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第11話:ムカつく愚息に刺客を送るぞおおおお(Side:エラブル②)

「ゲホオオオッ! ゴホオオオッ! どうして、咳がこんなに止まらんのだああああ! 早く薬を持ってこいいいい!」


 いくら薬を飲んでも、ポーションを飲んでも全く治らない。

 夜も眠れなくなってきたし、頭がガンガンして倒れそうだ。

 

「かしこまりました! 少々お待ちください……クソッ、それくらい自分でやれよな、デブキノコがよ」

「なんだああああ? 何か言ったかあああ?」

「いえ! なんでもございません、エラブル様! すぐに準備いたしますので!」


 とんでもない悪口を言われた気がするが、体調が悪くてそれどころではない。

 使用人が出て行くと、クッテネルングがやってきた。

 目の下がクマになっていて、脂汗も滴り落ちている。


「父ちゃまぁぁぁ、さっさとクソ兄者に仕返ししてよぉぉぉ」


 どうやら、クッテネルングはポリティカ男爵家から婚約破棄されたらしい。

 

「貴様あああ、どうして婚約破棄などされるのだあああ。相手は男爵だぞおおお。この役立たずがあああ」

「だから、クソ兄者のせいだよぉぉぉ。あいつのせいでエフラルちゃんにフラれちゃったんだぁぁぁ」


 伯爵家との婚約を破棄する男爵家など聞いたことがない。

 何かしら嫌がらせをしたいところだ。

 だが、セリアウス侯爵との商談が失敗したせいで、そんな経済的余裕はなかった。


「それにしてもおおおお! やたらとデサーレチのウワサが耳に入ってくるなああああ!」

 

 クソ土地から姿を変え、天国のような素晴らしい領地になっているらしい。


「そんなのデマに決まっているよぉぉぉ。あのクソ土地が栄えるわけがないじゃないかぁぁぁ」


 クッテネルングの言う通りだが、一概にウソだとは言えなかった。

 フォックス・ル・ナール商会の会長やウンディーネの使者など、恐ろしく地位の高い者たちが言っているのだ。


「おのれええええ。ゴミ愚息を思い出したせいで気分が悪くなったああああ」


 私の天才的な領地計画に口出しするヤツを追い出して、最高の日々がやってくると思ったのに。

 

「ガハアアアッ! ゲフウウウッ! だから、早く薬を持ってこいいい!」


 ゴミ愚息を追い出してから、ますます体の具合が悪くなってきた気がする。

 正直言って、歩くだけで倒れそうになる。

 く、苦しい。

 本当に私の身体はどうしたのだ。


「お待たせいたしました! お薬でございます!」

「さっさと、よこせええええ!」

「僕ちゃまの分は砂糖をたっぷり混ぜろぉぉぉ」

「承知いたしました! ……チッ、なんでこんなクソどもの世話なんかしなきゃいけねえんだよ」

「「何か言ったかあああ(ぁぁぁ)?」」

「いえ! なんでもございません!」


 いくら質の悪い風邪だろうが、高価な薬を飲んでいれば治るだろう。

 サンクアリ家は裕福なので、まだまだ大量に手に入る。

 何も心配いらんのだ。


「まぁ、いいいい。ところで、例の者たちは来たのかあああ? ……ゲホオオオッ、ゴホオオオッ!」


 薬を飲んだところで声を張り上げる。

 すぐにむせるのが腹立たしい。


「は、はい……! いらっしゃったのは、いらっしゃったのですが……」


 使用人どもはビクビクしている。

 まったく、もう少しシャキッとせんか。


「オラ、どけよ!」

「きゃあっ!」


 使用人が乱暴に跳ね飛ばされた。

 私の部屋に汚い男たちが遠慮なく入ってくる。

 全員柄が悪く、貴族とはかけ離れた境遇の者どもだ。


「俺はリーダーのアタマリってんだけどよぉ。アンタがエラブル? 太りすぎじゃね?」


 Aランク盗賊団“アウトローの無法者”。

 この辺りでは名の知れた盗賊グループだ。

 その優秀な鍛冶能力であらゆる鍵を造れるらしい。

 古代遺跡を荒らし、貴族の宝物庫を荒らし、貴重な宝を根こそぎ奪っていた。


「にしても良いとこに住んでんなぁ。どうせ、貧乏人から搾り取ってんだろ?」


 本来ならば、屋敷の門をくぐらすことさえ叶わない。

 しかし、今回限りの特別な仕事のため、やむなく屋敷に招き入れた。

 中でも一番大きな男がずかずか出てきた。


「おっ、いいマットがあるな。ちょうど靴に泥がついていたんだ。拭かせてもらうぜ~」 


 不躾な態度と高い絨毯が汚され怒りそうになる。

 だが、懸命に怒りを抑える。

 今から大事な取引をするのだ。

 余計な争いごとは避けたい。


「……貴様の無礼な態度は見逃そうううう。ところで、デサーレチは知っているかああああ?」

「ああ、もちろん知ってるぜ。あのクソ土地だろ? なんだ? お宝でもあんのか? まぁ、俺たちはこの屋敷のお宝でも我慢できるけどよお。 なぁ、お前ら?」


 アタマリが言うと、部下たちもいっせいにゲラゲラ笑い出した。

 一人も上品な人間がいない。


「さすがは、伯爵家だぜ! 高そうなもんがいっぱいだしよ!」

「お土産にいくつかもらっていくか! 売れば結構な金になりそうだ!」

「ちょっとくらい無くなってもわかんねぇんじゃね?」


 アタマリは部下と一緒に、ゲラゲラ笑っている。

 屋敷に似合わぬ、下品な笑い声が響き渡る。

 それどころか、部屋の高価な調度品をベタベタ触りだした。

 これ以上荒らされてはまずい。

 私は慌てて用件を切り出す。


「仕事の依頼とは、これだああああ」


 私は二枚の紙を渡す。

 一枚はデサーレチに追放したゴミ愚息の似顔絵。

 もう一枚は、クソユチにくっついていったルージュの似顔絵だ。


「なんだよ、このクソガキは? っと、こっちの女は、なかなか美人じゃねえか」


 アタマリは似顔絵をまじまじと見ている。


「その男を殺せええええ。女は好きにして構わんんん」


 私は初めから、あのゴミ愚息を殺すつもりだった。

 だが、屋敷内で殺すのはさすがにまずい。

 下手したら失脚もあり得るからな。

 そのため、辺境に追放したのだ。

 運悪く、盗賊団に襲われたとなれば世論も問題あるまい。

 辺境の地で誰にも助けを求められず、たまたまやってきた盗賊団に襲われて死ぬ。

 こんなに不運なことがあるだろうか。


「頭! 俺たちにも女の顔を見せてくださいよ!」

「ほお! 確かに、これは上玉だ!」

「ケケケケ! 楽しみが増えたぜ!」


 盗賊どもは、ルージュの似顔絵に群がっている。

 あの女もまた、私の誘いを断りおった無礼者だ。

 せっかく屋敷に雇ってやったというのに、その恩を忘れおって。

 だから、盗賊どもに似顔絵を見せたのだ。

 今さらどうなろうと、私の知ったことではないわ。


「んで、報酬は?」


 ひとしきり騒いだ後、アタマリは無遠慮に言ってきた。

 こいつら盗賊には品性の欠片もない。

 だが、金で動く分まだ安心できる。


「前払いで500万エーン。その男の首と引き換えに500万エーン払おう」

「全然足りねえな。その倍払えや。金持ちだろうがよ」


 アタマリが言うと、部下たちはまた賛同しだした。


「1000万エーンで人殺しはできんわなぁ」

「おい、オッサン。俺たちのこと見くびってるんじゃねえの?」

「伯爵家ってそんなに貧乏なん?」


 盗賊団は揃ってギャハハハ! と笑っている。

 ゴミ愚息の殺害依頼などで、2000万エーンも払うのは気が引けた。

 しかし、こいつらは盗賊団だ。

 機嫌を損ねると何をしてくるかわからない。

 仕方がない金を払うか。


「……良いだろう。倍額の2000万エーン払おう。これが前払いの1000万エーンだ」


 私は金をアタマリに渡す。

 アタマリは律義に金を数えると、上機嫌で出口へ向かう。

 

「まいどあり~! じゃあな、また頼むぜ~!」

「待てえええ、わかってるだろうなあああ! ちゃんとその男を殺すんだぞおおお! さもなければ、貴様らをおおお……!」

「な~に、心配すんなよ。これでも俺たちはプロさ。さっさとこの男を殺して女と遊んだら、残りの金もいただきに来るぜ。ちゃんと用意しておいてくれよ~」

 

 盗賊団は下品に笑いながら出ていった。


「チイイイイ、余計な出費になったな……ゲホオオオッ、ゴホオオオッ!」


 まずは、この体調不良をなんとかせんとな。

 と、そこで、カーテンの影からクッテネルングが出てきた。

 盗賊団が来るや否や隠れていたのだ。

 こいつは偉そうなくせに臆病だ。

 まったく、誰に似たんだろうな。


「2000万エーンも払ったのぉぉぉ!? 僕ちゃまの新しい馬車を買うんじゃなかったのぉぉぉ!?」

「黙れえええ! それに、払ったのはまだ1000万エーンだあああ!」


 ともあれ、私は愉快だった。

 これでクソユチを世の中から葬れる。

 見ていろ、ゴミ愚息め。

 貴様はもうおしまいだ。

 今さら謝っても許さないからな。

 せいぜい、残り少ない人生を楽しめ。

 ゲホォォォッ、ゴッホォォォ!

お忙しい中読んでくれて本当にありがとうございます


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