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ブラックホールをふさいだ日、  作者: 村崎千尋
第四章 君の心に触れた日
23/31

(4)


 日向がなんの脈絡もなく「焼肉大会をしよう」と言いだしたのは、次の日、帰ってきてからだった。


 おそらく着替えだけが入っているのではないだろう大きなリュックを背負ったまんまリビングに入ってきて、いつもの「ただいまライオン」「おかえりモンキー」の挨拶を交わした後のことだ。


 女の子が何週間も前から事前に連絡をとりあい、あれをしよう、これをしよう、服はおそろいにしようか、だなんて話し合っている間に、男の子の時間はびゅんびゅんすぎていっているんだなと、日向を見ているといつも思う。アポもなしに家に行って遊び出したり、明後日ディズニーランドに行こうと決めたり。


 よく言えば行動力がある、悪く言えば行き当たりばったり? たぶん日向たちの場合は後者に近いけど。


 まさか、明日とか言い出さないでしょうね……。


「いつ?」

「今週の土曜日!」


 日向が元気よく言うから、なんだか呆れてしまった。


 土曜日はあさってだ。私の予想とほぼ変わらなかった。


「うちで?」

「いや、和樹んち」

「メンバーは?」

「俺と和樹と、知代ちゃんと雛子と、あと……文化祭に来た、沙也加ちゃん?て子」


 げ、と思った。


 和樹もいるの? マジマジ? 大マジ?


 このデリカシーのない計画は間違いなく日向発案のものだろうと思う。日向は私が和樹に会うのをちょっと嫌に思っていることを知らないから。


 まあ別れ方はなんてことない普通の喧嘩別れだったんだけど、和樹が原因なのにまったく反省していないその態度が、私は今でもちょっと許せない。あと会うたびにからんでくるとこも。


 でも、日向のきらきらした目を見て「私パス」なんて言えなくて。


「なんか、知代ちゃんがお前のこと心配してたよ」

「え?」

「ただでさえバカなのに最近ぼーっとしててもっとバカだって」


 ただの悪口じゃんそれ。


 でも、ちょっと嬉しかったり。


 さすが知代。沙也加が元気なくて海に連れて行った夏休みの時もそうだけど、知代はそういうサプライズが好きだ。まあ、なんだかんだ知代が一番楽しんでいるんだけど。


「昨日和樹がバイト代入ったから肉は和樹が買うって! ホットプレートと野菜類はうちから持ってくことになってるんだけど、明後日、雛子どっち持ってく?」

「効率いいのは?」

「雛子が学校終わって一旦家かえってホットプレート持ってくほうかな? そしたら俺は駅ビルのスーパーで野菜買ってくけど」

「じゃあそれで」

「よし」


 日向とハイタッチする。いくら妹とはいえ女の子に対して容赦のないハイタッチに、てのひらがじぃんとしびれる。


 こうやって、行き当たりばったりのくせに段取りよく決まっちゃうのも日向らしいといえば日向らしくて、ちょっと笑えた。


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