二十二話 勇者の話
本っ当にと遅くなって申し訳ない。未だに公募作品が終わってないんですぅ!
勇者。
それはこの世界にとって特別な意味を持つ存在だ。
その人気は凄まじく、衰えるどころか年月が経つにつれてますます神格化が起きている。
そんな勇者という存在は千年前から語り継がれるある伝説に起因する。
それは……。
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むかしむかし、それは本当にはるかむかしのことです。
悪い魔族といわれる悪魔どもが世界を支配していました。
人間たちはかれらに怯えながら細々と暮らしていました。
人間のほうが数が多いにも関わらず。
それほどまでに人間と魔族の力は隔絶したものがありました。
そんな中、流星が地上に降り注いだ日、とある村の少女が子供を突如として身ごもります。
彼女は生娘でしたので自分の変化に驚いていました。
戸惑う彼女の夢に天使様が訪れます。
「あなたが身ごもっているのは天の代行者。大切に育てなさい。必ずや魔族どもを滅ぼす大きな一助となるでしょう」
そう言って天使様は去って行きました。
信心深い彼女はその言葉を信じ、彼のために全てを投じることを決意します。
やがて月日は流れ、天の代行者──勇者様がお生まれになります。
金色の髪に金色の眼。
まさに神がこの地におりたったかのようでした。
娘のことを信じていなかった村人たちもそのあまりの神々しさの前に、娘を蔑んだことを謝罪し勇者様のために全てを費やすことを約束します。
そして3年後、人間のよりも成長の早い勇者様は立派に成熟し魔族どもの頭領──魔王を討つ旅へと身を投じます。
通りかかった街にはこびる魔族どもを駆逐しながら、着実に魔王の居座る魔王城へと近づいていきます。
そのお姿に共感した人間たちが勇者様に協力します。
その中でも強力だったのが、『聖女』『賢者』『聖騎士』でした。
勇者様と彼らは勇者パーティーと言われ、その名を世界に轟かせました。
そして勇者パーティーは激闘の末に魔王を討ち取り、世界に平穏を取り戻したのでした。
めでたしめでたし…………。
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この物語は世界中で語り継がれている。そしてそれは勇者を崇めて祀る、勇者教──勇者の名をとってフィンラディア教として今も色濃く残っている。
全世界の人々が信仰する世界最大の宗教となって。
そしてそのその総本山が来月に行く予定であるメルジニア王国であるのは理由がある。
簡単なことだ。
その地に勇者は生まれ、その地で亡くなったとされているからである。
亡くなったと言ってもその死には多くの謎が残っている。
伝説によれば、勇者は魔王を討伐した1年後突如として消えたとある。
つまりメルジニアはフィンラディア教からすれば聖地というわけだ。
ここまでの内容を大まかにフィアに伝えた。
真剣な目をして口を閉ざして聞いていたフィアは口を開けた。
「それでお姉様は勇者様のことをあまりよく思ってないの? そういえばそのお話を私に聞かせたのって結構最近だよね。……いやお姉様だけじゃなくってお父様やお母様も……」
ああ、ほんっとうに私の妹は賢いな。
思わず緩む口元を力で無理やり押さえつける。
「ああ、本当ならば7歳までに教会に出向き、洗礼を受けるのが習わしだ。だが、あの男は教会を幻術魔法でだまくらかしている。だから表向きにはフィアの洗礼は済んでいることになっている。
つまりはアイギス家はフィンラディア教と完全に反している」
「あ、やっぱり。何か理由でもあるの?」
「胡散臭い」
私がそう言うと、それだけ? とでも言うかのようにフィアは眉を寄せた。
「それだけだ。ただ本当に胡散臭いのは確かだ。まだ何も掴みきれていないが」
これは本当の話だ。私の分身体を何体か投入して動向を見張っているが何もわかっていない。
不気味だ。だが、今回の件を利用して、分身を多く派遣すれば何か掴めるかもしれない。
「そうなんだ。……それでさっきの私、賢かったよね?」
キラキラとした目とその言葉から何をして欲しいのか直ぐに察した。
「はいはい、こっちにおいで」
フィアを後ろから抱き寄せて、頭を優しく撫でる。
「んふふ♪」
フィアの可愛さにやられて上手く働かない頭で、もしフィンラディア教がこの笑顔を陰らせるようなものであれば、速やかに排除しようと心に違うのだった。
一応完結までの大まかなプロットは出来ているのです!




