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ねこのなかのひと  作者: ままこたれこ
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 コマツさんが調合する傷回復薬は、雑貨屋に置いてある物よりも数段効き目がある。体力回復薬も同様で、これを売ればウハウハ(死語)なのは、間違い無いんだが、こんなものを売ったら更に敵が増えるのも間違い無い。


 だけど俺達には、『治』があるので必要ではない。


 何れにしても、コマツさんの習熟のために、薬も作っているし簡単に出来てしまうならば、作っておこうかくらいな感じだ。


 ダンジョンの一画を休憩と作業用に改造した場所でのことだった。地上でのんびり出来ないのでこうなった。入り口を俺の壁で塞いでしまえば、ほぼ安全なので魔物を気にすることなく休める。扉を付けてもいいんだけど、木材がないから金属扉になってしまうのは、もったいなさすぎだ。そんなに沢山の金属を無駄に使いたくない。密閉された作業部屋は、普通なら汚れた空気が充満するはずなんだが、なぜかそういうことがなかった。どこかに微妙な隙間でもあるんだろう。ただ俺達が放出している魔力は充満し続けていた。かすかに壁が光っていた。後で分かったことなんだが、身体から放出している魔力は、拡散しないで近場に止まり続ける性質があるらしい。だから移動しても付いてくる。


 偶然の産物なので、理屈とか難しいことはさっぱり分からない。簡単な仕組みでポンプみたいなのを作った、水鉄砲に毛の生えた程度の圧縮装置なわけ。なんの為に作ったのかといえば、コマツさんが調合のときに水を加える制御のためだ。本当は片手で使うものなんだけど、小さいとまだ難しかったんで、大きなサイズで実験的に作ったわけだ。本来なら注射器程度の大きさなんだよね。水を飛ばすわけじゃないので、まだ穴は無いんだけど、ポンプを押すと空気が圧縮された反動で戻ろうとするのが面白いのか、ミリパナがプシュプシュ押して遊んでたら、ミリパナのバカ力でスコーンと抵抗が無くなったので、どこかに穴が空いてしまったと思って見たけど、穴は空いてない。ポンプを抜いて中を見たら、なんか液体がほんの少し、結露のように溜まってる。亀の甲羅(お皿の替わり)に、液体を垂らしてみたら微妙に発光してる。変なものが混入したのかと、水分を拭き取って綺麗にしといてねって、ミリパナに頼んだわけさ。てか、特に使い道がある訳でもないので、どうでも良かったんで、そんなことはすっかり忘れて金属に彫る漢字のことに集中してたら、バニラが素っ頓狂な声をあげた。


「なによぉ!ミリったら遂に壊しちゃったのね」


 見るとポンプの先から発光した液体が飛び散ってる。液体は霧のようになって作業用のテーブルを濡らした。バニラが混ぜていた薬の粉も濡らして台無しにしていた。


「もぅ!折角完成寸前だった薬が台無しだわ」


 濡れた薬の粉が更に発光を強めていた。


「これなに?光ってる」


『何の薬作ってたんだ?』


 俺がバニラに聞くと、体力回復薬らしい。まぁでも、疲労回復にこれ一本みたいな感じの薬なんだ。完成品が光っていたことなど今までなかった。


 うーん、これって魔力が宿ってる?


『ミリパナ、魔力計るカード使って調べてくれない?』


 ミリパナはカードに薬を容器ごと乗せて手に包み込むように、優しく握りしめた。


「魔力がいっぱいある」


『どのくらいなんだ?』


 出来れば数値化して貰いたいが、文字が分からないミリパナには期待出来ない。


「んーとね、これくらいかな……」


 両手をいっぱいに伸ばして、円を描くように上から下へと動かした。


『なら、こちらの光ってない薬はどうだ?』


 カードに薬を乗せ替えて、再び両手で包む。首を傾げた。


「このくらい……んー殆ど無いんだけど……」


 親指と人差し指で丸を作って、オーケーの合図のようにしたが、手を振って無いと答えた。ほんの少しは感じられる程度なんだろう。


『甲羅の水はどうなんだ?』


 結果はすでに分かっていたが、敢えて計って貰った。水滴のようなものからは、途轍もない魔力を検知した。


 通常大気中の魔力なんか計りようがないわけで、水滴一粒になればそれが分かるのは、画期的と言って良い。てか、魔力、所謂魔素というものを液化することに成功してしまったわけだ。こんなポンプ擬きで。簡単に液体になっただけではなく、魔力を圧縮しているので気体のときより数倍の魔力を発揮できるわけだ。たぶんこの作業部屋は、ミリパナとバニラのせいで魔力が充満していて、それを更に圧縮したので途轍もない魔力になっているんだろう。


 でもって、薬に混合してやれば恐ろしく効き目のあるものに成るわけだ。


 そしてさらに、今まで見えなかった魔力を、見える水にして圧縮して、魔力をビン詰めすることも可能になった。苦労して宝石を探さなくて良いわけだ。


 発見とか発明って、失敗や勘違いから見付かることがあるって、こういうことなんだなと理解した。もっと頑丈なポンプが必要になって、コマツさんには苦労を掛けることになったけどね。それとビンも作らなきゃならなくなった……。仕事増やしちゃつたね。コマツさんごめん。


「ガラスって、難しいのよね」byコマツ


 ちなみに、コマツさんも絶賛寄生中なので、バニラの手を使って作業を行う。だから作業が細かく成ればなるほど他人の手がもどかしくなり、ポンプも必要になる。『動』を使ってもいいのだが、数に限りがあるのだ。


 大気中に含まれていて、曖昧にこの場所は魔力が多いとか少ないだったのが、目にも見える液体になったことで、分かりやすい単位で遣り取りが出来るようになった。世間一般には、秘密なので内輪だけのことなんだけどね。




前話でもお知らせしましたが、年末に向け多忙になる可能性があり、更に更新が滞るおそれがあります。

よろしくお願いいたします。

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