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眠り猫なJKのいる教室(クラス)  作者: 山野カエル
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第2話 運命のクラス替え


そういうわけで。私は身の丈に合わぬ私立潮波学園で、高校生活をはじめたのでした。


しかし。ここまでの話ですら、私は幸運だったと言わざるを得ません。


まぁ、このとき自分が幸運だったとは後から気づくんですけど…(人生でありがちなヤツですよね)。



何がラッキーだったかって、私は友達に恵まれていた事です。

私らのグループは、ほわんとしてマイペース、良い意味で個人主義、ギスギスしたところはなにも無し、って感じでした。



しかし当然、全てのお嬢さんがこんな風に、私は私、自分がハッピーならそれで良し、他人のやってる事なんて気にしなぁい〜みたいな、余裕のあるお嬢さんなわけじゃないのです!

他人に勝つことに固執するお嬢さんや、取り巻き作って喜ぶお嬢さんもいたはずなんですが、なんと私のクラスには皆無でした!これがどんなに幸運なことだったか!私が気がついたのは、2年生になってからでした。



高校2年目の始業式に降りかかった苦難…

それは、クラス替えで、1年生の時つくった女友達全員とクラスが別れてしまった事!


これは全く予想してなかった!だってうちらのグループ、総勢10人くらいいたのに……他のグループ所属だったり、よそのクラスでも普段から仲良く喋ってた子だっていたし……


それなのに。


それらと(ことごと)くクラス別れるとか、どんな確率よ⁉︎



しかもヤバイ事に私はクラブに入ってなかった。だってお金かかりそうだったんだもの…。



これは。ヤバすぎる。知らない名前ばかり並ぶ名簿見て呆然とした。

そして新しいクラスの、自分の席に座って周りを見渡すと、みんな、早くもグループが出来ているのが分かる。

うわあ…既に出来てしまってるグループって入りにくい……それでも、どこかのグループに早急に入れてもらわなきゃ!!あしたの昼ゴハンさえ危うい。でも、どこに…!?ひとりメシはいやだ!でも、誰に声をかければいいのだ…!?


…地味めの子ふたりが話してるのを見つけた。しかしやたらと仲が良さそうで、親友の域のふたりらしい。

…てゆうか、軽く百合入ってない?二人とも線が細くて、うっすーい顔の子達なんだけど、なんか相手にしなだれかかったりして、はにかんだように笑い合っているし、会話が周囲に聞こえないようにか、お互いの耳元で喋っているし。


とにかく、繊細そうで、閉鎖的な雰囲気だ。


そんな所に割って這入ってグループ入れてもらったって、絶対楽しくないよな、、、とか思ってしまう。

ふたりの世界を邪魔しないようにニコニコ笑ってるだけしか出来ないだろうしな…ふたりしか分からない話オンリーだろうし……。

てか、そもそもさ、ふたりが私をグループに入れてくれるメリットってあるの?


知らない人に気遣わずに、ふたりの世界しときたいだろうな絶対。と思ったらどうしよう、話しかけれない!


そもそも知らない子に話しかけるの、めっちゃ勇気いる。1年生で、みんな「友達作りたいモード」だから出来るのだ。


さらに周りを見回すと…ヤバイ。部活のつながりが思いのほか堅いな。

最大派閥はチア軍団なのだけど、なるべく地味に日々目立たないように生きているこの私が、あんな派手集団に所属できるわけもなし……


次点のテニス部は、気ぃキツイって有名だからなぁ。間違っても入れないし、私なんか入れたがらないだろう。。


では、あの眼鏡にお下げのガリ勉成績上位集団?…まさか。何の話をしたらいいんだよ。古墳の話とか…?

恐らく、気楽に、庶民派に生きてきた私との接点はひとつもない。私はあそこまで突き抜けたガリ勉じゃないのだ。。


…なんか、私って、なんて中途半端なんだ!


奨学生ではあるけど、あそこまで突き抜けて勉強ができる訳じゃなく( 彼女らの成績が上位1ケタなのは間違いない )、お金はないし、特別可愛いくもない。アピールポイントが、ない…

ああ…

明日、マジでひとりメシかな…。





チア部のアイドル並みに可愛い派手女子が、なにやらキャアキャア騒いでた。

”留年先輩”がまだ来ない、って話だった。せっかく留年先輩と同じクラスになれたのに…と嬉しそうに友達に話す。


その黄色い、甲高い声は、各々の話し声でザワついたクラス中に響きわたっていて、うるせえよ、とテニス部女子が、まぁまぁな音量の独り言を(はな)った。


チア部派手女子は聞こえなかったのか、聞こえてもお構いなしなのか、ね〜どこ行ったのかなぁ〜??先生来ちゃうよね〜??、と友達に言い、


突然「あっ!えーっと、青井くんなら知ってるかな??青井くぅ〜ん!」

とデッカイ声で叫びながら、教壇を横切って、”青井くん”と呼ばれた眼鏡の男の子に駆け寄っていった。


”青井くん''は名前から分かる通り、出席番号1番らしく、教室の左端、一番前の列の、角の席にいた。見るからに大人しそうな子で、これといってメガネ以外特徴のない子だ。ほんとによくいるメガネ男子だ。


チア女子は

「ね〜、先輩、どこ行ったか、知ってる?

(╹◡╹)♡」

と首を傾げて聞いた。


…青井くんの机に両肘をついてだ。。どういう感じか分かるだろうか……無論、机に両肘をつくから、後ろにお尻をかなり突き出しているかんじである。


青井メガネくんの顔と彼女の顔との距離は、正常な人ならなんで?なんの必要があって??と思うほどに、近い。


テニ部女子軍団がゲロ吐きそうな顔をしていた。


青井くんは、全く動揺せずに、答えた( 後から分かることなのだが青井くんはメガネ越しですら目が悪い上、ちょっと鈍感な感性をしている )。…もし青井くんがここでデレデレしてたら、テニ部女子軍団は憚りなく、陰口を叩き出したろう。このチア部の女のコの訳のわからない攻撃に屈しないあたり、青井くんはナイスキャラだった。


「学年主任に呼ばれて職員室です。しぼられてから来る、って行ってました」


どこか女の子っぽい、透き通った、爽やかな声音の子だ。彼はにこやかに答えた。


「そうなんだぁ〜?何の呼び出しかなぁ〜」


「留年してるからじゃないっスかね」

青井くんは可愛げなキャラに似合わず、事もなげに言う。


「なんで〜?? Σ('◉⌓◉’) 今年はいけたじゃ〜ん!」


「今年もまーまーギリだったんすよ」


「エ〜〜??ヾ(。>﹏<。)ノ゛✧*

先輩、かわいそぉ〜〜」



留年先輩の存在は、私ですら何となく知っている。


1年生のとき、1-C組に、留年して2年に上がれなかった先輩がいる、って有名だった。

有名なのは決してそのせいだけじゃなかったが、うっかりタメ語をきいてしまわないよう、1年生達のあいだに広く流布していた。…噂によればちょっとコワイ系だったはずなんだけど、青井くんの物言いを聞くと、ちがうのかな?

全然びびってる感じはないな。むしろバッサリじゃん。



私は本来、いまの、先生が来るまでの無駄な待ち時間を使って、誰か、クラスの女子に喋りかけて、明日への布石とせねばならなかったのだが。。


高すぎるハードルに戦意喪失してしまい、自分の席についたまま、このやりとりを、目の前で繰り広げられるテレビドラマみたいな気持ちで、ぼんやりと眺めているだけだった。


…てか。なんなんこのコめっちゃ声でかいんやけど…。教室じゅうに向かって喋りかけてんのかな??

なにアピールなんだ…。


そのときだ、ガラリと戸が開き、留年先輩が入ってきたのはーーー


私はそのとき初めて、噂の先輩の顔を、まともに見た。

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