六話 トレントトレント
誰か感想書いてくれてもいいのよ?(チラッ)
キングゴブリンを倒した後、少しの休憩を挟んで再び歩き始めた。
「次はトレントか……」
前世で読んだライトノベル等でたまに出てくるモンスター。枝をうねうねと操り、自由に動く根で移動する。幹のところに穴がいくつかあり、まるで顔のようにそれが動く。
「キシャァァァァァ!!」
だが、この場所で出てくることに、疑問を覚えた。
なぜ、ここで出てくる? 明らかにこの層のレベルに合っていない。トレントといえば、精々中級の魔物だ。キングゴブリンならば一撃で倒せてしまえるだろう。
しかし、なんだ。この嫌な感じは。
早く倒してしまった方がよさそうだ。
短期決戦。
木の幹を狙って叩き斬るつもりで剣を降った。
しかし、幹の途中で剣が止まる。
「断ち切れない……」
硬いものに当たった感触もない。剣を抜こうとしてもびくともしない。その姿はまるで剣を飲み込もうとしているようで……。
「まさか!?」
気がつけば後ろに二、三体のトレント。
それは枝と根を迷路のように道全体を覆い隠し、私の退路を経っていた。完全に包囲された。
「まずいな……」
捕まったらお仕舞いだ。こうなったら強引だが。
幹に刺さった剣の柄を蹴り飛ばした。
釘を打つように何度も何度も。
トレントが苦悶の声?のようなものをあげる。
それでも進んだ感触はあるが、切るところまではいっていない。
「ハァァァ!!」
ボキっという鈍い音と供に、渾身のローキックでトレントを倒した。
だが、トレントが続々と集まり20体ほどになり、包囲を狭めてきた。
だがトレントといえど、所詮は木の化け物。炎には勝てない。
ランプを床の苔と予備の布地に近づけて発火させる。
小さな火は瞬く間に燃え広がり、トレントたちを焼きつくす筈であった。
「なっ!」
しかしトレントたちに迫る寸前で、落とし穴が作動。炎を分断していた。まるでトレントたちを守るように。
やはりどこかから誰かが見ていて、このダンジョンを操っている。
しかし、当たりを見渡してもそれらしいものはない。
さらに、落とし穴から水が溢れでてくる。それはどんどんと溢れて、私のいる辺りと火のある辺り一面に浸水を起こした。
「くそ……」
僅かな火の粉からの出火すらも防がれた。
トレントがこちらを挑発するように枝を揺らし……いや違う、あれは何を。
最初は一体の動きだったものが次から次へと伝播していき、包囲しているトレント全てに伝わった。
警戒して、剣を正眼に構えていると、小さな苗木がこちら側に生えた。
特に代わり映えしない普通の苗木。
しかし、それが辺り一面にびっしりと生え始め、周りのものを飲み込んで急速に成長していく。
枝を、蔓を、根を、葉を。
それは分断された私の場所を中心起きていた。
剣で全てを叩き斬ろうとしても、全方位から凄まじい数が来てはどうあがこうが無駄だった。
剣を、足を、腕を、そして胴体を拘束されて、逃さないように締め付けられる。
それを剥ぎ取ろうと、拘束しているものを引きちぎりながら動かすが、引きちぎった端からまた新しいものが量を増やして拘束する。
その上からさらにミイラの包帯のように、全身をぐるぐる巻きにされる。
もう目の前は木が密着していて何も見えない。真っ暗だ。
指を一ミリだって動かすことも出来ない。
かなりの強い力で締め付けられている筈なのに、もう傷みすらも感じない。
意識が徐々に薄れていく。
私の身体から魔力を奪いとっているのだ。
完全に意識が飛び、巨大なトレントは薔薇の花を咲かせた。
もう逃れることは出来ない。
ああ、終わった。
「舐めるな」
全身から封じ込めていた魔力を開放する。
それはあまりにも圧倒的で、拘束していた蔓が呆気なく消し飛んだ。
前方にいるトレントへ手を向ける。
「ダークエクステンドボール」
その闇の魔法は全ての物を飲み込み、巻き込みながら高速でトレントに接近し、跡形もなく抹消してしまった。
「まさか、こんなところで魔法を使わされるとはな……まだまだ鍛練が足りないようだ…………」
さぁ終わりだ。お前たちが。
その他のトレントたちを同じ魔法で蹂躙し尽くす。
鈍足なトレントではこの魔法からは逃げられない。もう勝敗は完全についていた。
だが、おかげでランプや所持品が皆どこかへ行ってしまった。もうあまりゆっくりとしていられない。ここからは魔法を全力で使おう。
それで階段は……。
「なるほど、こんなところにあったのか」
トレントを魔石に変えた後、下に階段が出現したのだ。
「こういうこともこれからは想定しておかなければ……」
さて、次の階はどうなっているのか大変楽しみだ。
どんなことが起きようとも対処できるように構えながら、階段を降りていく。
しかし、流石にこれは予想外だった。
そこにはだだっ広い空間が広がっていた。茜色の太陽が大地に広がる草原を照らす。日の出だろうか。
その向こうにレンガ造りの一軒家がポツンと建っていた。
空には色とりどりの鳥が飛び交い、鳴き声が遠くに聞こえた。
「これがダンジョンの最新部……」
「おう、お前さんも驚いたかい」
バッと後ろに剣を構えると、青みがかった短髪をした男が槍を構えて、立っていた。かなり背は高く二メートルはありそうだ。こちらへと向き直り、口を三日月に歪めた。
「待ってたぜ、バケモンの嬢ちゃん」
追い詰められているようで、魔法使ってないだけで全然へっちゃらな主人公……。
明日の更新をお休みさせて頂いて、その分土日に二回更新しようかな……。どちらがいいでしょうか?