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ブラックホールをふさいだ日、  作者: 村崎千尋
第二章 君がお化けになった日
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(5)

 私は日向にたった一度だけ嘘をついたことがある。中学二年生のクリスマスだった。


 我が家ではお互いの誕生日を重んじていて、誕生日の夜には必ず全員そろってケーキとフライドチキンを食べる。


 それを大切に大切にしていた日向とは正反対に、少しスレていた私はそれがバカらしくて仕方がなかった。けれど日向があまりにもうるさいから指切りをして、クリスマスの夜は出かけないとイヤイヤ約束させられたのだった。


 クリスマスの夜は私の誕生日だった。


 私は家族よりも、彼氏に祝って欲しかった。一緒にケーキを食べてプレゼントをもらいたかったのだ。


 だから私は日向に嘘をついて、当時付き合っていた和樹(そう、知代のお兄ちゃんだ)と一緒にイルミネーションを見に出かけた。


 イルミネーションを見て九時頃に帰ってきたら、フライドチキンもケーキも手付かずのままで、代わりに、テーブルの上に針がきっかり百本並べられていた。パパもママも日向も家にはいなくて、代わりに針の脇には書き置きがあった。


『ごめんなさいをしなかったら、千本にします。兄』


 敬語も、兄というよそよそしい言い方も、日向が随分怒っていることを示していた。


 私は慌てて日向に電話して、土下座をせんばかりに謝った。最初は不機嫌そうだった日向はころっと態度を変え、一緒にケーキをフライドチキンを食べようと言った。帰ってきたママとパパは苦笑いをしていて、日向だけがご機嫌に笑っていたのだった。


 午後十時に食べたケーキとフライドチキンが胃に重かったことを鮮烈に覚えている。


 それ以来、私は日向に嘘をつけないし、誰にも日向に嘘をついてほしくない。

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