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ねこのなかのひと  作者: ままこたれこ
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 俺たちはダンジョン村への帰路についた。道中はミリパナとバニラの実戦での検証である。相手が群れじゃない限りは、危なげない状況だった。野営中に風魔法の詠唱を書き起こして、添削しながらの道中でもあった。


 時間はたっぷりある。ダンジョン村までは十日以上は掛かる。これはやっぱり荷運びしていた動物を調教して、馬車みたいに運用すべきだと思う。コマツさんも同意してくれたが、ネコとウサギは反対した。自分たちの足が役に立たないと、思われるのが許せないんだとか。無駄にプライドが高いんだけど、馬車に伴う車の発明は、文明の発展には不可欠なんだよなぁ。と、現代人の俺は思ってしまうんだが、それよりも魔法の発展の方が良いのかもしれない。


 二週間掛けてダンジョン村近くにたどり着いた。そしてミリパナの住処まで来ると、まるで嵐の後のように荒らされていた。


「なによこれ!滅茶苦茶じゃないの!!!」


 帰ってきてホッとしたのに、再び警戒態勢である。荒らされ方が自然ではないし、魔物の仕業とも違う人為的な臭いがした。盗られて困るような物はないのだが、何を探したんだろうな。地下水が湧き出している川を見つけられたかもしれない。そうなると奴等がまた来るはずだ。


 そのとき火球が飛んできた。避けきれなくてミリパナの頬を掠めた。二弾目が来る!それで位置は特定したが、上手く遮蔽物に隠れていて反撃しても当たらないだろう。牽制の意味で『石』を纏めて五個発射して、『壁』をそちらに立てた。


『待避だ!ミリたちは魔法使うな。此方の手の内はまだ隠しとけ』


「分かった。バニラ逃げるよ」


 火球は壁に阻まれて飛散した。俺たちが壁から離れるに従って、壁は薄れて行った。通路は入り組んでいるので、近付かれない限り安全だ。角を幾つか曲がったところで、耳を澄ます。沢山の足音が此方に向かっている。


『取り敢えずここら辺りに罠でも作っておこう』


 まずは、落とし穴で警戒させて、足止めしておこう。


『ダンジョンへ逃げ込んで撒こう』


「ここのダンジョンは手強いから、あいつら吃驚するね」


『ある程度奥まで誘い込んで、俺たちは姿を消してからやり過ごそう』


「そうね、バニラここの魔物は強いから、全力出してね」


「まかせて!」


 二人とも、土魔法と風魔法は使いこなせている。ミリパナがソロでダンジョンへ来たときなどとは、比べものにならないだろう。俺の能力も段違いだ。


 まずナックの群れを蹴散らした。更に奥へ進んだところに分岐があり、左手にはカロミケスがこちらへ向かってきた。難なく倒して、そして偽装、少し戻って違う分岐へ進む。奴らはカロミケスの死骸を見て、彼方へ進んだと思うだろう。暫く進んで息を顰めた。すると、沢山の足音が先ほどの分岐へ進んで行った。俺たちは分岐点まで戻り、逆に跡を追った。暫く行くと、戦う怒号と悲鳴が聞こえてきた。静かになったところを確認しにいった。そこには二十人ほどの兵士の無残な死体と、貪り喰うあの化け物が居た。後で知ったがソグリフという魔物だ。ミリパナも俺も全く歯が立たなかったあいつだ。今回はきっちり仕留めさせてもらうぜ。


 ミリパナは土を槍のように固めて、頭付近だけを狙って連続で放った。バニラは風を刃のようにして、胴体に攻撃した。俺は『強』と『化』を合わせて、石を飛ばした。更に動けないように『石』と『化』を合わせ足を石のように硬化させた。あとはやりたい放題だ。そしてなんと!コマツさんが抽出を使うと、魔力を吸い取り始めた。魔力のない魔物はもう、魔物ではない。魔法の抵抗力も無くなり、防御力も無くなると、あっさりミリパナの剣鉈で切り刻まれてしまった。


 俺は倒れている黒づくめの男から、金属のカードを拾い上げた。カードには、宝石が埋め込まれており、魔力を供給するようになっていた。だが、やはり文字は読めなかった。恐らく火球を飛ばしていたから、これを使えば魔法を知らなくても火球を飛ばせるのだろう。魔力を調べるカードは翳すだけだったが、これには何らかの起動スイッチがあるのかな?若しくは呪文のような言葉かもしれない。表面を調べてもスイッチ的なものはなかった。ならば呪文か?


 ミリパナやバニラが使っているのは、魔法といわれるもので、カードを使ったものを魔術というものと、俺の居た現代では認識されていた。多少の違いはあるかもしれないが。そもそも魔法も魔術も無かったんだから、創作の域を出ることはない。


『取り敢えず外に出ようか』


 いずれにしても、この辺境伯の領地にいるのは危険だ。いつまた襲ってくるか分かったもんじゃない。かといって、素材やダンジョンで取れる金属なんかを諦めたくない。ダンジョンの奥深くに潜むってのも有りか……。どちらも危険と隣合わせだけど。


『領外へ逃げるか、ダンジョンに潜むか位の選択肢しか無さそうだぞ』


「ダンジョンで素材を集めるのも良いかもね」


『そっちの方が稼げるしな』


「うん、売るのは遠いけど他の町でもいいしね」


 バニラは強く成れるならそれでいいと、コマツさんも同じ意見だった。









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