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喪女のリア友現れる

 家に着いてとりあえず寝た。

 眠かったし、疲れ切っていたし、頭の中がごちゃごちゃしてきてまともな事が考えられない状態だったから。

 多分寝ればスッキリするだろうし、もしかしたらこれは全部夢だったってオチかもしれない。


「ふがっ!」

 自分のいびきとも寝息とも言い難い呼吸音に驚いて目が覚めた。

 時計は五時を指しているが、これは朝の五時なのか、それとも夕方の五時なのか……。

 こんな時アナログ時計って不便である。

 空の色も微妙な色合いをしていて、朝か夕方か区別が付きにくい。

「んー、スマホぉー」

 寝る時に置いたであろう場所を手探りし、それらしき物体を掴む。

 表示されている時刻を見ると『17:25』と出ている。すっかり夕方になっていた。

 そしてライン新着メッセージを知らせる文字が目に入る。

「あー、昨日逆ナンしたおっさんかな?」

 アプリを開く。相手が登録している名前になっているので、おっさんなのかコガネムシ君なのか分からない。

 とりあえず開いてみる。

 一目で分かった。コガネムシ君だ。


『昨日パイセンに怒られましたよー。でもクビになっても行くとこできたんでチョー助かりっす(ぴーす)』

『それにしても何すか? アルテミスって。お姉さんどう見ても日本人っすよね。』

『名前の前に書いてる漢字読めないっす。なんですか?』

『ああ! もうカップラーメンもない! 食うものない。タスケテー』


 渡りに船、で連絡先奪ってきたがこいつも頭痛くなる系統の人間だった……。

 そもそもヒモって『働かない・動かない・何もしない・たかるだけ』みたいなダメンズらしいから、多少イラっとする要素があるのは認めよう。

 でもなぁ、おバカ要素満載はイラっとがイライラっとに倍増する。

 これはいかん。落ち着いて生活出来ない。ストレスが倍増する。

 ……よく考えたら同じ屋根の下に男が居るってだけで落ち着くはずはないんだが。

 次の逆ナンからもう少し考えて捕まえよう。


 そんな事を考えていたら、コガネムシ君から新着があった。


『友達がヒモ生活いいなーって。アルテミスさん、友達も入れていい?』


 この子、本当に頭が弱い子なんではないだろうか?

 ヒモをどっかのサークルに入るような感覚で友達も入れてって、どっからその発想は来るんだ?。

 普通はヒモって1対1じゃないんですか?

 私の場合は特殊中の特殊で、多数応募のもれなく入れます的なヒモ募集してますが。

 これは命かかってますんで! 遊びじゃないんで!

 そんな御託は並べてみたが、やはり自分だけじゃ集めきれないのは否めない。

 ヒモ友達でもニート友達でも何でもいい。引っ張れるものは引っ張ってきて欲しい。

 ストレス覚悟で、コガネムシ君にそいつも連れて来いと連絡しておこう。


 そしてまず最初に片付けなくてはいけない問題として家だ。

 ここではそんなに大人数どころか二人でも狭い。早々に引っ越しを考えねば。

 別宅も考慮するが、安くて広くてすぐ引っ越せる所を探さなくてはいけない。

 寝てスッキリした頭をフル回転させる。

「!! こんな時こそ馬場よし子!」

 私の唯一のリア友である馬場よし子。これほど頼りになる女は私は知らない。

(リアで頼れるのが他にいないからとも言う)


 昨日の今日というのによし子は二つ返事で駅前にあるカフェまでやってきてくれた。

 大学のサークルで知り合った彼女は勿論私と同じく『摩訶不思議探求サークル』であるが、見た目は私と違って清楚で美しいという表現がぴったりなお嬢様である。

 見た目だけならかなりモテそうなよし子であるが、私と同じく喪女だ。

 中身が実に残念なのである。

 この痛い趣味の他に腐女子でもあったり、さらに変な方向にこじれたブラコンでもある。

 外見と花嫁修業に磨きをかける彼女は、それを全て『お兄様の為』と言ってのける。

 兄に彼女が出来ようものならば、必ず邪魔という名の『おまじない』を施す。

 ふさわしくないと思えたら徹底的に施し、別れさせる。

 そして兄に仲の良い男友達が出来ようならば、それを妄想の糧に執筆に励む日々を送る。

 彼女の夢は『兄と兄の彼と三人で仲良く暮らす』だそうで。


「それで、私に相談って?」

 よし子はお気に入りのシャリマティーをひと口含むと、面倒臭い女の子同士の社交辞令をすっ飛ばして聞いてきた。

「実はね、ひょんな事から『キリストの聖杯』手に入れちゃってさ……」

「何ですって!? いつ!? どこで!? どうやって!?」

「いやいやいや、ちょい待て! 落ち着け! 順に話すからまず座って!」

 興奮して立ち上がり、鼻息を荒くするよし子をまず座らせ、落ち着かせる事にした。

 放っておいたらお花畑全開で、声も高らかに『キリストの聖杯』についてご高説されてしまう。

 実際、この手の趣味のオフ会で彼女は何度かやらかしている。


「……まぁ、そんな感じで手に入れて、契約させられちゃったもんだから、何とかしなきゃいけないのよ」

 落ち着き始めた頃合いで、『キリストの聖杯』の入手から現在に至るまでをざっくりと話して聞かせた。

 さすがのよし子もオカマヒューマンの呪いについては知らなかったようで、出来ることなら譲って欲しいという表情は、あっという間に『気の毒に』と『そんなのイラナイ』が一目で分かる表情に変わった。

「で、目下の問題が二点。家とヒモ」

 よし子を呼んだのは愚痴を言いたいからではない。彼女の発想力とコネである。

 愚痴りたいのもあったが、今はそれよりも問題解決。愚痴るのはそれからだ。

「家とヒモねぇ……」

 よし子は空になったカップを覗き、ポットから紅茶を継ぎ足す。

 じっとカップに沈むオレンジを見つめ考え込み、思い出した様子で顔をあげた。

「いわく付き物件でよければ格安で売れる」

「マジで!?」

 そう、よし子の一族は不動産を多数所有している。

 本人も生前贈与やら、『経営の勉強のため』という名目の元に幾つかの不動産を所有している。

 喪女の独り暮らしに立派なマンションや一軒家は必要ない為、頭の片隅に追いやっていたデータだったので、こんな事がなければ半永久的に忘れていたかもしれない。


「その物件ってどんなの? どれくらいの大きさの家?」

 いわくが付こうが何だろうが、格安ですぐ移れるならこの場で契約したい位だが、聞いておかなければ後悔するパターンはよくある。

 決めるのは聞いて、見て、それからだ。

「家の大きさはかなりの大きさよ。お屋敷レベル。保存状態もかなりいいの」

 保存状態もいいお屋敷ってことはアレか。

 私の期待を裏切らないよし子の一声が続いた。

「幽霊が出るのよ」

 デスヨネー。いわくって言ったら幽霊か呪いですよね。

「しかも変な幽霊が三体」


 よし子さん、変なって何?

 しかも三体?

読んでいただきましてありがとうございます。

切りのいいところで纏めたら、少し短めになりました。

まぁそれもアリですかね。

喪女にリア友がいた。

実際の喪女さんも普通にお友達は居るでしょうが、この喪女さん、ボッチ設定だったはず(笑)

よし子さん登場でサクサク問題クリアさせていきたいですわ。


では次話またお会いしましょう。

年越しちゃいますが(苦笑)

まだまだお付き合いくださいませ。

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