羅唐同盟1
最高傑作
-今日も公園で近所の小学生の子供達と遊ぶ
中学生にもなって、友達は居ないのかってなるかもしれないっすけど
同年代の、特定の個人を集団で嫌うことで自らを守るような相手より、純粋に歳上として慕って好きになってくれる小学生の子供達の方が、一緒にいて楽しいんすわ
「シラギ兄ちゃん!ボール木に引っかかっちゃった!」
「はいはい」
いつも通り、木に登って取ろうと木に向かうと横のベンチに見慣れない子が本読んでいたんすね
「ねぇ、君も遊ばないっすか?」
「お兄さん、いい…の?」
内気な子っぽかったっすけど、遊んでみると普通に子供って感じっすね
すぐ打ち解けて楽しそうに遊んでたっす
-日が暮れて、もうみんな帰らなきゃいけない時間になったんでみんな帰したんすけど
例の子だけ帰らないんで理由聞いてみたら、どうやら親がいない子らしいんすね
施設に帰りたくないらしいんで、俺も親居なくて一人で暮らしてるしうちに連れて帰ったんす
「私…カラ」
そっからは、俺が学校行ってる時以外は遊んでる時も家に居る時も一緒で、もう家族みたいなもんだったんす
大人しいけど怒る時は怒るので沢山喧嘩したり、カラが料理に失敗しちゃって2人で不味いねって笑いあったり、お風呂に入れて体洗ってあげてお返しに体洗ってもらったり、楽しくて楽しくて仕方なくて、他の子以上に愛情湧いてたっすね
どうやら、学校は行ってなかったみたいすけどまぁ施設から学校に行方とか聞かれてるでしょうし当然なんすけど、捜索願いとかも出されてないみたいなんでちょっと不思議には思ってたっすね
-そんな生活が2年ぐらい続いた中三のある日、突然切り出されたんす
「私、やっぱり施設に戻らなきゃ…
シラギさんに迷惑はかけられない…」
「…戻りたくないって事は、何か理由があったんじゃないんすか?」
少し黙って悩んでたっすけど、改まって言ってくれたっすね
「私、実は人工的に作られたホムンクルスってやつなんです…
成長はするものの、寿命が短くて今で9年だから後11年くらいしか生きられない…
それに加えて、施設の実態は失敗したホムンクルスの処分場
9歳になったら、製造費の元を取るための臓器売買のために殺される
私も戦闘に関する性能が悪くて失敗作扱いに
そろそろ施設職員に扮した、戦闘に特化したホムンクルスが連れ戻しに来る」
俺はもう、守らなきゃいけないという使命と、前以上に愛おしくなってしまって抱き寄せて暫くそのままで居たけれどつい泣いてしまったっすね
こんな小さくて罪もないのに人間の都合で処分されるのは可哀想っす、そもそもホムンクルスだろうが人間と何も変わりなくカラにだって感情も好きな物も苦手な物もいっぱいあるんすよ
強者の都合で被害を被るのはいつだって弱者っすからね
『お前が居るせいで働きにもいけないし、迷惑なんだよ
敬語使って謙虚にでもなったつもりか?
金使うだけ使って首吊った父親もクズ野郎だったけど、お前は足でまといでもっとクズだ
見習って首吊れよ、早く』
『火事!?シラギ!どこにいるんだ、あの野郎!
玄関も燃えてる!早く消防車!』
『昨夜、アパートの一室で火事がありました
母親と息子の2人が住んでいたと見られ、母親が遺体で見つかりましたが息子は外にいて無事でした』
みんな、産まれたくて産まれたわけじゃないんす
でも、産まれたからには幸せになれないとそんなの何も報われないじゃないすか
例え、どんな手段や過程があろうとな
そんな事をずっと考えていたら、またカラが話し始めていて
気持ちを少し落ち着けてまた話を聞き始めたっす
「あのね、最後にシラギさんに3つだけお願いがあるんです」
「なんすか?というか、最後じゃないっすよ
そんなヤツら俺が倒して、お願いなんて何個でも聞いてあげるし好きな場所に好きなだけ連れて行ってあげるっすよ」
カラは少し黙って真剣な顔をした後、また話し始めたっす
「そうしたいのは山々だけど、欲張りすぎちゃダメだと思って
ほら、死亡フラグ…?ってやつです、一緒にアニメ見た時に教えてくれた!
今はとりあえず、少し欲張って3つでお願いします!」
俺はそれでも納得できないっすけど、納得して願いを聞くことにしたっす
「まず1つ目!いつもより沢山一緒に遊ぶこと!
いつ連れ戻しに来るか、分からないからとりあえず5時間!」
俺は、もう必死になって一緒に居られる時間を噛み締めて遊んだっすね
最後にさせるなん気は毛頭なかったっすけど、やっぱり可能性がある以上怖くなったのは事実っす
そして、闇夜の公園に行ってキャッチボールしたりサッカーしてドリブルで抜かれまくったり、家に帰ってゲームしてすごく強くなったゲームでぼろ負けしたり本当にいつもとやってる事は変わらないし、時間が多い分お腹いっぱいになりそうなもんすけど1秒1秒がそんな事ないくらいとても楽しかったっす
汗だくになって、ベッドに2人で倒れ込んで息を荒らげた状態でカラが次のお願いを言い始めたんす
「私大人になるのが夢なんだ
でも、20歳で死んじゃうから大人なのは一瞬…
法律上はね?
でも、それじゃ意味無いんだ
それとね、赤ちゃんを持つのも夢だったんだ
コウノトリが運んでくるなんてすごい嘘だよね、それならホムンクルスで生殖能力の無い私でも赤ちゃんが出来たのに
2つ目は無理だとしても、1つ目は叶うし2つ目も気分だけは味わえるから
…ねぇ、お願い
私を大人にしてくれない?」
少し震えて、怖いようだったけれどそこには汚い欲望や恥ずかしさなんてない
真剣で純粋な憧れの気持ちがあった
そして、何より俺への信頼
そういう対象として見れるかは不安だったけれど、2人で最高の状態にしようって初めて1人ずつお風呂に入って
さっきのベットに戻って来た
俺も初めてだったんで、やり方よく分からなかったけれど精一杯頑張って、それに応えるようにカラも頑張ってるのが伝わってきて今までの愛情が別の愛情へと変わる感じがして、気持ちには答えられたんだけどとても罪悪感も感じていた
今まで見た事ないような艶めかしさで、とてもその年齢を感じさせなかった
身のこなし軽やかだけど力強く優しくて、妹のような存在だったはずが母親には無かった母性を感じてしまった
この短時間で、カラは間違いなく大人になっていた
-終わってしまえばあっという間で、2人で始める前と同じように息荒らくしてベッドに倒れ込む
赤いシミ出来ちゃったし、シーツは捨ててしまおう
遺品になるなんて縁起でもない
そして、とうとう最後のお願いが来てしまった
「じゃあ、最後に…」
唾を飲んで最後の言葉を聞く
しっかりと聞く準備をする
「3つ目の願いにして3つ目の夢!それは
…順序逆になったけど、夫婦になること!
ウエディングドレスは今は着れないのが残念だけど…
つい、気持ちが先走って逆になってしまった…
では、改めて…
私の夫になってください」
「ふふっ、そんなん喜んでなるに決まってるじゃん
一生でこれから妻はカラ1人だよ、何があっても
それに、必ず20歳になるまでに俺が寿命を伸ばす方法を見つける
ずっと一緒だよ、俺より先に死んだらダメだぞ」
カラはさっきまでの大人びた感じとは逆にまた子供らしく飛び跳ねてツインテールを揺らしながら、嬉しそうににっこり笑う
「口調取れてる!
そんなの私より先に死ぬほうがダメ!」
笑った時の上目遣いと、その時に見せた歯に完全にもう心を奪われた
さっきまで妹だったのに今や完全に、小さくて可愛いけど大人の最愛で世界で1番愛する妻だ
出会った日がつい昨日のように思い出される、でもこれから先共に更に長い時間を重ねるんだ
そして、仕事から帰ってきた時扉を開けたら笑って、エプロンつけたカラが出迎えてくれるそんな日を夢みる
幸せに満たされて、やはり楽しくて楽しくて仕方ない前よりももっと!
-そんな時だった、ドアが急に開く
仮面をつけたメイド服の2人組がナイフを持って乗り込んでくる
「これが戦闘に特化したホムンクルスっすか!
今なら負ける気しないっすよ、さっさと片付けて幸せな日々を続けるんす!
あいにく人殺しは初めてじゃない
カラ、隠れてろ!」
カラをクローゼットに隠れさせて、バットを持って立ち向かう
そして、仕込んでおいたアレを使う
「トラップっすよ、そんな真っ向勝負だけの不確実なやり方はしないっす!」
廊下の横側にあるドアを開けた瞬間に仕込んでおいたボウガンが放たれる
一体の頭に見事命中して、一体はその場に倒れ込む
そして、扉を避けて奥のリビングへと向かってきたもう一体をバットでぶん殴る
しかし、流石に頭から出血はしているものの倒れはしない
そして、その場でしゃがむ
「カラ!」
「いえっさー!」
クローゼットから、飛び出したカラが改造して威力を上げたネイルガンを乱射
顔や上半身にもろにくらって怯んだすきに、足元を包丁で切り付ける
足を庇って前のめりになった瞬間に、心臓の当たりを何度も突き刺す
ついに動かなくなった
俺たちは一先ず勝った
喜びを噛み締めたいが、逃げないと追っ手が来そうなのでカラを連れて逃げようとしたその時だった
ブチッ
リビングの窓を割り、もう1人が入ってくる
そして、カラの頭を床に打ち付けて気絶させて連れ去った
「カラ!!…ぐっ!?」
ボウガンが刺さった倒したはずのひとりが後ろから何度も突き刺してきていた
しかも、こういう時に限って体が重たくて動かない
「く…そ…」
意思が無くなりかけてきて意識が無くなる瞬間まで刺し続けられていた…
-気がつくと1面全て白い世界に居た
ここで止まっていられないと暫く走っているが、何も無い場所が続くだけ
…そうか、もう死んでしまったからどうしようも出来ないのか
ここでカラを待つことしか
…いや、ダメだ!カラだって1人で逃げられているかもしれない、確実なのは生き返って助けに行くこと!
そんな時、目の前にいつの間にか複数扉が現れていた
その中でも何故か、一番惹かれた緑色の雑草の生えた扉を選び急いで開けた
中には、楽しそうに料理をする足枷で天井と繋がれたエプロンを付けた半袖のカッターシャツに緑色の星模様の着いたサスペンダー付きのスカートを履いた緑色のツインテールをした少女が居た
両足が黒ヤギのようだった
「お前…カラなのか?」
少女は上機嫌なまま振り向く
黒い仮面をつけており、両端にヤギのような角が着いていた
仮面の目の部分から緑色の目が覗く
背中から新たに黒い触手を数本出して漂わせる
「違うみたいっすね、でもお前なら頼りになりそうっすね」
化け物は、親指を立ててサムズアップしてから指でスッとなぞるだけで足枷を外して寄ってくる
「私を選んでくれてありがとう!
私ね、多分君の願い叶えられるよ!
母神の姿をしたものだから、なんなら全部終わったらあの子も赤ちゃん産めるようにしてあげる
時間ないんでしょ、さぁ!」
「助けて欲しいっす、この際お前が偽物でも構わないっす
… イア!シュブ=ニグラス」
恐らく、元ネタかそのものであると思ったので唱える
「あいあいさー!」
再びサムズアップしてから、仮面を付けられる
あぁ、今度こそ勝てるぞ
-気づくと、家に戻っていた
私は直ぐに、前に教えられた施設の場所へと向かう
飛ぶように移動できる、恐らくさっき見たままの姿に変身しているとかだろうが最早確かめている時間は無い
そして、到着
古びた教会だった
直ぐに礼拝堂のドアを蹴破り、駆け込んでいくと
横長の椅子の位置が1個ずらされて地下への通路が出来ていた
「今行くぞ!」
そして地下に着き、またドアを蹴破って飛び込んでいく
-そして目を疑った
そこには血液をほとんど抜かれたであろうカラと、さっきのホムンクルスに加えて5体くらいが居た
「う、嘘だ!まだ大丈夫だ!」
カラは何も喋らないし動きもしない
もう、瞳孔が開いていた
「おい、カミサマ!助けてくれるんじゃなかったのかよ!」
誰も何も答えない
その時心の底から急に湧き出る感情があった
今、コイツらを殺したら楽しくて仕方なくなる
「くっくくく、お前ら全員俺が皆殺しっす!
肉の欠片一個残さないっすよ〜!」
そこからはもう、一方的な殺戮が始まった
飛びかかってくるホムンクルスを片っ端からパンチで腹をぶち抜いてあれを取り上げる
「お前ら子供産めないくせにこんな上等なもん持ってんじゃねえっすよ!!」
気がついたら全員殺し終わっていた
「まだっす!まだっす!まだ足りないっすよ!
もっと楽しませるっす〜あーはっはっはっ」
そして、もうそこには人間の形をしたものはなかった
「…まだ、楽しみ足りないっすね」
だが、もう何も無いので力を抜いてその場に立つ
「はぁ、仇討ちにはまだまだ遠いっすねぇ〜」
その時拍手をしながら、上から男が降りてきた
「素晴らしい!非常に残念だったね…
恋人さんのこと残念だったね…
是非、僕の研究所へ来てくれないかな?
僕らの技術力なら、カラちゃんを蘇らせられるかもしれないよ」
「それ、楽しそうっすね」
特に行く場所もなかったし、気が狂っていたので俺は快諾したっす
「ありがとう!
僕は、ヤマト」
思いっきり笑う
「俺はシラギっす」
軽く笑顔を返す
「よろしくね、シラギくん」
ここまで読んでいただきありがとうございました〜
続きもよろしくお願いします!