表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

川下り

1月14日の川下り

作者: 山本大介

 ついこないだまで・・・状況は変わります。


 夕方四時、私はやるせない気持ちで舟を漕いでいた。

 終点沖端から、会社の乗船場までの船上げ一時間ちょっとかかる仕事だ。


「はぁ」

一つ溜息をついた。


 今日のお客様を乗せた川下りの舟は2隻・・・まぁ、妥当っちゃ妥当、0隻かとも思っていたくらいだから。

 私は久しぶりにお客様を乗せていない。

 天気も良く風も穏やかで温かい気候となり、日中は14℃と3月上旬並みのとても過ごしやすい一日だった。

 こたつ舟が暑いと感じるくらいの春日和、本来なら絶好の川下り。


「おっとっと」


 外堀経由での一隻のみの船上げ。

 竿が岩場に挟まり、舟に急ブレーキがかかる。

 私は竿が折れないように、ゆっくりと舟のスピードを緩め、挟まった竿を抜いた。


「ふう」

 も一つ溜息。


 福岡県にも今日から緊急事態宣言が発令された。

 その初日。

 朝の朝礼で、とりあえず明日からの休業が伝えられた。

 そうかなと思っていたけど、そうだった。

 前回とは違い、ドンといきなり来た感じだった。

 そう、そうなんだよな。


 城東橋が見える。

 私は舟のデッキにしゃがみ、橋の下に潜ると右手で橋下の天井を押し進める。

 民家の裏を舟は進む。

 檀平橋を抜けると、右手に赤レンガの並倉が見える。

 今日はその建物がちょっぴり物悲しそうに見える。


 歯止めが利かなくなりつつあるコロナ感染の増大に医療現場の逼迫。

 悪化する状況。

 観光どころじゃない・・・観光に従事する自分はこんなこと思ってはいけないのだろうが。

 だけど、いろんなことが、ごちゃまぜになる。

 陽はまたのぼる・・・そう信じているけど。


 内堀に入ると、堀の幅が狭くなる。

 民家の数も増えてくる。

 狭くて低い石橋を通る。

 上のロープを引っ張って進む。


 不要不急の外出禁止で、川下りは・・・・・・な。

 今回の宣言では、特に何も川下りし言われてないけど。

 開けてても、閉めてても大変だろうな。

 本当に・・・どうしたもんだろう。

 私は夕空をあおぐ。


 城堀水門をくぐると、二つ川ここまで来ればあと10分ほどで、乗船場にたどり着く。


「はっ」

 私は苦笑いする。

 考えたってしゃーない。

 前を向け。

 楽しもう。

 なんとかなる。


 舟は柳川橋を抜け、乗船場へ。


「また、今度」

 仕事が終わり、同僚と別れる。

また、明日ではなく、今度。


 きっと、きっと夜は明ける。

 きっと、きっと。

 信じよう。

 前を向け。

 また、はじめよう。

 その日にむけて。


 また前を向いて行きましょう。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 作者の気持ちが所々物語にいれこもれたそんな作品に感じました(*^-^*) コロナ早く終息し、みんながもとの生活に少しでも 戻れるように願います(;>_<;)
[良い点] 前を、向いて… ですね…。 柳川に、たくさんの、方々が、戻って来られることを、 一日でも早く、お祈り申し上げます…m(_ _)m 緊急事態宣言…汗 我が県でも、 発令されております…汗m(…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ