一話 出会い
キーワードを見れば分かる通り、沢山の要素がてんこ盛りな作品となっております。私はまだ修業の身。拙い文章で誤字も数多くあると思いますが読んで頂ければ幸いです。
「なんなんだ! あの化け物はッ!」
「こっちに来るぞ! は、速く逃げるんだ!」
大の男たち林の中を掻き分けて、必死の形相で走っていた。まるで死神にでも追いかけられているかのように。
「ちくしょう! なんでこうなるんだよ! 簡単な任務だった筈なのに!!」
一人が毒づく。そう、男たちの任務はさほど難しくはない筈だった。
ただ林の中から貴族の馬車に向けて当たらないように矢を幾つか射るだけ。後は逃げるというもの。
報酬額も普通。危険な匂いなど一欠片もなかった。
こうして移動中の弱い貴族に自分たちを野党と見せかけて攻撃させ、そこへ救援として割り込むことによって恩を押し売りする。
そして自分の派閥へと引き込む。
使い古された手口。
よくある任務。
……その筈だった。
でも、
「矢を射ることさえ出来ないってどういうことだよッ!」
男たちが矢をポイントに身を隠し、矢の準備をしているところを襲撃されたのだ。黒い悪魔に。
「悪魔めがッ!!」
「……それは私のことを言っているのだろうか」
木々の間から美しい少女が姿を現す。長い黒髪にまだ幼さの残る顔。しかし、彼らにとっては悪魔そのものだった。
「で、出てきたぞ! は、速く逃げ……」
そこまで男が言い切った時、既に仲間の頭と胴は泣き別れになっていた。
「う、うわあああぁぁぁ!!」
逃げろ、逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ。
逃げろ!
身体が、本能が、全力で警鐘を鳴らしていた。
後方で待っている部隊の所まで帰れば、貴族たちの軍がいるはずだ。そこまで帰れば助かる。
そう考え、懸命に駆けて駆けて、駆けて。
林を抜けた。
「こ、これで!」
だが。
「なんだ、意外に遅かったな」
なんだこれは。なんの悪夢だ。
だって、だってだって、だって。
「なんで後ろから追いかけてたお前がここにいて、貴族の軍が全滅してて、お前が無傷なんだよぉぉぉ!!」
「それに私が答える意味は?」
いつの間にか間合いを殺されて、接近されていた。
「さて、お前への罰は何にしようか。何せ我が天使に矢を向けようとしたんだ。それ相応のものをな?」
「そうだ! 血流を逆流させてしまおうか! それがよさそうだ」
男には目の前のものが何を言っているのか理解出来ない。
ただただ恐ろしい。
「では、始めようか」
「た、大変もうしわけ……」
「それは今更というものだ……。まあ害意を持った時点で殺すことは確定している。だから謝罪に遅れた自分に後悔しなくてもよいぞ」
そう言って、ずっと無表情を保っていた悪魔は三日月の笑みを浮かべた。
それは男が生涯で見たどんな女よりも美しかった。
「消えろ」
この時、男は無意識の内に悟った。
目の前にいる化け物は、悪魔などの枠には収まらない。
まさしく。
「魔王……」
男は悲鳴をあげる暇もなく、意識を失った。
******
私は昔から完璧、完全というものを常に求め続ける性分だった。どんなにくだらないものであろうととことん突き詰めることをひたすらにしていた。
だが、それを好きでやっていたわけではない。本能的に行っていたのだ。家電量販店にある全てのパソコンの仕組みから日本や日本以外の全ての国の言語に法律。他にも図書館にある本を全て読破したり、とにかくなんでも完全を目指していた。
私には趣味と呼べるものはなく、好きなものも一切ない。空っぽな人間だった。
そして、完璧を求めていく内にいつの間にか奇妙で才ある人材が集まり、裏社会で地位と名誉を得て、世界を裏側から支配する立場になっていた。
それでも私の心は空っぽで満たされることは一向になかった。
その内にどこかの馬鹿者が核ミサイルを大国に打ち込み、世界大戦が始まってしまった。戦争のような憎悪が憎悪を呼ぶ状況では私は何も出来なかった。そうなると核の打ち合いだった。
地球から脱出することも考えたが、宇宙は宇宙で人工衛星が戦闘を繰り広げており、こちらの方が優秀な宇宙船を作ろうとも、不可能であることは明白だった。
だから地下に巡り、策を練っていた。
だが、ある日嫌な予感が私を強く襲ったが、それを無視して会議を行っていた。すると爆音が響き、次の瞬間には私は死んでいた。
今考えると、どこかの馬鹿な国が地下に何個も核爆弾を配置したのだろう。それに地球は耐え切れず、ついに崩壊してしまった。
……そんなところだろうか。
そして目を覚ますと、一人の女性が私を抱きかかえている光景だった。
「生まれました! 女の子です!」
「あら、元気な子ね。名前はハミール様が決めていたレーミュリア。よろしくねミュリア」
「旦那様をお呼びしてきます!!」
さしもの私も驚いたが、冷静に状況を把握すると、図書館で読んだ本の一部ーーライトノベルの展開の一つに大変に類似していることに気づいた。
だが、発見はこれにとどまらなかった。
「エルス!! 生まれたんだって!!!!」
男が飛び出してきたのだ、窓から。ここは三階のはずなのだが。
「ハミール様、この子ですよミュリア。抱いてあげてください」
すると一人でに私の身体は宙へと浮き始めた。これは……まさか…………魔法……なのだろうか。もしそうだとするならば、これは……。
「私がパパだよ!! ミュリア♪」
……異世界転生だ。
******
それから一年経った。
私はライトノベルのキャラクターのように実力を隠すようなことはしなかった。ただ前世と同じように完全を求め続けていた。特に前世には無かった、魔法そして魔法の道具ーー魔道具。
それらの研究に明け暮れていて、もはや言葉を喋れることや歩く、走ることなどは生後一週間で終わらせてしまっていた。
身体の構造的に難しいことも一度目の失敗から学び取って絶対に次は失敗しなかった。両親は私の異常っぷりを何の気にも留めず、ただひたすらに私を褒めていた。
いつもは部屋に引きこもって魔導書を読み漁るのが常なのだが、その日だけは違った。
妹が生まれるのだ。
幼少期から上手く教育すれば、よい助手となり得るかもしれない。そう思っていた……。
だが……。
「生まれましたー!!」
「今回もよくやったな、エルス。この子の名前はシルフィア。フィア、私が君のパパほらでちゅよぉ!! ミュリアも見て、君の妹だよ」
そう言って背の低い私にそっと見せた。
目線を妹に合わせた瞬間、衝撃が全身を走った。
「か、かわいい……可愛すぎる。天使か」
きゅっとなった顔立ちから小さい掌。全てが至宝だった。
「ちょっ、ちょっとミュリア!?」
いけない、いけない。どうやら私は無意識のうちに父親から妹を奪い取ってしまっていたらしい。
「きゃっ♪」
妹ーーフィアが小さく鳴いた。
ああ、かわいい。
この時、私の空っぽな心は満たされた。
これ以降、完全を目指すことなど頭からすっぽり抜けて、フィアと一緒にいることだけを考えるようになっていた。
その考えが私を一生後悔させることになる。
******
「お姉様!! 今日も本読んで!」
「ああ、もちろんいいとも。ここに座りなさい」
そう言ってフィアを膝の上に乗せて、本を読み始めた。フィアはずっと私と遊んでいたせいか、他の人よりも成長が早かった。まあ天使レベルの才能なのかもしれないが。
それ故に今読み聞かせている本もかなりレベルは高いものだが、ニコニコとした表情で私の声を聴いていた。
フィアが生まれてから6年の月日が経っていた。私は7歳、フィアは6歳である。そしてこの日は……。
「お姉様♪ 今日は何の日だと思う? 当ててみて!」
「んー。何だったかなぁ。お母さまがフィアの部屋で寝られる日?」
そう言うと、フィアは頬を膨らませた。
「ブッブー!! ちがいまーす」
「あれ? 違っていたかなぁ。それじゃあお母さまと一緒にお風呂入る日だったかなぁ」
「違うよ! もうお姉様なんて知らない!!」
そう言って腕組みして背中を向けた。遊びすぎてしまったようだ。
「冗談だよ、今日はフィアの誕生日。私が忘れるはずがないだろう」
「もう、お姉様のいじわる」
むくれた彼女にそっと頭をなでてやると、嬉しそうな顔をする。綺麗な金色の髪をツインテールにしたフィアがそんな顔をすると、本当に可愛らしかった。
「可愛いなぁ、フィアは」
「お姉様も綺麗だよ?」
「ありがとう、フィア」
この日、起きた事件が私のこれからの人生を大きく変えることになるとは、この時の私は想像もしていていなかった。
いつも通りの楽しい日々は突然終わりを迎えることとなる。
この一話、実は滅茶苦茶悩んだ結果出してます。読んでわかる通り抽象的過ぎる……。それでもこれの前はたらたらと6000字くらい彼女の自慢を聞かせられるやつだったんですよ? まだマシ……なハズ。
それと主人公のことはとりあえず思考回路がイっちゃってる嘘みたいに天才な美少女と考えてください……