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十六話 神器の力

本日は一章のラスト、20話までを一気に投稿致します!!

 






「まさか……あの巨人があんな子供に倒されるなんて…………」



 目を丸くしてレクスを見るボルテックス。


 その横で、驚きつつも少し安堵したようにハミールは見ていた。あの穴からシルフィアは脱出出来るだろう。後は自分たちがどうするか。



「予想外……だったかい? だったらこれくらいでもう引いてはくれないかな」


「いや、少し動揺しただけだよ……。この作戦にはあまり支障はない。それにこの国をとることはもう決定されているからね」



 やはり……ボルテックスにはまだ奥の手があるのだろう。驚いてはいるものの、焦っている様子は見られない。


 やはり油断ならない。



「ハミール殿、加勢させて頂こう。父の仇だ」


「気絶してるだけでまだ死んでないけどね」



 そこに敵を殲滅してきたレクスが加わった。ボルテックスに険しい目を向け、刃を向けた。


 なんの魔法かは分からないが、肌が真っ赤になっており、かなりの熱を放射している。余りの熱さにこれ以上近づけば火傷してしまいそうだ。

 アルベールが使っていた術のようだが、この歳でそれを再現してみせるとは…………将来は一体どこまで強くなれるというのか。



「まるでミュリアみたいだねぇ……」


「ハミール殿?」


「いや、何でもないよ」



 レクスが目を向けてくるのを、笑って誤魔化した。



「さぁ、そろそろ相手がくるよ」


「ああ……」



 警戒をボルテックスに向ける。



 ボルテックスは先ほどのレクスのように身体に風を纏わせた。



 三人が互いに目線をぶつける。


 そして再び戦いの火ぶたが切って落とされる。


 ボルテックスとレクスは飛び出し、剣戟を交わす。

 一合、二合、三合と重ねていく中、ハミールは水の弾丸を精密なコントロールで放つ。


 ボルテックスはそれを風で舞う木の葉のようにひらりと交わし、旋風をレクスに飛ばした。


 それをレクスは魔力を圧縮したものをぶつけて鎮める。


 ボルテックスはその一瞬の隙を狙うが、その間にハミールが割り込み、剣で受ける。


「なっ!? ゴボボボボボ……」


 そしてボルテックスはハミールが空中に設置しておいた迷彩を施した水の塊に頭から突っ込む。突っ込んだ勢いと水の体積が大きいことから、全身が生き埋めになった。


 逃れようと水をかくが、ハミールが水を操作して後ろに掻き出された水をすぐ、前へと移動させるため抜け出すことが出来ない。


 ボルテックスは泳いで脱出することを諦め、剣から風の斬撃を幾つも生み出し切り裂くことで脱出する。



「まったく趣味が悪いなぁ」


「君が強すぎるからしょうがなくだよ、私だって進んでこんなことは普通しないさ」


「どうだか」



 お返しとばかりに剣の切っ先をこちらに向けて、竜巻状に風を発生する。



「ウィンドホール・ブラスト」



 先端が尖った台風の上から見たような形のものが、一直線にハミールへと飛んだ。


 受けきれないと咄嗟に判断し、回避を試みるが速度は予想を遥かに上回りまともに受けてしまう。



「がっ!」



 横っ腹の肉を根こそぎ奪われる。急所こそは外したものの、重傷であることは間違いなかった。



「本当にキミ強いね、うち来ない?」


「ぐっ! はぁはぁ……どうにも君たちのことは信用できない。一国の皇子の立場にある人にそう言って貰えるのは大変光栄だけど、断らせてもらうよ」


「うーん残念だ。仕方ない、じゃあもう終わりかな。……ねぇ、レクス皇太子」


「なんだ……」


「いや、ほぼボクも皇太子みたいなモノだからレクスでいいか。君はその神器、完璧に使いこなせていると思うかい?」


「……」


「そう、言わなくても分かっているみたいだけど、君は神器持ちたての人よりは扱えている。身体にその神器の能力電気を纏わせたりは出来ているからね。でもせいぜいステージ2といったくらいだ。そしてボクは……」



 そこで言葉を切って、剣を上に持ち上げる。


 その遥か上、上空では黒い雲が渦を巻き始めた。ゴロゴロと稲光が所々に走る。徐々に風も強くなっていく。



「ステージ4。神器、その名の通り神のような能力を引き出せるレベルさ」



 渦を巻いた雲が地面へと青白い光を纏いながら、地へと伸びる。


 そこでボルテックスは剣を放した。


 剣は上へ上へと浮かび上がり、やがてあるべき場所へ戻ったかのように渦の中心に収まった。


 そして風と雷のエネルギーが剣の切っ先で、一つに集まる。





「いやいやこれは不味い、レクス殿出来るだけ遠くに……」


「っふぅぅぅぅぅぅ」



 ハミールが距離を取ろうとレクスに声を掛けた時、レクスは魔力をどんどんと高めていっていた。



「何をしているんだ! レクス殿!! あれはダメだ。私たちの手には負えない!」



 レクスは何も話さない。



「レクス!!」


「この近くにはユンディアの民が暮らしている。それに代々守ってきた王宮が後ろにある……。貴族たちも、そして父上も遠くへは逃げられていない。それなのに、逃げられるかッ!!」



 その目には迷いはない。ハミールはもう説得しても無駄だと悟った。



「しょうがない……私もここに残ってあれを何とかしてみよう。焼石に水かも知れないけど、私も切り札を一つ切るとしよう」



「感謝する」



 迫る黒雲を睨み付けて、レクスはそう言った。



 ボルテックスは嗜虐的な表情で、上にあげていた手を降ろした。





「テンペスト・コンセントレイション」







 神の如き全てを消し去らんとする一撃がハミールとレクスを、ホールを、王宮を、王都を襲う。


 そんな中、レクスは攻撃のど真ん中へと上へと飛び上がり真正面から飛び込む。


 あの攻撃には電気も含まれていた。

 つまりあの男のいう通り、ステージ4は周囲の自然現象を完全に掌握することのレベルなのだろう。つまり一時的に、自分がそのレベルに至ることが出来れば、あの電気を自分のものに出来るはずだ。そう考える。



 一方下ではハミールが剣を天へと向ける。




「魔剣()()()()()()!! 」




 氷の幾つもの氷柱が上を向き、発射される。それはレクスと同じ高さまで上がり、小さく弾けて互いに猛スピードで何度もぶつかり始めた。






「スパークル・アイシング」





 それは小さな水蒸気の集まりとなり、小さな雲となる。小さくバチバチという音を立てる。発生しているのは静電気だ。弱いものではあったがこの場ではかなり意味のある行為だ。


 電気は電荷の少ない方へと逃げる法則がある。その性質を利用して、レクスの攻撃を外させるという試みを手助けしようという考えだった。



 レクスは凄まじいエネルギーの先端に剣を突き刺す。そして、その電気を雲の方へ動かそうとする。けれどもまったく変わる様子はない。



「いやいやレクス、それは無謀ってモンだよ。そんなすぐに出来る筈が……」


「電気よ! 俺に従え!!!!」



 全ての電気は俺のものだ! そう強い意識を剣に乗せる。



「はぁぁぁぁぁあ!!!!」





 バリバリバリバリ!!!!

 雷が雲のある方へと逸れる。それに釣られて風のエネルギーも逸れて、攻撃は王宮から大きく違う場所に着弾した。




 ゴォォォン!!

 と、地鳴りのような音が響き渡る。




「嘘……。防がれた?」



 ボルテックスはその結果に愕然とする。


 しかし、ハミールはこれで殆どの魔力を消費してしまい、レクスに至っては僅かに感電してしまったのか殆ど虫の息だ。



「ぐっ……中々思い通りにならないな。まぁ、いいかこれで今度こそ終わりだ」


「いやもう少し足掻かせてもらうよ、魔剣レヴィアタン、魔力解放」



 ハミールの持っている魔剣がまるで神器であるかのように、魔力をハミールへと供給を始める。



「そんな馬鹿な!? 神秘性も感じられない、それは紛れも無く魔剣の筈だ。なのになんで……」


「そうだね……まあ話してもいいか、もうあんまり変わらないし……。この剣はね、簡単に言えば、本当の神器『氷雪剣レヴィアタン』の複製品なんだ。だから出来るだけ似せて作ってある」


「じゃあこの魔力は……」


「それは貯蔵していた魔力を解放しているだけさ。キミの持っているようなじんぎみたいなことはないから安心していいよ。でもね……」



 ボルテックスは自身の足が動かないことに気づく。氷で固められているのだ。そこに意識がいった瞬間、剣で背中を薄く切られた。



「武器性能としては本物と遜色ないと思うよ」










次は14時台に投稿予定

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