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このネコ娘は、何言ってるんだ。この世界に漫画なんかあるわけないじゃないか。
「いやいやマンガナホンだから。雑貨屋にいたでしょ?!」
何ちゅー紛らわしい名前だ。
『あのドワーフの親爺のことか……。ならば改めて魔力を測った方がいいかもしれないな。出来れば密かに量りたいんだけど、そこまでは無理か』
「カードを使うと、バレちゃうはず。使うのに一回銀貨一枚だからね。カードに記された回数と誰に使ったか記録されるって言ってたわ。それを毎月集金にきて確認するらしい」
ちっ!抜け目ないな。どんな仕組みになってるんだろう。カードに彫ってある文字を確認したいな。もしかしたら読めちゃうかもしれないし。
『一度そのカードを見るだけでも出来るか?』
「頼んでみる」
『魔力袋なんだけど、これを自身で利用することは可能かな?』
「えっとね、宝石があれば可能かな?でも高くて買えないのよね」
魔力袋は肉と同じで、劣化が早くて放っておくと、魔力は拡散してしまうらしい。そこで魔力を宝石に移して溜めて置くんだが、宝石は鉱山に入らないと手に入れられない、買うとかなりの金額になるらしい。希少金属でも貯められるが、量が少ない。もちろん金属も鉱山からの採取になる。鉱山は上層では掘り尽くされていて、下層に潜らなければならないのも、希少価値に拍車を掛けている。初めて雑貨屋に行ったとき、ミリパナが水晶みたいなのを売っていたが、あれは蝋石なんだとか。石板に文字や絵を描くのに使うらしい。
鉱山は、所謂ダンジョンのことである。
ミリパナが使っている剣鉈は鉄みたいだ。てか、文明的に有り得ないような気がするんだが、俺の勘違いなんだろうか。錬金術みたいな魔法があれば、関係ないのかもしれない。いや、間違い無く錬金術はあるとおもったほうがいいだろう。
ダンジョンに潜るために、冒険者はパーティーを組む。単独では足りないものが多すぎるからだ。戦闘力、防御力も当たり前で、灯りの魔法で照らせる範囲は、一人より二人だし、多いに越したことはない。掘削道具は武器とは別に持たなくてはならない。掘り出したら荷物は増える。魔物を倒したら更に荷物は増える。ミリパナが住んでいる岩場には、ダンジョンも幾つかあるが、入るのを躊躇っているのは、こういった理由があるからだ。パーティーを組むだけの、力量とかコミュ力もない。荷物係くらいなら使えるのかもしれない。女のクセに力は凄いからな。なのに、筋骨隆々という訳でもないのが不思議なんだが。
「あ、あたしも質問!あなたは、治癒とか使えるから賢い魔法使いなの?」
『俺のは、魔法なのかわからない。肉体が無いから、魔力を貯められるのかも分からない。もしかしたら、ミリパナの魔力を借りてるのかもな。呪文もないからな』
「魔法使いじゃないなら、なんなの?」
『俺にも分からないんだけど』
そもそも、自分が異世界に居て、身体が無い状態が理解不能なんだから。どうしてこうなったって叫びたいくらいだ。魔力が貯められないというのは、間違っている。俺が貯められないから、ミリパナが代わりに貯めているが正解だ。
ミリパナがドワーフのおっさんに訳を話して、目の前のカードを見ている。見たことのない文字だった。もしかしたら、日本語かもしれないと淡い期待はしていた。そんな上手い話はあるわけないわな。それから、カロミケスの魔力袋を四つ売って銀貨四十枚を受け取った。
『この金属はなんだ?』
「んと、たぶんミスリル」
その言葉が聞こえたのか、ドワーフのおっさんが怪訝な顔をする。
「ミリパナ?お主誰と話しておるんじゃ」
「あ、あれ?やだな独り言だよ」
『この金属が欲しい、カードと同じ大きさで』
「えぇぇ、これちびっと高価だよ」
「ミリパナ、やはりオカシイぞ?!誰か居るのか?」
「あわわわわ……マンガナホン、ミスリル売って。板にして、このくらいの大きさね」
「んんん?おぉほほ、まいどあり。加工するから暫し待て」
そういうと、ミスリルと思われる金属を棚からとりだして、作業を始める。塊から、小片を切り出す。ちょ!どうやって切った?小片を平たく伸ばして、裏表を確認するとカウンターに乗せた。錬金術だよな。やはり在るんだ。だけど、詠唱してなかったよな……。魔法じゃないのか。
「ほれっ、ミスリルの板じゃ。金貨五枚と銀貨一枚な」
銀貨一枚は、加工賃だそうだ。
「とほほ……えらい出費だよ」
「何を言っとる、買うって言ったじゃろう?」
小袋からお金を出して、カウンターに置く、が、手を放さない。
「往生際が悪いぞ。手を離さんか!」
ミリパナは、渋々名残惜しそうにゆっくり手を離し、ミスリルを指で摘まむようにして小袋にしまった。
「マンガナホンありがとー」
「魔力は計らんで良いのかぁ、おぅまた来いや」
店を出たところで、
『あれ錬金術だよな?』
「え?ん!あーそうかもね……」
ミリパナの心此処に在らず。そんなに大金だったのか?
文章が稚拙で、支離滅裂な部分があったり、説明不足だったりしているかもしれません。
申し訳ないです。でも懲りずに読んでね。