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ねこのなかのひと  作者: ままこたれこ
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 町から離れ同じ方向に向かって移動している冒険者も、一人減り二人別の道へ行き、次第に減っていつかミリパナ独りきりになった。ミリパナは北の町へ帰る積もりで移動していたが、帰ってももう本は無いと気付いて、東を目指した。冒険者の一人から、東にも町があると聞いたからだ。


 誰もいなくなってから、背負っていた袋から芋と岩菜を、収納に仕舞う。ふと気付くと遠くから此方を窺う人影があるのに気付いた。そして目が合った。ミリパナは無視して歩き出す。


 日が落ちて山の稜線に掛かり、急速に暗くなる。いつものようにミリパナは、遮蔽物の近くに穴を掘り、寝る準備をはじめた。周りを見回しても、何もいない。しつこく追ってきた誰かも、諦めたようだ。背負い袋から芋と若菜を取り出して、晩ご飯だ。芋は村で茹でておいたので、そのまま齧る。茹でた芋は足が早くなるので、早めに消費しなければならない。


『あの村って、水どうやって入手してたんだろうな』


「どこの村でも隠した井戸があるんだよ」


 領主も全部見つけて押さえてるわけじゃないわな。その時ミリパナが、何かを感知したのか、穴から頭だけ出して、耳を傾けるが何も聞こえない。聞こえないが、用心に越したことはない。穴から這い出ると、横に転がって穴から離れる。そのまま這いながら近くの遮蔽物まで進んだ。


 太ももに鋭い痛みが走った。そのまま力無く気を失った。









「上手くいったわ」


 そう言ってミリパナの手足を縛り上げた。


「そんな事言っても、こうでもしなきゃ聞き出せないじゃない」


 ん?誰と話してるんだ?


 ミリパナは気を失っても、俺はなんともない。


 誰か他に居るんだろうか?暫く様子をみるか。殺しはしないだろう。


「たいして金目のものは持ってないわね」


 盗賊?


「武器も短い剣とナイフだけよ」


「えつ!?弓?持ってないわ。穴のほうにも置いてない」


「……無い物は無いのよ。細かい事気にしすぎだわ」


「グチグチ言ったって、こうなったら最後までやるしかないの」


「あんた誰と話してるの!?」


 突然ミリパナが喋った。


「あ、えっ!うっそ、なんで喋れるの?まだ、薬が効いてる……そ、そんなバカなこと……」


「へぇ、薬で眠らせたのか?」


 どうやら、吹き矢で眠らせたらしい。俺は『毒』と『消』を組み合わせて、薬の効果を無くした。ポカンと口を開けて此方を見ている。しかし、腰からナイフを抜くと、ミリパナの首に突き付けた。


「だ、黙れ!起こす手間が省けたわ。洗いざらい喋って貰うわよ」


「何が聞きたいの?」


「あんた、村で不思議な魔法みたいなことしたよね?」


「なにそれ」


「しらばっくれるんじゃないわよ。簡単に魔物倒してたの見たわ」


「それを聞いてどうすんの?」


「おまえバカか?私も使うに決まってるでしょ」


「使えるのかしら?」


「魔法なら覚えればつかえ……黙っててよ。じゃましないで」


「あなた独り言多いわね」


 俺は思わず笑った。ミリパナがそれ言うか。なんか俺みたいなのが此奴の内にいるのか?


「うっさい!」


 激昂の余り手に力が入りすぎ、ミリパナの首から血が流れる。しかしすぐに傷が塞がる。


「ええぇぇぇぇ!なによあんた!!」


「おつむが少し足りないのかしら?手足縛った位で、あたしを捕らえたつもり?」


 ミリパナが何時になく饒舌になってる。


『あんまり苛めてやるな。たぶんこの娘も内に、俺みたいなのがいるみたいだ』


「ふぅんそういうことかぁ」


 俺は『断』を使って縄を切った。ミリパナに指示をして、相手の中の人に質問する。


「あんた名前は?」


「……バニラ」


「ウサギぽくていいわね。バニラのなかのひと?聞こえてるなら、返事して」


 それぞれ宿主を介して話を進めるが、面倒なので宿主を飛び越えて記述する。


「な、なんで私のことが、えっ!?どうして?」


「同じようにネコに寄生してるからだよ」


「……に、日本人なの?なんですか?」


「あぁそうだ」


「こんなこと仕出かしてごめんなさい。私はコマツナナと言います」


「女性なのか、俺は遠山一郎。半年前にミリパナに寄生した」


「あ、私もそれくらいの時期です」


「取り敢えず何でこうなったのか聞こうか」


「最初は何が何だか分かりませんでしたけど、バニラのなかだと分かったのも数日してからです。頭の中に漢字があるのにも気付きました。伝言というのがバニラと話せると分かってからは、この世界のことをイロイロ教えて貰いましたが、生活があまりにも酷くて、なんとか出来ないかなと、他の漢字を試してみたら、岩からイロイロな金属とか分離出来ることがわかりました。そうやって金属を売ることで生活が少し楽になったんです」


「うんうん」


「でも、村をグリシが襲うようになったんです。バニラも生活の魔法は使えるんですが、魔物を倒すなんて無理です。これでは一生村から出られない。バニラはそれでもいいと言いますが、私はもう少し楽しい生活がしたいと悲嘆にくれていたら、ミリパナさんを見たのです。バニラは凄い魔法使いだと絶賛していました。で、あの人に魔法を教えて貰えば、村から出ても安心だってことになりました。私は一カ月近く悩みました。そんな簡単に教えて貰えるわけがないって。グズグズしていたら、戦いは終わってしまいました。バニラは行動を起こしてしまいましたが、私はまだ悩んでいて、止めようとしましたが、こうなってしまいました。本当にごめんなさい」
















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