2:平和な
「お外wktk(・ω・少年)」
古ぼけた地図をみながら、少年は舗装されていない道を1人歩く。
…見渡す限り、田畑。時々、家がちらほら。住民はそれほど多くない小じんまりとした町…下手したら村という方が正確かもしれない。
「凄いなぁ…数十年前の地図と、全く変わってない。」
少年は感心する。数十年変わらない町並みを、建築物を、文化を。長らく王都に…いや、正確には城に居た少年にとっては異様な風景だった。長らくと言っても、少年の年齢にしては高々数年…とも言えるが。
地図、街並み、地図、街並み…交互に見れば見る程、少年の頰が綻ぶ。外見相応の、屈託のない笑顔。少年自身がそれに気づき、目を開き、そして細める。
「…楽しい…か。」
少年の低いトーンで呟くような声は、風に溶けていった。
少年は田舎道を更に歩く。最初こそは、鼻歌混じりにリズムよく歩いて居た。だが、妙な違和感を覚える。…静かすぎる。
今はまだ日が高い。だが、子供1人見かけない。見かけないどころか、声すらも聞こえない。
農作業をする人も、遊ぶ子供達も、歩く人も…まるで、神隠しにあったかのように誰もいない。
少年は手短な家をノックする。…残念ながら、人の気配は全く感じられない。
「なるほど、これが今回の仕事…ですね。」
少年は、仕事について思い出していた。
王宮魔術士の仕事は、大きく分けて3つある。
1つ目は、“古の魔導書を解読・発動する“事。
魔導書は多種多様、そして複合魔法が関わっていることの多い。必然的に、全ての属性を使える王宮魔術士が解読し、そのまま魔法発動まで実験することが合理的となる。
魔導書の数も多く、この仕事に1番時間を使っている。
2つ目は、”魔導具を作る“事。
魔導書を解読・発動でき、その魔導が有用性があると認められた場合にこれを行なっている。魔法効力の確認・調整を行い、道具に魔法を付加(ちなみに闇魔法)させる。
魔導具は、誰でも使用できる。その為、生活の必需品になっている。風と水魔法の複合付与で、自動洗濯機。水と火と地の複合で冷蔵庫。有ると無いでは雲泥の差だ。
そして3つ目は、“異変や事件を解決”する事。
王国には、勿論騎士もいる。町には自警団も存在する。つまり、王宮魔術士に限られた仕事ではない。だが、こう考える者もいる。
ー 目には目を、歯には歯を。
化け物には王宮魔術士を…
程の良い厄介払い…とでも言えば良いだろうか?
だが、ある意味間違いではない。変異や事件がストレッサーとなり、後天性となる者もいる。もしかすると、6種属性持ち…王宮魔術士として保護しなければならない対象が居るかもしれない。
つまり「お前らの仲間だろ?お前らでどうにかしろ。」と暗に言われている。
※それぞれの用語使い分け基準
魔法:パッと出す。出すだけ。(火を出す)
魔術:出して何かをする。(火を出して燃やし続ける。任意で消火可能)
魔導:自身の属性以外も使える。魔導具。
…フィーリングで…お願いします。
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少年が楽しそうでなにより。
次回もお付き合いいただけると幸いです。