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ねこのなかのひと  作者: ままこたれこ
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 ミリパナに察知されずに近づけたのは賞賛に価するね。聞けば偶然ミリパナから近づいたみたいだけど。バニラも穴に潜んでたとは、考えもしなかったよ。そういえばウサギも穴掘るんだよね。


「なるほどねぇ、この世界じゃ戦えない=死だもんな」


 俺の方もいままでの経緯を、適当に端折って話した。それで今後のことは、朝になってからということで、寝ることにした。俺たちは寝なくても大丈夫なんだけど、宿主がそうはいかないので。


 


 翌朝、朝食を済ませ、取り敢えずバニラの魔力を確認。やっぱり寄生してると、多いらしい。魔法の属性は火、風、土だ。てか、属性というより覚えた呪文がそれ。火は必須なんだよな。生肉食うと寄生虫怖いし。焼いても、俺みたいなのが寄生するけどな。


 コマツナナさんの方は、『抽出』と『調合』、『伝言』、『聞35』の四つ。でもいきなり熟語かぁ。吹き矢に使った薬は『調合』で作ったそうだ。材料の組み合わせなので、試行錯誤しながら研究しないと、レシピが分からないのだとか。植物が中心になるので、この砂漠状態ではレシピさえ難しい。ミリパナの住処に近い森なら、多少は見つかるかもしれない。


 これまでに魔物を倒してないので、デフォルトで持っている漢字のみってことか。魔物を倒せば新しい漢字の入手もあるんだと、教えておいた。


 バニラの魔法強化は、町に行ってからだ。魔法書も探さなきゃいけないし、宝石も希少金属も入手したい。コロリ村の依頼で、少しは潤ったがまだまだ足りない。途中で魔物を狩ったりしながら、先を急いだ。魔物はある程度弱らせて、コマツナナさんにもトドメを刺して貰い、漢字を入手した。


 在り来たりだけど、重要な漢字『聞』や『動』などだ。


 五日掛かって[メルカン]という町に着いた。取り敢えず宿を探して落ち着いた。二人部屋だ。ミリパナにプライベートがないように、バニラもなしだ。生着がえも見ちゃうからな。てゆーか、すでにスライムの洗礼を受けて、身体中隈無く見てしまいました。ミリパナはアノ時の声を出すが、バニラは正当な、温泉に浸かったときの「ほぅ……」みたいな、放心的な声だった。正当かどうかは意見の別れる所だが。俺だって見てもヘビの生殺し状態なんだぞ。発散出来ないんだからな。コマツナナさんも、最初は自分のことのように、照れくさがってたが、慣れたようだ。いや、我慢してるのかも。


「二人とも美少女で羨ましいわ」


 実際少女なのかは分からない。ミリパナに年齢を聞いたことはないから。異世界で、種族によってはとんでもない長命なのいるからな。ミリパナなんか三百年くらい生きそうだし。聞かない方が良いかもしれない。コマツナナさんも、年齢は伏せといて。俺も言わない。


 まずは雑貨屋だな。向かいに店が並んでる。ガラスがないからどこもかしこも、薄暗い。看板はあるけど、意味不明なのが多い。絵のような図形のような……武器売ってるなら、剣描いとけよと思うんだが、三角が並んだ図形だし。どうにも、イメージという概念が希薄なんだよな。このような一目で分かるような絵を、ピクトグラムというのだが、三角が並んでるだけじゃピクトグラムに為らない。だから魔法もこんなんなんだと、納得はしている。誰かが過去に造ったら、誰もそれを改良しようと考えない。偶然よい物が出来たときに、そっちに乗り換える。偶々呪文を間違えて唱えたら、少し呪文が短縮出来たみたいな変化しかない。もしかしたら、俺たちの歴史も最初はこのように、ゆっくり動いて来たのかもしれない。現代が異常なのかな。


「ほん」


「本を探してるのかね?」


 ミリパナは頷いて肯定する。


「たしか……一冊だけあったはずだが……あーあったあった」


 店の主人は古びた本を、カウンターに乗せた。


「見ても?」


「あぁ構わないぞ、古いから丁寧に扱ってくれよ」


 背表紙は掠れて縁がボソボソになっている。表紙を捲ると[処方箋]と書いてある。ふむ、薬のレシピか?魔法書ではなさそうだ。コマツさんの分野だけど。


「私お金ないから、いいです」


『ミリパナ、幾らか聞いて』


「これ幾ら?」


「そうだな……文字も霞んでるからな、金貨一枚でどうだ?」


 ミリパナは他にも金属や宝石も要求して、小袋から金貨六枚を取り出して渡した。


「毎度あり!」


「私読めないし……」


「いずれ読めるようになるから、心配いらないよ」



 宿に帰ってバニラの勉強の時間だ。まずバニラに土魔法の呪文を詠唱してもらう。部分的にミリパナの呪文と違ったりする。いかにいい加減な呪文か分かる。ミリパナのときは、徐々に削って覚えさせたが、今回は結果が分かっているので短縮したものを、そのまま覚えてもらう。あくまでも新しい呪文としてを強調しておく。読み聞かせて、何度も反芻させる。長さ的には、短歌に近い物があって、短歌が三十一文字に対して、約倍の六十文字だ。それほど苦労しなくても暗誦出来そう。削ったり加えたりしないので、夜までには間違えないで詠唱出来るようになった。更に

イメージする癖を付けさせる。ただ読むだけだと威力が出ないし、この先無詠唱までいけない。それが可能なのかは、分からないがせめて《火炎弾》とか《水弾》って感じで発動出来ればしたいと思っている。





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