四話 魔導書
この章に関しては不自然なレベルのご都合主義があります。仕方なかったんですぅ! 考えても思いつかないし、これを書かないことには前に進めないので。
これからは出来るだけこういうことがないように努めて参りますので、なにとぞご容赦を。
あれから一ヶ月が過ぎた。
あれから代わったことと言えば、一番はフィアだ。なんと魔法を使えるようになったのだ。
六歳にしてはかなり早いといえよう。それもそのはず、魔法というのは空気中に漂う精霊が生み出す魔素を人間が取り込み魔力に返還して蓄えることによって初めて可能になるのだ。その魔力を返還する身体の仕組みが出来るのは大抵7、8歳と言われている。
つまり、フィアは天才なのである! もう一度言おう、フィアは天才なのである!!
ちなみに私の場合は魔素を術式で無理矢理魔力に返還し体内に流して強制的にやっていただけなので、邪道である。
「見てみて! お姉様!! フィア、光飛ばせるようになったよー!」
ぐっ! 尊い!!
……フィアもやはり属性持ちでなんとレアな光だった。やはり天使か。(確信)
今は主に昼間はこうしてフィアの魔法の特訓や勉強を教えている。12歳から入ることになっている学園の為の基礎知識みたいなものだ。
そして夜は……。
******
アイギス領のとある酒場。
一人の男が店員に威張り散らしていた。
「どけどけ! 俺様のお通りだ。道開けろ!!」
男は酒に酔いながら周りの物を破壊しては女性店員に絡み付いていた。周囲は男にすっかり怯えてしまって物を言えなかった。
そこを小さな影が一瞬で通りすぎた。
すると……。
「……え?」
男の首と胴が別れていた。
赤い血が派手に撒き散らされる。
「きゃあああぁぁぁぁ!」
悲鳴がその場を支配した。
真相を知る者は誰もいない。……一人を除いて。
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「やれやれ、全くあの男は一体何をやっているのだ。己の領内の治安すら守れないというのか」
もちろんやったのは私である。毎晩フィアを寝かせた後、脱け出してはこのように治安維持に貢献していた…………訳では勿論なく、フィアの住む場所を浄化し、安全化する必要があるからだ。
この活動を始めてから一ヶ月。随分ましにはなってきている。
というよりそもそも夜に外を出歩く人が急激に減った。なんでも首斬りの幽霊が出るとか出ないとか。なんともバカげた話である。そんなものなどいるはずもないというのに。
あともう一回りして帰ろうかと思ったその時。町の外れの茂みから幾つもの松明の火が見えた。こんなことは始めてだ。
何をしているのかと近づき耳をすませる。
「止まれ、ここだ」
一際大きな男が停止を呼び掛ける。
「まずは荷物を確かめる。お前たちは先遣隊で財宝を持っているはずだな。それを確かめる。」
男たちは持っていた荷物を卸して点検を受けているようだ。とても正規の方法で手に入れたとは考えにくいほどの財宝が茂みから垣間見えた。
危険だ。殺るか。
次の言葉を耳にしていなかったら、私は間違いなく動いていただろう。
「それであの禁忌の魔法『分身』を納めた魔導書は明日の昼の部隊が所持しているのだな?」
分身だと?
「はい、間違いありません。とある貴族が所持していたのですが、覚えられる魔導士がいなかったようで封印されていましたが、その貴族がほとんど滅んでしまった為、持ち出して参りました。」
最近で滅びかけている貴族と言えば、先月アイギス家へ喧嘩を売ったヘーベル家しかいない。そんなものを持っていたのか。
「把握した。荷物を持って着いてこい」
男は大きな岩の前に連れてきて、懐から大きな水晶を取り出した。そこへ魔力を送りこんだのだろうか、明るく点滅を始めた。
すると目の前にあった巨大な岩がゴゴゴという音と供に2つに別れた。
これは……。
「ダンジョンですかい?」
部隊の一人が聞いた。
「そうだ。我らはここの最深層を根城にしている」
「それは自殺行為じゃないですか!?」
自殺行為なんてレベルのものではない。ここのダンジョンのレベルがどれ程のものかは不明だが、世界各地にダンジョンがあるというのに最深層へとたどり着いた、なんて話は聞いたこともない。噂によれば勇者という奴は最深層にいるという悪魔を倒したらしいが……。
少なくともこの貧弱な輩がたどり着けるとは到底思えない。
「我らの棟梁はこのダンジョンを支配している。だからこの通行晶さえあれば直通で最深層に行くことが容易だ。さっさとこい」
この隊は闇の向こうへと消えていき、見えなくなった所で岩が閉じた。
なるほど、これは誰も気が付けないわけだ。それにしてもよい情報を得られた。分身の魔導書、それさえあれば部下を集める必要がなくなる。自分ほど信用できる者などない。それに警戒しながらフィアとずっと一緒にいられるのだ。
明日の晩、ここへ来て奴らを皆殺しにして、分身の魔導書を奪い取ることに決めた。
短くてすんませんっした!( ノ;_ _)ノ