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ねこのなかのひと  作者: ままこたれこ
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 翌朝力無く起きて集落へ移動した。


 中心にある広場に、井戸っぽいものがあった。


 近寄っていくと、兵隊に遮られ金を払えといわれた。お金取るんだ。


 このままじゃ確実に死ぬ。食料も買えないし水も飲めない。


 なんとかならないんだろうか……


『井戸ってここだけなの?』


「大抵の集落には一つだけかな」


 恐らく監視できないからなんだろう。地下には水脈があるんだわ。


 あそこにある井戸は、過去川が流れていた場所じゃないだろうか。集落って川の近くにできるよね。文明もみんな川沿いに発展したし。


 地形をよく観察してみると、建物が若干井戸より高い場所に建ってる。井戸のある場所は窪んでるんだ。そしてその窪みは、筋のように建物の間を抜けて西へ続いていた。


『ねぇ!少し西へ移動しましょ』


 疑問に思ったのだろうけどゆっくりと歩き出した。素直で良い娘だ。


『水飲みたいよね?』


「お金ないよ」


『でもずっと飲んでないよね?』


「うーん、少しあればいいからね」


『やっぱり飲まなくても大丈夫なんだね』


「うん、そうじゃなきゃとっくに死んでる」


 さすがに元の世界のうさぎでも、もう少し水は必要だと思う。この娘が特殊なのか種族的なものなのかもしれない。まぁ、うさぎを飼育したことはないからよくわからないけどね。


『穴掘るのは得意なんだよね?』


 何も言わずに頷いた。


『このあたりかな』


 窪みの縁、斜面に対して穴を掘ってもらう。緩やかに下降するように……


 手で堀ながら足で土を掻き出していく。器用だ。


 暫く掘ると石が多くなって、さすがに掘るのが辛いらしい。それでもいつもの寝床の倍ほどの深さになると、土の色が変わってきた。


 これ以上掘ると落盤事故になりそうなので良しとする。


 色の変わった土を両手に山盛り持ってもらい『抽出』を使った。


 乾いて白っぽくなった土を両手から抽出すると、手の平に僅かな水が残った。


『できたー、良かった』


 ぶっつけ本番だったけど、旨くいった。三回ほど繰り返して終えた。本当に少しの水で良いらしい。


 あとは食料なんだけど、さすがに無理だよね。出来れば狩で肉を手に入れたいところだけど、この娘接近戦しかできないからな。


 見付けたら向こうも気付く。逃げられるの繰り返しで、狩りにならない。いままでは運が良かったんだろうね。トカゲとか、虫食べて凌ぐだねー。


 集落に戻ると広場に人が集まってる。


 なにやら余所の村が魔物に襲われてるらしく、人を集めているらしい。そこまで聞こえたところで何も聞こえなくなった。


 あぁ漢字が無くなったんだ……ま、彼女あんまり喋らないからいっか。でも、情報が入ってこないと不味いか。


 そういえば、名前も聞いてなかったよ。


 どうやら、魔物退治に参加するみたいだ。



 村というか、今までみた集落の三倍規模ほどのところだった。


 十五人くらいがすでに配置についていて、周辺の警戒をしている。


 説明のあと、広場で煮炊きしているので自由に食べていいらしい。


 裕福な村なんだね。イモみたいな煮物だった。


 井戸も使っていいらしい。あとから分かったけど、魔物に囲まれた時点で兵士は逃げ出したらしい。


 その日から何度も魔物の襲撃を凌いだ。この娘は武器がナイフなので、弓を潜り抜けてきた魔物と白兵戦で戦っていた。


 おかげで『聞』が沢山たまった。やっと情報収集ができる。


 来た当初から、北の配置についていて、両隣が負傷したり死んだりして、使う人のいなくなった弓を勝手に使った。


 なかなか手ごわい魔物だけど、この娘は戦闘が上手く、数を減らす仲間を横目に生き残っている。


 私は危なげなく戦う娘の心配がないので、周囲の観察をしていた。


 あとからやってきて、西側の配置にいたネコの人に注目した。


 最初は弓が巧いなと思って見ていたが、一発必殺なのが目を引いたんだ。みんな苦労して当てても、一発じゃ死なないんだよね。


 周りもそれに気づいて、話し掛けても答えてくれないみたいだった。なんか特別な弓なのかもしれないと、思ったけど見た目は普通なんだよね。


 弓だけじゃなくて、魔法も凄い威力で、詠唱もしてないらしい。


 ウサギちゃんの魔法も見せてもらったけど、あきらかにしょぼいし時間が掛かる。詠唱が長すぎるわりに、威力がないって使えないじゃん。


 秘密があるよね。


 この村の特産品は芋なんだけど、どこにも畑がない。芋は握り拳ほどの大きさで、岩みたいなので、岩モドキというらしい。これ馬鈴薯じゃないの?


 もしかしたら毒素があるかもと、生芋から抽出してみたら、かすかに毒があった。たぶん煮てしまえば問題なさそうなので、食べられてきたようだった。


 何かに使えそうなので、抽出して乾かして粉にした。


 それからひと月ほど魔物との戦いは続き、やっと解放された。


 『聞』があるうちに、ウサギちゃんの名前を教えてもらった。


 そして、バニラとともにネコちゃんの後を追うことになり、見つかって取り込まれてしまったのでした。


 結果的に、目的は果たされたのでめでたし。

 


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