! 早くこっちに来ーい!」

「こちらに逃げてくださいませー!」


 俺たちが叫んでいると、彼らも気付いたようだ。

 全速力でこちらに走ってくる。

 意外と足が速くて、メガオークを置き去りにしてきた。


「お、おい、大丈夫か!?」

「ぶひゃー! 助かったー! おではもう死んじまうのかと思ったぞー!」

「「わてらも助けてくれーい!」」


 飛び込んできたのは、ドワーフの一行だった。

 みんな小柄で立派な髭を生やしている。

 先頭にいたドワーフ娘が一番豪華な格好だった。

 もしかしたら、この子がリーダーかもしれん。

 

「怪我はないか!? 大変だったな!」

「ユチ様のお近くにいれば安心でございますよ」


 メガオークは荒れ地の方からジリジリと近づいてくる。

 俺たちを見て慎重になっているようだ。

 だが、引き返す様子はない。

 それどころか、気持ち悪くニタりと笑っていた。


「ひいいい! またあいつが来たー! お助けー!」


 ドワーフ娘は俺の後ろに隠れる。

 メガオークはかなり強力なモンスターだ。

 何と言ってもAランクだからな。

 村の中に入ったら結構な被害が出るかもしれない。


「ルージュ、ここで食い止めるぞ」

「仰せのままに。私めが処理して参ります」


 あっ、そうか。

 ルージュは元Sランク冒険者だった。

 そういえば、彼女のバトルはまだ見たことがない。

 ちょっと楽しみかも。

 ルージュがメガオークに向かおうとしたときだった。


「生き神様! ワシにお任せくださいですじゃ!」


 ソロモンさんがシュババババッ! とやってきた。


「ソ、ソロモンさん、めっちゃ足速いですね。畑の方にいたはずじゃ……?」

「騒ぎを聞きつけて、大急ぎで走ってきましたじゃ! あのモンスターを倒せば良いのですな! 超魔法が使いたく……いや、困っている人の助けを求める声が聞こえたのですじゃ!」


 ソロモンさんはウキウキしている。

 古の超魔法が使えそうだからだ。

 しかし、この距離で使うのはさすがに危ない気がする。


「ユチ様、ここは私めにお任せください」


 超魔法が炸裂する前に、ルージュがスッと出てきた。

 不気味なほど静かな所作でメガオークへ向かう。

 いつの間にか、彼女の両手には短剣が握られていた。

 ど、どこから出したんだ。


『ガアアアア!』


 うおおおお、メガオークの生咆哮だ。

 さすがにAランクモンスターだな、結構迫力があるぞ。

 しかし、ルージュは全く怖気づいていない。

 静々と歩き、メガオークの目の前に着いた。


『ゴアアアア!』


 すかさず、メガオークが殴りかかる。

 ルージュはピクリとも動かない。

 お、おい、危ないぞ!


「ユチ様の領地に無断で入ろうとするのは私めが許しません」


 ルージュが音もなくナイフを振るう。

 俺に見えたのはそれだけだった。

 キラリと日の光を受けて、ナイフの軌跡が見えただけだ。


『グオオオオオ……オ?』


 その直後……メガオークが分解された。

 身体が爆発したとか、切り裂かれたとかではなく、分解されたのだ。

 メガオークの体が目玉や皮、爪、肉などなど、体のパーツに分かれて地面へ落ちる。

 しかも落ちるだけじゃなく、部位ごとに整理整頓されていた。


「「……え?」」


 俺もソロモンさんも領民たちもドワーフ一行も、呆然とするしかなかった。

 あまりにも一瞬の出来事で、何が何だか意味不明だった。

 ルージュはハンカチで短剣を磨きながら歩いてくる。

 ふんわりとしたメイド服にさえ、一滴の血もついていなかった。

 キュッキュッと拭く音がその恐ろしさを増している。


――こ、これがSランク冒険者の実力か……。


 領民たちは疎か、ソロモンさんですらプルプル震えている。


「な、なんという恐ろしい力の持ち主ですじゃ」

「ル、ルージュさんめっちゃ強いな……」

「さ、さすがは生き神様のお付きの方だ」

「エ、Aランクのメガオークがあんなに簡単に倒される……いや、分解されるなんて」


 なんか、ルージュなら一人で魔王軍も倒せそうだな。


「ユチ様」

「は、はい!」


 いきなり、ルージュに話しかけられビクッとした。

 俺も分解されてしまうのだろうか。

 ちょうどいい具合に裸にされてるし。


「素材も売れるので回収しておきましょう。後で私めがまとめておきます」

「う、うん、そうだね」


 ルージュが短剣をしまったのを見て、ようやく安心できた。


「助けてくれてホントにあんがとな! おではドワーフ王国の王女ウェクトルと申すもんだ」

「え? 王女様だったんですか? これはまたお偉い方ですね。俺は一応領主のユチ・サンクアリと申します、どうぞよろしく……いてててて!」


 ウェクトルさんはめちゃくちゃ力が強い。

 握手しただけで手がヒリヒリした。


「まぁ、とりあえず俺の家に案内するのでついてきてください」

「どっひゃー! それにしても、すんげえ領地だなぁ! おでの国より栄えてっなー!」

「「こんりゃあ、えれーことだなー!」」


 ドワーフ一行は案内されながら村を見て、めっちゃ驚いている。

 感情豊かな性格らしい。

 そのうち、俺の家に着いた。


「んで、ユチ殿! ここは何という場所なんかいな?」

「あ、デサーレチです」


 まぁ、わかっていたが、デサーレチと聞いてドワーフ一行は固まった。

 そして、その直後みんなで大騒ぎし始めた。


「ここはデサーレチだったかいな!? この世で最も死に近い土地と言われる、あのデサーレチ!?」

「あらゆる苦痛が存在しているという、あのデサーレチだってーな!?」

「死ぬより辛い苦しみを味わいたかったらそこに行け、と言われるデサーレチ!?」


 ドワーフ一行はどっひゃー! と驚いている。

 なんかまたリアクションの激しい来客だな。

 ルージュがピキピキし始めたので、俺は慌てて本題に移る。


「そ、それにしても、皆さんはどうしてあんなところにいたんですか?」


 道に迷ってしまったのだろうか。


「おでたちは探し物をしてたんよ。<ゴーレムダイヤモンド>って知ってっか? オーガスト王国の王様へ献上品を作ったはいいが、<ゴーレムダイヤモンド>だけ手に入らなくてなぁ。素材集めの旅に出たんよ。そしたら命の危険ばっかりでな! ガハハハッ」


 ウェクトルさんたちはめっちゃ軽いノリで話している。

 いや、そんな笑い話で済ましていいのか。


「<ゴーレムダイヤモンド>ならたくさんありますよ。使えそうなのあります?」


 引き出しから適当にゴソッと出した。

 

「「ヴぇっ!?」」


 ドワーフ一行は目を点のようにして固まる。

 何度か見たような光景だった。

 

「「そ…………そんな簡単に出てくるのー!?」」


 どっひゃー! どっひゃー! と祭りのように騒いでいた。


「他にも、<フローフライト鉄鋼石>とか<永原石>とかあるんですけどいります? というか、鉱山に案内しますよ」

「「!?」」


 そのまま、デスマインに連れて行く。

 彼女らの喜びようは言うまでもなかった。



 ひとしきりお土産を上げて、家に帰ってくる。


「ユ゛チ゛殿! ごんな゛ずばらじい土地は初めでだ!」


 ウェクトルさんたちは、涙と鼻水をダバダバ流して喜んでいた。


「あ、ありがとうございます。帰りはソロモンさんに王都まで転送してもらいますからね」

「「大賢者のソロモンまでいるだ!? 王都に転送!? この土地は天国だったかいな……グジュッ!」」


 床が汚れたのでルージュがピキる。


「ソ、ソロモンさん! 転送お願いします! 超魔法使ってください!」

「ほいきた! 待ってましたですじゃ! さて、お主らには転送用の魔法札もあげますじゃ。ここに来たくなったら破りなされ」

「「そんな待遇まで……グジュグジュグジュッ!!」」

 

 床の盛大な汚れもルージュのピキりも限界だ。

 

「じゃ、じゃあ、また来てくださいね」

「「この御恩は一生忘れませんだ!」」

「《エンシェント・テレポート》! この者たちを王都に転送せよ!」

「次来るときはハンカチを持ってくるようにお願いいたします」


 ということで、無事にウェクトルさんたちも王都に転送された。


「それでは、ワシは荒れ地の方に行ってみますかの。まだメガオークの残りがいるかもしれんですからな」

「いや、絶対にいませんって! ちょっと、ソロモンさん!」


 興奮しているソロモンさんを引き留めるのは、なかなかに大変だった。



◆◆◆(三人称視点)



 ウェクトルたちは興奮冷めやらぬ様子で王宮へ向かっていた。

 

「姫様、これで王様へ無事に献上できまする」

「ユチ殿には感謝してもしきれんだ。ユチ殿は救世主だったんね」


 ドワーフ王国とオーガスト王国は、古くから友好的な関係を結んでいた。

 その印として、互いに献上品を交換するのが習わしだった。

 だが、最近は近くの魔王領が慌ただしくなって、採掘計画が上手くいっていなかったのだ。

 それにしても、とウェクトルはデサーレチのことをずっと思い出していた。


――あんなに貴重な鉱石の山は見たことないだ。いずれ、絶対にまた行くんだかんな。


 ウェクトルたちの献上品を見て、オーガスト王と王女は歴代で最高に喜んだ。

 デサーレチの話を聞いて、さらに驚き興味を抱き、彼らの話は夜まで続く。

 そして、そのウワサはサンクアリ家にまで届くのであった。

お忙しい中読んでくれて本当にありがとうございます


【読者の皆様へ、青空あかなからのお願いでございます】


皆様のおかげで一桁までこれました!!

本当にありがとうございます!m(__)m

まだまだ上を目指していきたいですので、応援よろしくお願いします!


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